すっかり恒例となった笹原圭一広報によるRIZIN振り返りインタビュー! 大晦日を12000字で振り返ります(聞き手/ジャン斉藤)
――笹原さん、元旦早々すいません。大晦日の話を伺いにきました!
笹原 いやあ、大晦日は本当に素晴らしい大会でしたよねぇ。どうしてRIZINだけはこんなに面白いんですかねぇ。
――RIZIN「だけ」ですか!? 新年早々自画自賛!!
笹原 堀口恭司vs朝倉海は残念ながら中止になっちゃいましたけど、いまのRIZINには他にも骨太のストーリーがありますよね。四天王対決に朝倉兄弟のブレイク、RENA選手のリベンジマッチ、浜崎朱加vsハム・ソヒのスーパーアトム級最強決定戦もそうです。こうした2019年のRIZIN絵巻が大晦日に完結するということで、お客さんの観戦モチベーションがメチャクチャ高かったと思うんですよ。
――ドラマでいえば最終回を見るようなものですよね。
笹原 入場ゲートに並んでいるお客さんの顔つきや、会場に入ったときの空気感からして爆発の予感はしていたんですよ。完全にできあがっているから、これはもう何をやっても盛り上がる。箸が転んでも大歓声が起きるんじゃないかと。あそこまで会場に熱があると、選手たちにも自然とスイッチが入りますよね。
――その期待感はRIZINのそれぞれのストーリーが伝わっているってことですよね。
笹原 それはRIZIN CONFESSIONSSの効果も大きいでしょうし、いまでいえばSNSで選手の素顔が伝わっていることもあるでしょうね。あとは単純にRIZIN側が発信しているストーリーが伝わっているというより、お客さんがそのストーリーを自分なりのドラマにして、過剰な思い入れを持って試合を見ている感じがしますよね。我々が面白いイベントを作ったんじゃなくて、あの熱を生み出し、面白いイベントにしたのは間違いなくお客さんですよ。
――ということは「神興行(C)RIZINファン」じゃないですか! 興行が終わるのが寂しかったですよ。「ああ、もうちょっと見たいな」って。あとは視聴率が気になるところですけど……(収録は1月1日)。
笹原 数字がいいに越したことはないですけど、もうこればっかりは正直わからないです。欲をいえば、セミの那須川天心vs江幡塁、メインの朝倉海vsマネル・ケイプがラウンドをまたいでくれれば、って感じですけど……あれだけの凄いものを見せてもらって、それ以上に望んだらバチがあたりますよね(笑)。
――今回の年末はRIZINが運営協力したベラトールの日本大会も開催されました。RIZINと比べるとやっぱり大会進行も違ってきますよね。
笹原 RIZINとベラトールの興行の作り方は全然違っていましたね。ベラトールにはベラトールで素晴らしいところがあるし、RIZINにもベラトールにはないオリジナリティがあるんですけど。ベラトールのやり方は確立されていますから、向こうの現場スタッフは「もう俺たちに完全に任せてくれ!」という感じなんですよ。 でも、ベラトールCEOのスコット・コーカーは「もっと日本的な味付けをしたい」というスタンスだったんですけどね。
――さすが日本から格闘技の興行を学んだ男ですね。
笹原 RIZINとの違いをわかりやすくいうと、ベラトールは出口がテレビ向けに作られているってことだと思います。テレビでの見え方を徹底的に考えて作っている。今回の29日でいえば、アメリカのテレビでコマーシャルが流れているあいだ、会場には何の説明もなく音楽が流れているだけなんですよ。観客からすると何が起きているかわからない。ボクらからすると、もの凄く気持ち悪い進行なんですよ。ただアメリカですとビール飲んで勝手にお客さんは楽しんでいるから放っておいても大丈夫、いやむしろ放っておいた方がいいんだ、ってことなんだと思います。
――でも、日本のファンからすると謎の時間、無の時間ですね。
笹原 たとえばRIZINの場合、試合の決着がついたときはゴングがカンカンカンと鳴らされて、間髪入れずに「勝者!エメリヤーエンコヒョーーードル!!!」みたいな勝者コールが入るじゃないですか。ベラトールはレフェリーが試合を止めて、何のアナウンスもしない。しばらくしてから選手を中央に並べて勝利者コールをする。これはたぶんテレビで見ていれば実況が大きな声で「オーマイゴッッッッッド!インクレデボーー!!」とかガナっているから、別にゴングを鳴らす必要も、勝者コールをする必要もないからだと思うんですよ。
――たしかにそうかもしれませんね
笹原 そうそう、今回は前半のベラトールのケージ設営一式は彼らのチームがやったんですよ。で、後半はリングアナとか含めてRIZIN進行で行ったんですけど、大会前日にゴングがないことに気がついたんですよ!
――どこかで聞いたことのある話ですね。RIZINファンには伝わらないですけど(笑)。
笹原 「コブラ会に電話しろ!」とかふざけていたんですけど(笑)、じつはRIZINのゴングはリングと一緒に運び込まれてくるので、29日ではなく31日の荷物の中に入っていたんです。で、急遽別のゴングを用意して、29日のRIZINパートはそのゴングを使ったんです。
――合同興行ならではのエピソードですね。
笹原 試しにゴングなしでやってみようか、みたいな話もしていたんですけど、やっぱり気持ちが悪いので、いつもRIZINフォーマットで進行しました。で、チャーリー柏木がベラトールに「試合後はなぜそういう進行なの?」って聞いたんですよ。そうしたら「まず選手の安全を確認してからだ」って言うんですよ(笑)。
――RIZINのやり方も安全を確認してないわけじゃないですね。
――いい意味でのモンスタークレーマーですよね(笑)。
笹原 今回はボクらからの提案で「アメリカでのコマーシャルの時間帯は会場のビジョンに実況席の映像と音声を流しましょう」と。向こうからすると「なんでそんな面倒くさいことをやるの?音楽流しておけばいいじゃん」という感じだったと思うんですが、今回は「お前らがそんなにやりたいならやればいいじゃね?別に放送に関係ないし」ってことでやらせてもらったんですよ。
――それだけでも文化の違いがあるんですねぇ。ベラトールは北米の放送事情のためにメインカードを先にやるかたちでしたけど、結果的にこの試合順でよかったですよね。個人的にはヒョードルvsランペイジはちょっと締まらない試合になると思ってたので、メインイベントはどうなんだろうなと。
笹原 ベラトールにはMVP(マイケル・“ヴィノム”・ペイジ)みたいなバケモノもいますけど、 ヒョードルやランペイジらのレジェンドがメインを張るのが典型的なフォーマットではありますよね。それはそれで面白いんですけど、RIZINが目指しているものとは違うのかなと。 社長(榊原信行)も大会後の談話でそのようなことを言っていましたけどね。
――笹原さんも前のインタビューで「レジェンド対決はあまりやりたくない」と言ってましたよね。
笹原 是が非でもやりたいという気持ちはないですよね。ヒョードルvsランペイジの試合後のように仲良く記念写真を撮ったりするのは……もの凄い激闘のあとだったらいいですよ。あっけなく決着したあとにあの光景を見せられたら、お客さんほったらかしかよ、って思っちゃいますよね。
――勝負論を感じないですよね。サップvs大砂嵐くらいやってから抱擁してほしい(笑)。
笹原 やっぱり負けたほうの選手が涙を流して引き上げ…たり、負けて茫然自失していたり、魂が震えるようなシーンを作り出したいです。そうなるとレジェンド対決って、戦っている時点で当人たちの間ですでに物語が完結していて、なかなかその先に繋がらないんですよね。やるんだったらレジェンドがトップファイターに挑んだり、若い選手がレジェンドぶっ倒したり、返り討ちにあったりする方がファンだって応援のしがいがあるんじゃないかって。
――ポストリムカード(メインカード後に行なうプレリムカード)の最終試合の矢地祐介vs上迫博仁がドラマチックな決着がついて、大会を締めたわけですから面白いですよね。矢地選手の大逆転勝利。
笹原 “サカボマスター”がサッカーボールキックでKO負けするわけですからね。誰がこんな台本を書いてるんだって話で、これこそ「大河ドラマ」ですよ!!
――その大河ドラマの女優さんは会場ではバンバン抜かれていましたけど、地上波ではオールカットでしたよね。いったい何かあったんですか?
笹原 まったく知らないですけど、麒麟が来たのかもしれません(笑)。
――ガハハハハハハハ。ヒョードルvsランペイジのあとだからこそ神龍誠や平本蓮の若さがより伝わってきましたね。神龍選手なんて「あれ?こんなにおもいきりのいい選手だったっけ?」という躍動感で。
笹原 神龍選手はRIZINというステージに上がることで一皮むけたって感じですよね。実は彼はプロレスが大好きなので、マスクをしてケージインしているんですよ。で、大会の前に「神龍誠って、中途半端なリングネームだからいっそのこと神龍源一郎にしようよ!」って提案したんですよ。そうしたら「イヤです」って秒で拒否されましたけどね(笑)。
――プロレスで覆面で誠といえば「誠軍団」なんですけど、この提案もやっぱりスルーされそうです(笑)。
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