☆令和闘魂三銃士騒動/RIZINドーピング情報公開が進む
空手幻想が爆裂する極真世界王者・上田幹雄インタビュー!(聞き手・ジャン斉藤)
――先日の北海道大会ではRIZIN初勝利おめでとうございます!
――上田選手のMMA2戦目はGRACHANで秒殺KO勝利を収めてますけど、 RIZIN&MMAデビュー戦となった高阪剛戦では悔しい思いをしているだけに、勝利の喜びは違いますか?
上田 嬉しいというよりも一安心という感じですねぇ。これでやっとスタートができる。そこがいちばんです。RIZINという大舞台で勝って、皆さんに上田幹雄という空手家をアピールできたと思うので、ここから勝ち続けて「これだったら日本代表として世界で戦ってくれるな」と期待してもらうところまで進みたいです。そのスタート地点に立った感じですね。
――フィニッシュはすごかったというか、10連打近くを隙なく打てる打撃はホントにすごかったです!
上田 そこは空手の稽古の賜物というか、自然な動きなんですよね。今回の試合だけでいえば、打撃が効いたことで関根選手の目線が目が定まってなかったから追撃できましたけど、空手のクセがまだ抜けきれてないなと。直さなきゃいけないところはまだまだあります。そういうのって、1日2日程度の練習で修正はできないので、何百回、何千回、何万回と稽古を繰り返すことでようやく変えられるのかなと。
――極真出身の空手家が「何百回、何千回、何万回」と口にすると説得力があります。ホントに1万回やるんだろうなと(笑)。
上田 そうですね。やっぱり極真は回数が重要ですから(笑)。
――前回の高阪戦と比べて何か変わった点はありますか?
上田 やっぱり気持ちですね。いちばんは自信を持って戦えたことというか。高阪さんのときは「とにかく勝たなきゃ!」「自分の良さを出さなきゃ!」と気負いしすぎてアタフタしていたところがあって。今回は「試合を楽しめば自然に自分の良さが出せる」くらいの感じで、すごく冷静に戦えたのが前回との違いです。そこは1年間稽古を続けたことで自信を持てたとは思いますね。話がずれちゃうかもしれないですけど、デビュー戦で負けて「これからどうしようか?」って悩んだときに、今回セコンドをやってもらった長谷川(賢)さんの紹介でGENに誘っていただいて。
――日本の中・軽量級の猛者が集まるGENですね。
上田 GENでヘビー級の選手や岡見(勇信)さんとかトップファイターと練習したことで自信が持てましたね。MMAってホントに戦略戦というか、たとえば「組みvs立ち」だったら立ちではこっちが勝つけど、組み合ったらあっちが勝つことはよくあることじゃないですか。
――シチュエーション次第で、内容や結果は変わってきますね。
上田 今回の試合はこっちの作戦が当てはまりましたけど、まだまだ勉強が足りないと思ってるんで。自分には打撃という大きな武器がありますが、あらゆる部分で標準化していかないと、ちょっと何かスキを突かれたときに崩れてしまうのがMMAですよね。
――極真空手創始者! 大山倍達総裁は空手というジャンルを超えて現在の格闘技界に多大な影響を与えてますね。
上田 大山総裁は「右手がダメになったら左手を使え。手がダメになったら右足を使え。右足がダメになったら左足を使え。それがダメになったら頭を使えよ。それでもダメだったら呪ってでも倒せ」と。それが大山総裁の教えですから。
――「呪ってでも倒せ」は名言すぎます(笑)。ただ、いまはこの大山総裁のお言葉にしてもそうですが、極真のロマンがなかなか伝わりづらい時代で……。
上田 そこなんですよ! こんな言い方をすると、ちょっと悪口になっちゃうかもしれないですけど、時代に合ってない。でも、ボクはそこが大好きなんです(キッパリ)。
――上田選手、最高ですね!(笑)。
上田 昭和的思考というか、昔ながらの日本男児、武士道の考えが極真には残ってて。それがいまのこの時代に合ってないからこそ、ボクはそこを守っていきたいし、追求していきたいし、もっともっと広めたいんですよね。
――同世代に上田選手みたいな方、います?
上田 正直、同世代の人間にボクみたいな奴はいないです(苦笑)。 ボクは95年生まれなんですけど、大山総裁は94年にお亡くなりになってまして、かかってないんですけど。やるだけじゃなくて極真オタクというか。昔のことを調べれば調べるほど、どんどん大好きになって、一種のマインドコントロールに落ちてんじゃないかってくらい依存してるんですよ。
上田 だからいまの世の中で極真の凄さが知れ渡ってないのがくやしいんですよねぇ。たとえばボクのことを知らない人から「身体がでかいけど、何やってるの?」と聞かれたことがあって。「極真やってます」「あ、極真は知ってる。いまって誰がチャンピオンなの?」って世界チャンピオンの自分に聞かれたりとか……。「自分です!」って恥ずかしくて言えない。そういうくやしさの積み重ねが自分を動かしたっていうか、MMA挑戦を決意させたところはあります。
――上田選手はひさしぶりの日本人世界王者ですから、MMA転向は周囲から止められませんでした?
上田 止められたというか、やっぱり「なんでやめるの?」みたいなことを言われました。けど、もういてもたってもいられなかったです。
――極真の凄さがわからせたい!と。
上田 ボクがよく考えてたのは「大山総裁なら何をしたのかな?」っていうことなんですよ。たとえば、いまの時代に大山総裁がいらしたら、絶対にRIZINに殴り込んでんだろうなって。28歳の大山総裁なら、やってるんじゃないかって思っちゃったんですよねぇ。
――もしくは「キミィ、ちょっとRIZINで叩いてきなさい」ってお弟子さんの尻を叩いてたかもしれない(笑)。しかし、全世界の20代で上田選手がいちばん大山総裁のことを考えてますよ!
上田 本当に極真が大好きなんですよ。昔から歴史が好きというか、偉人の伝説や名言に興味があって。ボク、西郷隆盛が好きなんですけど、年1回かならず鹿児島まで西郷隆盛のお墓参りするくらいで。やっぱり伝説的な人物の逸話に「うわ、かっこいい!」って痺れちゃうんですよね。
――大山総裁のいちばん好きな話はなんですか?
上田 やっぱり“牛殺し”ですよね。いまやったら大問題ですけど。あと何ヵ月も山籠りするのもすごいし、世間に戻りづらくするために眉毛を剃る。適切な言い方はできないですけど、強くなるためには頭のネジが外れた行動を取るのが極真の良さですよねぇ。
――大山総裁ってあの時代に筋トレをガンガンやって分厚い身体を作ってる時点で只者ではないですよね。
上田 時代と逆境している感じがカッコいいっていうか、そういうところに憧れを持っちゃうんですよね。みんなが右に行くのに左に行くというか。
――その大山総裁に影響を受けたお弟子さんたちが、超人追及を引き継いで極真空手ブームが起きたわけですもんね。極真と新日本プロレスがなかったら、いまの格闘技界のかたちはなかったというか。
上田 先生方もすごかったですよ。中村誠先生や山崎照朝人先生……もう名前を挙げたらキリがないですけど、皆さんがやってきたことは、先生方の前では言えないですけど……おかしいんですよ(笑)。
――ハハハハハハ! ズバリ「おかしい」のひとことに尽きますね(笑)。
上田 そのおかしい人たちが1日何試合も殴り合ってるわけですからね。昔の先生方は「回数の超人」なんです。ボクたち世代は絶対にやらないと思うんですけど、とにかくなんでも1000回やるみたいな(笑)。
上田 いまの考えだとただ回数を重ねても意味がないと思われがちですが、空手の考えとしては「無駄を無駄と知るのは無駄じゃない」というものがあるんですよ。1000回やってみて身体がどう変化するのかを知る。意味がなかったことを知るのが空手の考えなんです。たとえば冬に滝を浴びる、夏に暑いところで稽古することもそう。冬の寒い中、滝を浴びたら風邪を引いて無駄かもしれない。でも、身体や精神が強くなる場合もある。心の底から1回やってみることが大事なんですよね。
――極限状態に追い込むことでしか、わからないものがあると。
上田 それは百人組手も同じだと思うんです。
――極真最大の荒行、百人組手! 上田選手もチャレンジされましたが60人目でドクターストップ。コロナ禍の最中にやってるから、よりハードだったと思うんですよね。
上田 百人組手をやってみてわかったことは……命の危険ですね(苦笑)。
――うわー! でも、八巻建弐先生とか過去の挑戦者も長期入院を強いられるほどですもんねぇ。
上田 それぐらいやっぱり身体に毒ですね。急性腎不全でボクは2ヵ月は練習ができませんでしたから。
――……すごいなあ。でも、極真世界王者であるならば、百人組手はやらなきゃならないものだと。
上田 やらなきゃならないですね(キッパリ)。そこから逃げたくはなかったです。極真世界王者の使命というか。
――上田選手も充分「おかしい」です(笑)。