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RIZIN24のオープニングマッチで矢地祐介を判定で破った大原樹里インタビュー。10年間で50戦近くこタフネスぶり、大原樹里なのか大原樹理なのか……DEEPの鉄人の謎に迫ります(聞き手/松下ミワ)



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――
RIZIN..24は、大原選手のオープニングマッチからとんでもない試合でした!

大原 ありがとうございます!

――
地上波放送にも乗りましたし反響は大きかったんじゃないですか。

大原
 いやあ、凄いです。試合が終わったあと、ツイッターのフォロワーが倍になりました。ひさしぶりの友達からも連絡が来て、「テレビを見てたら映ってたんだけど、なんなの?」って。

――
それは大原選手が格闘家だということも知らない人なんですかね?

大原
 高校時代の友達なんですけど、ほぼ連絡取ってなかったので。「矢地選手の相手は大原樹里か。……んんん?」ってテレビを二度見したみたいです。

――
さぞかしビックリしたでしょう(笑)。

大原
 ご近所さんも意外とテレビを見てくれている人が多くて、それにもビックリしました。かなり流血していたので地上波には乗らないかなと思ってましたけど。

――
あれ、地上波で観るとよけいにエグい試合でしたよ。

大原
 ガッツリ血が出てましたね。もう殴りながら血の匂いがしてたので。

――
えー……。

大原
 「血の匂い、エグいな……」と。なんか、変なところだけ冷静に覚えているもんですね。

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――今回RIZINからのオファーはどういう経緯だったんですか?

大原
 話を聞いたときは「マジか!?」と。あれは8月23日のDEEPの試合が終わって2~3日後だったんですよ。会長(ランボー松風・KIBAマーシャルアーツクラブ会長)からいきなり電話が来て「次の試合決まった」と。8月だったから、次は11月ぐらいかなと思っていたら、「9月末のRIZINに決まったよ」と。「あ、事後報告なんだな」と思いましたけど(笑)。

――
本人が知らぬ間に決まってたんですか!(笑)。

大原
 「やったじゃないですか!わかりました」。それでおしまいです。でも「これ、発表まで誰にも言ったらダメな話だから言うなよ」と言われたんで、なんかちょっとモヤモヤしながら過ごしてましたかねぇ。

――
モヤモヤといえば、今回はコロナの影響か記者会見もなかったですもんね。

大原
 なんかツルンとなかったことになってて(苦笑)。でも、コロナだからしょうがないです。

――
逆に、コロナだからこそチャンスがあるんじゃないかとは思ってました?

大原
 いやあ、でもボクはDEEPを頑張ってればいいかなと思っていたんで。結局、ぶっちゃけDEEPのベルトが一番ほしいんですよ。

――
現DEEPライト級王者は、同じくRIZIN.24に参戦した武田光司です。

大原
 頑張ってDEEPのベルトを獲れば、自然とRIZINにも呼ばれるかなあと思っていたので。逆に、そうじゃないと資格がないんじゃないかって。

――
大原選手としてはDEEP王者の前に、RIZIN参戦のほうが来ちゃったという感じなんですね。最初から、相手は矢地祐介選手だと言われていたんですか?

大原
 そうです。有名どころだし、強いじゃないですか。だから速攻でYouTubeを観ました。まず、サウスポーなのか、オーソドックスなのか、どっちだ? って。

――
たしかに、試合までぜんぜん時間がないですもんね。

大原
 まあでも、ラッキーっちゃラッキーですね。試合まで1ヵ月しかないし、8月の試合で身体はできてたんで。減量もないですし、1回作り直してもう1回試合すればいいので。

――
どういう作戦で試合に臨んでいたんですか?

大原
 作戦は「ガードを上げろ、アゴを引け、もらうな」でした。あとは、なんも決めてなかったです。

――
それだけ! 自分の攻撃に関しては?

大原
 いやもう、ずーっと打撃しかやってきてないんで。とくに作戦というのはないですね。ダウン取ったときのヒザ2発とかも入りましたけど、無意識なんですよ。ただ、ずーっとミットでやってる動きだったので、自分でも「染み付いているんだな」と思いました。

――
つまり、相手の出方次第で戦ってた、と。

大原
 ボクは考えたらダメになるタイプなので。いろいろ考えてやろうとしていたこともあるんですけど、そのとおりに動けたことが一度もない。

――自由なほうが伸び伸びできるんですね。

大原 ちょっとだけ考えて、あとは考えない。だからその動きができるまで反復練習をするだけです。でも、1ラウンドの殴っている最中は、「止まれ!」ってことだけ考えてましたけど。

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――あれだけ血が出てたら、殴る側も怖そうですが……。

大原 いや、怖さはまったくないです。だって、やらなきゃやられるだけなので。矢地選手も力があって、何発かもの凄い手応えがあるのが効いていたとは思うんですけど、やっぱり目が死なないというか。

――ラウンド間にドクターチェックが入るぐらいの流血でした。

大原 そのときも、とにかく全力で「止まれ!」と思ってました。あのとき、日本で一番「止まれ!」と思っていたのはボクだと思いますよ(笑)。

――ハハハハハ! そのときの大原選手の表情を見返したいですね(笑)。

大原
 だから、ボクはドクターを凝視していたんですよ。でも、ドクターが首を縦に振ったから「ですよねえー……」って。

――
もしかして、2ラウンドに苦戦したのは、そういう心境もあって?

大原
 いや、あれはぶっちゃけ言うと、1ラウンドのパウンドを打っているときに足を絡められちゃって。ヒザがパキパキといっちゃったんですよ。「あ、鳴ったな」と。

――
それはケガしたということですか?

大原
 ちょっとした肉離れみたいな感じなんですかね。試合後に診てもらって、もうほぼ治りかけてはいるんですけど。

――
だから思うように動けなかった。

大原
 「蹴って大丈夫かな?」と。だから、2ラウンド目はそこの不安が頭に残っていて動きが悪くなったのと、蹴れなくなっちゃったということですね、怖くなっちゃって。だから蹴っても中途半端で、そのあいだにガンガン来られちゃって。

――
矢地選手のパンチでダウンしたシーンもありました。

大原
 矢地選手は左ストレートがやっぱりうまいんですよ。ダウンもらったのも、たしか左ストレートだったんです。あれは見えてないですね。だから、「ダウンしたんだ。やべ。サッカーボールが来る!」と思ったり。でも、途中クラクラしながらも手を出し返してたんで、たぶんあそこらへんからは復活したんだと思います。

――足も復活したんですか?

大原
 いや足は、2ラウンドの途中から普通に蹴り出したんですけど、完全に整骨院の先生に丸投げしました。とりあえず、ケガしても勝つのが優先なので、「先生、ごめんねー」と思いながら蹴りましたね。

――
そういう決意があったんですね(笑)。

大原 3ラウンドはほぼ記憶が飛んでますしね。

――
それ、試合後のコメントでも言ってましたよね。いまも記憶は復活してないんですか?

大原
 全然覚えてないんです。いつも、ちょこちょこ記憶がないことがあるんですけど、ビデオ見直すと断片的に思い出すんですよ。でも、今回はないですね。ただ、試合中に意識はあるので、そのときは何かしら考えて動いてたんでしょう。

――
でも、さすがに矢地選手からテイクダウンを取られたときはヤバイと思いました?

大原
 だから、そこも記憶がないんですよ。

――
あ、そっか(笑)。

大原
 倒されたことも知らなければ、それを返したことも知らなくて。だから、ビデオでちゃんと返していたのを見て「ちゃっかりやってるな」と思いました。

――
あの返しは、矢地選手のミスじゃなくて自分のテクニックなんだっておっしゃっていますよね。

大原
 バックに回られたら回られたで、ちょっとしたやり方があるんですよ。ちょっとだけのテクニックなんですけどね。それが意外と身体に染み付いていたみたいです。でも、矢地選手は純粋に強かったです。

――
対戦したからこそ、わかる強さ。

大原
 矢地選手、けっこういろいろ言われてますけど、でも勝ち負けの世界ですからね。勝ち続けることもあれば、負けることもあるんで。でも、やっぱりRIZINに継続参戦している選手だなって。控室に帰るときに、ボク「左ストレートうまかったなあ」とずっと言ってたみたいですしね。

――
その印象が強かったんですね。

大原
 関節蹴りも何発か受けたし、見にくい軌道の前蹴りもありましたし。前に戦ったサトシ・ソウザ選手も関節蹴りに関して「痛いよお」と言ってたじゃないですか。あれを聞いて「うわ痛いんだ。イヤだなあ……」って(笑)。
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