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なぜリデットはノアを救い、GLEATを立ち上げたのか■GREATな社長・鈴木裕之
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なぜリデットはノアを救い、GLEATを立ち上げたのか■GREATな社長・鈴木裕之

2021-05-07 19:03
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リデットエンターテインメント代表取締役・鈴木裕之ロングインタビュー。長州力引退興行、DNA、そして倒産寸前だったノアを預かり、現在は新団体GLEAT(リデットの頭文字Lと、GREATの造語)の旗揚げ戦を目前に控えている。ここまでプロレスビジネスに力を入れる理由をうかがった(聞き手/ジャン斉藤)


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――
リデットさんは広告代理店が本業ですけど、一時はノアの親会社となり、新たにGLEATという新団体を作ったりとプロレス界への貢献度が大きすぎて、逆に「ビジネスになっているんだろうか」って不安を覚えるファンも多いと思うんですよ。プロレス界って企業が参入してもうまくいかないケースが大半なので(笑)。

鈴木 ハハハハハ。いや、もちろんビジネスにならないと、ウチもやらないですよ。それにプロレスって全然ビジネスになりますからね。

――
さっそく安心しました!(笑)。プロレス界ってスポンサーに関してもあまり続かないイメージがありますね。

鈴木
 そうですよね。スポンサーも格闘技に関していえば、下が100万、上が千万、億単位の付き方なんでしょうけど、プロレスの場合は下が何万円とか……団体によりますけど、プロレスと格闘技の場合はゼロが2つ3つ違うんですよね。

――
いまは格闘技も決して恵まれた状況ではないんですが……その決定的な違いってなんですか?

鈴木
  PRIDEの頃は日本人vs外国人のストーリーの組み立てがナショナリズムを喚起させますし、ジャンル自体が「誰が一番強いのか」というスポーツ性があって、世界的な動きができるということでしょうね。 RIZINの榊原さんも会ってる方々も異次元じゃないですか(笑)。

――
ダナ・ホワイトにメイウェザーと(笑)。

鈴木 「プライベートジェットで会いに行きました!」とスケール感にもエンターテイメント性がありますし。

――
だからこそファイトマネーが青天井になりがちで。

鈴木
 プロレスにスケール感がないというわけじゃないんですが、猪木さんや馬場さんの時代は政治家とも絡んだりして、佐川急便さんは猪木さんのスポンサーにつかれて億単位のお金を入れていたり。

――佐川清氏がいなかったら、いまの猪木さんの立場はなかったりしますね。

鈴木
 猪木さんや馬場さんの師匠でもある力道山先生も日本国民に勇気と元気を与えて、戦後の復興にプロレスは貢献したわけですから。そのプロレスの力を信じてるんですね。ボクはタイガーマスクからプロレスファンになったんですが、当時は金曜夜8時という時間帯で放送していた。いま「ミュージックステーション」が放送してる枠ですから、すごいことなんですよ。

――
地力のあるコンテンツであると。

鈴木
 プロレスが持つ力でなんとか“プロレス最強復権”ができないものかなと。そこはプロレスファンの意地とかではなく、ボクは当然ビジネスになりえるものだと思ってやってまして。ただプロレスが好きなだけでもダメだし、そこはしっかり計算したうえでやってきたんですけど。

――
好きが高じてプロレスを支援しているわけじゃないんですね。

鈴木
 よく「長州力は何をやって給料をもらってるんだ?」みたいに書かれますけど、長州さんは興行以外にも、ものすごく貢献してもらってるんですよ。ウチの顧客対応で目に見えない売り上げを上げていますからね。どういうことかといえば、ウチの新規クライアント様の決めどころや、お付き合いのあるクライアント様の挨拶の場へ長州さんに行ってもらってるんです。最後の押しの一手であったり、年末新年のご挨拶にボクや社員と一緒にご挨拶に行ったり。

――
営業の切り札が長州力! 

鈴木
 ボクらの世代はプロレス好きのクライアント様が非常に多いんですよね。 ナショナルカンパニーの中にもたくさんいらっしゃるんですが、「プロレスファンですか?」と聞かれなきゃ答えないという人たちがほとんどで。

――
40代以上ってプロレスカルチャーに触れる機会が多かったわけですからね。 

鈴木
 長州さんはただ顔を見せるだけじゃなくて、いろんな話ができる方なんですよね。政治、映画……お客さんにちゃんとカスタマイズできる。プロレスの話は嫌がるんですけど(笑)。

――
ハハハハハハハ! 長州さんらしい(笑)。

鈴木
 プロレスの話になると、かわそうとするんですよね(笑)。プロレス以外は本当に楽しく話をしてくれて、みんな喜んでいただいてもらってます。

――
顧客対応という面で“営業の達人”だったりするプロレスラーの出番があるわけですね。

鈴木
 昭和の新日本プロレスって営業がめちゃくちゃ凄かったじゃないですか。営業の人間の名前があそこまで表に出ないですし(笑)。

――新間(寿)さん、大塚(直樹)さん、上井(文彦)さんだったり。営業の人間が力をつけすぎて会社が混乱する歴史の繰り返しなんですけど(笑)。

鈴木
 私を含めプロレスオタクと呼ばれてる人たちは、新日本の営業マンの名前をみんな知ってるんですよね。 全日本系だとなかなか名前が出てこないんですけど。5月5日にGLEAT FAN MEETINGが北海道であるので、元・新日本で北海道担当だった山中(秀明)さんに相談したんですよ。 そうしたらいきなり「何千枚売るの?」って話をされましたから(笑)。「200から400枚ぐらいです」って言ったら「そんなんで北海道まで行けるの?」って聞かれちゃって。

――
当時は桁違いだったんでしょうねぇ。

鈴木
 当時は長州さんが北海道の現地に入って、スポンサーの方々とゴルフ大会をやったり。そうやって接待した人たちが最終的に東京ドームまで来てくれたそうです。新日本プロレスの全盛期はお金の回り方を含めて異次元だったんでしょうね。

――
WJの社長だった福田政二さんも北海道の実業家でしたし、長州さんは当時からそういう営業には積極的だったと。 

鈴木 山中さんや上井さんからお話を聞くかぎり、積極的だったそうですね。長州さんとは10年以上のお付き合いになるんですけど、ものすごくインテリジェンシーな方ですし、チケットの売れ行きも気にするし、「何かあればすぐに呼んでください」と。 ものすごくフットワークが軽いんですよ。 お客様の挨拶回りも1日3~4件、ウチの社員と一緒に回ってくれますし。猪木さんもすごかったと思うんですよ。「元気ですか!?」の電話一本でどれくらいチケットが動いたのか。 

――
以前ノア勢のおかげで新日本プロレスの東京ドームが満員になったとマスコミが報じたら、猪木さんが「俺がいくら売ったと思ってるんだ?」って怒ったことがありましたね(笑)。

鈴木
 どんな仕事でもそうだと思うんですけど、どんなに素晴らしい商品を作っても、売れる人がいないと伝わらない。いまのプロレス界にもいい選手はたくさんいるんだけど、ポイントは営業力ですよね。ウチにストロングハーツ(CIMA、T-Hawk、エル・リンダマン、鬼塚一聖)が入ったことでわかったのは彼らは100枚単位で売ることなんですよ。

――
ドラゲー出身はそのへんの実力はすごいですね。

鈴木 ただ、いまのプロレス界にも100枚単位で売れる人はいますけど、1000枚単位にはなりづらいのかなと。

――1000枚になると格闘家でも難しいですねぇ。

鈴木 たとえば皇治選手なんかはすごいって聞きますね。

――
皇治選手の場合は後援会を作ってアフターケアもすごくて……。

鈴木
  あそこまで行くと組織、ひとつの会社ですよね。いまプロレス界に数千枚単位で売れるプレイヤーがいなくなったのは、 ファンと繋がりやすくなったところがそういった状況を生ませてしまったのかなと。昔のAKB48もすぐに会える距離感でしたけど、100枚以上売れる人が48人いたようなものですから。

――
それだけ人数がいれば、ファンと近くてもいいわけですね。

鈴木
 AKBもそのうち握手会はやるけど、ファンと距離を取るようになっていて 「テレビで見るアイドル」に持っていく作り込みがすごくうまかったですよね。あと、競争原理。そうすることで1000枚、1万枚の世界に入った。 プロレスの場合は距離が近いままで、まったく売る気もない人もいる。

――
そこをなんとか改善してビジネスにしていきたいと。

鈴木
 じゃないと、やらないです。ウチの社員にも、プロレスはちゃんと仕事になるんだなと思ってもらわないといけないし。お金にならない業界というふうに見えるのかもしれませんけど、じつはちゃんとやればビジネスとして成立すると。

――プロレスラーの中には会社に対してタニマチ気分の方もいるじゃないですか。

鈴木
 そういう人もいなくはないですけど、最初から境界線を引いてますね。給料はこんなものですよと。当然、他団体と差をつけないといい選手は入ってこないですから。カズ・ハヤシ、田中稔、ストロングハーツなんかは「ゼロからやる」ということで金銭じゃない部分の意気込みを感じます。国内に80近く団体やプロモーションがある中で、新日本プロレスさんが一番いいときで60億円の売り上げがあった。いま全体は150億から200億ぐらいの市場だとして、3強、5強に入れば売上10億円ぐらいは見込める業界なんじゃないかなと。10億円といえば、なかなかの金額ですから。 

――
いつくらいからプロレスビジネスの手応えを感じ始めているんですか?

鈴木
 じつは段階を踏んでいるんですよね。最初に長州さんに顧問になってもらって、新日本をやめた武田(有弘、現ノア取締役)さんが来て、次にSANADA選手のマネジメントをやるようになって、DNAの運営もさせていただきました。

――
DDTのブランドDNAの運営委託されてましたね。

鈴木
 AAAや長州さんの興行とか単発を手掛けてから、DNAの長めの興行をやって、その次がノアなんですよ。

――なるほど。一つ一つ段階を踏んで行ったんですね。

鈴木
 いきなり団体がやれるなんて思ってなくて。SANADA選手をマネジメントすることで、まず選手がどういうことを考えてるのかを知るわけですよ。そこにはもちろんSANADA選手の思考はあるんですけど、「こういうことを考えているんだ」ということを知って。武田さんが入ってきたから興行をやるようになって、そこで興行の仕組みを理解して。長州さんの引退興行は後楽園史上もっとも利益を出したと思います。武田くんが頑張ってくれて映画館のクローズドサーキットもやりましたし、 グッズも売れましたし。幸いなことにDNAとノア以外は黒字なんですよね。

――ああ、ノアとDNAは赤字だった。

鈴木
 とくにノアさんは厳しいところから入ったので、けっこう異次元でしたね(苦笑)。

――
ノアって負債もあったはずですから……マイナススタートですよね。

鈴木
 当初聞いてた債務とは違ってきたというか、簿外債務があることはわかってましたから。 あの頃のノアって1日を生きるのが精一杯で、お金の状況をちゃんと把握できる状態ではなかったんですよね。なので最初に聞いていた以外の数字も出てくることは予想していました。でも、ウチは8行の銀行と取り引きしていたんですけども、ノアをやるということで5行は引いちゃいました。

――
えええええええ!?

鈴木
 銀行まで足を運んで説明して説得しても電話一本で「申し訳ありません」と。

――
……ノアはリデットさんの運営に関わる危険なプロジェクトになったということですよね。

鈴木
 毎日「死ぬ……」と思いながらやってましたね(笑)。それくらい大変なことなのは、もちろんわかってました。こういった経験ができるのはウチの会社でも、1回あるかないかと思うのでいい経験になるなと。 

――
それでも成功できると?

鈴木
 成功は予想できてなかったですけど……。

――
え!?

鈴木
 成功はできなくても、下げ止めはできる確信はあったんです。それでオーナーになって1年でダメだったら閉めるという宣言をして。

――
それは1年で閉めるくらいの覚悟でやる、という意気込みじゃなくて。

鈴木
 いや、覚悟じゃなくて本気です。厳しいことをいうと、債務超過をしている会社なので社会的には続ける必要はないわけですよ。ウチが預かる前に社会的判断は下されていて、全員給料なしでもやるか、それか閉めるか……の2択で。じゃあウチが預かるからもう1年やってみようかと。

――
ノアは“終わっていたプロレス団体”だったんですね……。

鈴木
 1年で勝つことは難しいけど、下げ止めはできると。上がり目になれば、もしかしたら買おうとするところが出てくると思っていたので。

――
実際にサイバーが手を上げた。そこまで考えていたんですね。

鈴木
 考えていましたね。 ノアがそこまで落ちても生き残っていたのは、三沢(光晴)さんが作った団体だからだと思うんです。なぜノアがダメになったかといえば簡単で、その三沢さん以上に尊敬できる経営者がいなかったわけですよね。ウチがやるとなったときに、ノアのみんなに言ったのは「時間がないから私を信じるか、やめるか。もうこれしかないですよ」と。

――
下げ止めできるだろうという材料は何かあると考えていたんですか?

鈴木
 なんでボクらがノアをやろうとしたかといえば、決め手は清宮(海斗)選手なんですよね。
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