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小説家・樋口毅宏氏のUWFインタビューが大好評だったことから急遽シリーズ化が決定した「こじらせU系」第3弾! このシリーズではUWFの当事者ではなく、あのムーブメントの熱を浴びて人生を変えられた方々にUWFを振り返ってもらいます。今回は先日のRIZINで見事な一本勝ちを収めた中村大介選手です!(聞き手/ジャン斉藤)


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前田日明を信じ、前田日明に失望したU世代の愛憎■小説家・樋口毅宏
中村 ありがとうございます。

──飛びつき腕十字で一本勝ち。ファンが思い描いていたような展開で。

中村
 あー、そうですね。とくにUWFファンの方々が喜んでくださって(笑)。

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──
でも、煽りVでは「UWFとか言ってる人はいないですよ」と口にしてたじゃないですか。

中村
 あれはRIZINというかMMAファイターの中で「Uとか言ってる人はいない」みたいな感じで。もちろん好きな方はたくさんいらっしゃるんですけど、いまの選手では自分がもう最後の世代というか。それに自分が生で触れたのはUインターなんですよ。でも、UWFのことは……。

──
U系でもUWFは言葉にしづらい。

中村
 しづらいというのと、ドミネーター(弥益ドミネーター聡志 )選手が「UWFのことを語るとその筋の方に怒られる」みたいなことをRIZINの事前番組で言ってたじゃないですか。自分もただのファンなんで、あんまり公の場ではUWFについては、あんまり(苦笑)。

──
「UWFってなんですか?」って聞かれたら、なんて答えるんですか?

中村
 えっ、 なんですかね……。えっと……そういうプロレス団体があったという……簡単な言い方になっちゃう。

──そのくらいしか言えない(笑)。このDropkickでは、いまだにUWFのことをあーじゃないこーじゃないと扱ってて。最近も前田日明さんに対して批判気味のインタビューを載せたところ前田ファンが大激怒するという。令和の時代に(笑)。

中村
 本当に熱いですよね。素晴らしい。そういったエネルギーがいまだに感じられるのがUWFのすごさですよね。

──
ボクら見る側と違うのは、中村選手の場合はUの魂をもって実践する難しさがあるというか。そこは本当にすごいなって尊敬しちゃうんですよ。

中村
 ボクもいろんな方々から学んでいます。宮戸(優光)さんのところに何度か行かせていただいて、キャッチ・アズ・キャッチ・キャンに触れたり。藤原(喜明)さんのセミナーでそういう技術をちょっと教わったりしてるんですけど。実際に強いですよね。バリバリの年齢だったとしたらどれくらい強いんだろうって。

──Uの探究心がすごいというか、RIZIN当日に高田延彦さんの控室にサインをもらいにうかがったという話を聞いたんですけど。

中村
 はい(笑)。

──
いままで高田さんのサインはもらってなかったんですか?

中村
 高田さんのサインは本当に一度もないです。以前PRIDE武士道とかでお会いする機会があって。あと一度だけ飲みの席でご一緒したことはあるんですけど……試合当日にサインもらうっておかしいですよね。

──
おかしいですけど、中村選手らしいです!

中村
 今回は最後のチャンスだと(笑)。ベテランになってきたことで、とにかく楽しもうというモードに入ってて。試合当日にサインもらうのも逆におもしろいかなとか。

──若手だったら「試合当日に何をやってるんだ!」って感じかもしれませんけど。

中村
 そうですよね(笑)。試合では相手の新居選手のほうが緊張してたみたいで、すごく動きが硬かったです。そのへんは自分のほうが経験値が高かったのかなと。

──
高田さんにサインをもらうことに緊張はしてたけど(笑)。

中村
 そうですね(笑)。いまUインターの選手の方々のサインをジムの壁に貼ってまして……。いただいたのは高田さん、垣原(賢人)さん、桜庭和志さん、ヤマケン(山本喧一)さんの4枚だけなんですけど。

──
師匠の田村さんがいない。

中村
 田村さんは最後にいただこうかなと……いや、逆にいただけない。U-FILE CAMPに入ってから田村さんに「ファンでした」って一度も言ってないんです。

──
それは恐れ多くて?

中村
 恐れ多くて。

──
本当に好きなんですねぇ。

中村
 好きすぎて好きと言えない感じですね(笑)。

──恋愛ですよ!(笑)。高田さんにサインをもらえてなかったのは「田村潔司の弟子」だったことも関係ありますか?

中村
 U-FILEにいた頃はそうかもしれないですね。

――そのへんの配慮も素晴らしいです! 高田さんと田村さんって師弟関係ですけど、距離がありましたし。

中村 いまはチャンスだと思って。ボクは今年41歳なんですけど、高田さんはその年齢のときにはもう引退されてたってことで、「その歳でやってるのはすごいよ」って言っていただいて……すごくテンション上がりましたね! 試合前に強くなりました(笑)。 

──試合前にUの象徴であるレガースを脱げなかったのがおもしろかったです。

中村
 あんなことになるなんて全然、予想してなかったんですよ。普段は簡単に脱げるんですけど、緊張で汗びしゃびしゃになったこともあって。今回セコンドが初めての人がいたので、脱がし方が……下から引っ張ると簡単に脱げるんですけど、上から脱がそうとしたから「違う違う違う!」とか慌てちゃって(笑)。

──レガースの脱がし方って基本的に知らないですからね(笑)。

中村
 もっと脱ぎやすいレガースを作ろうかなと。

──
ホントは履いたまま試合をしたいんですよね?

中村
 もちろん履きたいんですけど、RIZINのルールだとキックが打てないので。

──
そこは迷いました?

中村 いやー、キックを出せないのはさすがにキツイですね(苦笑)。レガースが履けると気合の入り方が違うんですけど。

──
変な話、相手もちょっとダメージが和らぐじゃないですか、レガースって。

中村
 ハハハハハ、そうですよね。それ以上にパワーが出る……そこはとくに考えたことはないですね。

──
中村選手ってU系仕込みの寝技にみんな注目しますけど、試合を作ってるのは打撃ですよね。いまのスタイルってどうやって確立されたのかなって。

中村
 いまのスタイルはもちろん田村さんに教わったものと、ボクシングをやられてた方から教わったんですけど、最近はほぼ自己流で。最近は武術や武道の方と交流することがあって、身体の使い方、正中線を意識したりするイメージで。言葉で説明するのは難しいんですけど、最近攻撃力が上がったような気がしますね。

──
ノーガードは自分に合ってると思って?

中村
 前からガードを下げてるスタイルなんですけど、そのほうが相手の攻撃が見やすくて。いまのところ反射の感覚は鈍ってないかなぁと思ってまだやってます。だから完全に自己流ですね。自己流でいろんなものを取り入れて。ノーガードを参考にした人とかはいなくて。相手もやりづらいだろうって。あとはノーガードの代名詞になれば、目立ってね(笑)。

──ハハハハハハハ。

中村
 なんか変なところで目立ちたがり屋じゃないんですけど、そういう人と違う格好をしたりして目立ちたいところあるのかなぁと。自分でもよくわかってない。

──
Uスタイルにこだわるところもそうなんですか?

中村
 Uにこだわってるわけじゃなくて、田村さんから教えていただいた技術を自分の中でいろいろやったりしてるのが、自分のプロ・レスリングのスタイルだと思ってやってます。

──
アレンジしてるわけですね。

中村
 そうですね。昔のUWFのマネをしてるわけじゃないです。

──
田村さんのスタイルが絶対的なUWFのスタイルかというと、そうじゃないんですもんね。

中村
 そうなんです。いわゆる回転体がUWFってわけじゃないですもんね。あれは田村さんのスタイルで、噛み合う人がいると回転体になるんで。

──
中村選手もMMAで回転体をやったじゃないですか。大晦日『Dynamite!!』の所英男戦。

中村
 あー、所さんとやった試合のことをいまだに言っていただくんですけど、あれは所さんだからできたわけで。お互いが動いて戦わないと、回転体にはならないですよね。

──
たとえポジションニングが不利になっても相手を極めに行く者同士だからこそ。他にMMAで回転体的な試合って何か印象にあります?

中村
 いやー、所さんとの試合と比べちゃうと……あんなのないですね。基本、皆さんポジションを潰していく感じなんで。極め重視の人がそもそもいまのMMAでは……。だからこそ今成(正和)さんとかが異彩を放っていて。自分はああいう先輩がすごくカッコいいなって思ってるんです。いまのMMAだからこそ、あの違和感が素晴らしいですね。

──
中村選手が所属していた頃のU-FILEには、中村選手以上にUを追求してる選手っていなかったですよね。

中村
 自分より上の世代の方はやっぱり田村さんやUWFがすごく好きで入ってる人が多いんですけど。自分らの世代はそうでもなかったですね。好きな奴もいたんですけど、ほとんどは近所だったから通ってる感じで。

──
U好きではなかったと(笑)。

中村
 全員田村ファンじゃないんだって衝撃的でしたね(笑)。プロレス好きでプロレス寄りの格闘技をやりたい人とか、そんな感じでしたね。現役選手でもUインター見てた人ってあんまりいなくないですか? 

──そう言われるとそんなんですね。

中村
 関根シュレックさんくらい。Uインターに影響されてプロレス格闘技を始めた人ってあんまり聞かないんですよね。

──
どちらかというとパンクラスのほうが……。

中村
 あー、パンクラスには、いっぱいいますね。

──
Uインターってプロレス最強を追求する団体って感じですもんね。そのUインターに在籍していた田村さんのところで学べば、Uに近づけるという思いはあったんですか?
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