先日「日本MMA審判機構JMOC」に関する記事をアップしたわけですが、RIZIN以前・以後の競技統括の変遷に実感のない新しいファンも多いことでしょう。かつてPRIDEやリングスなどの競技統括に関わった塩崎啓二さんの過去記事を振り返ることで、現在の進化ぶりを感じ取ってほしいです!

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プロレスが格闘技へと変換していくダイナミズムに満ち溢れた1990年代を立体的にしていく「総合格闘技が生まれた時代」シリーズ!! 今回はPRIDEやリングス、あの船木誠勝vsヒクソン・グレイシーを裁いた、金髪がトレードマークの元レフェリー・塩崎啓二氏が登場! 総合格闘技が巨大化していくさまを至近距離から目撃していた貴重な人物である。次から次へと飛び出す知られざるエピソードにお腹いっぱいです!(2014年4月収録)


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【検証「1984年のUWF」】船木誠勝「えっ、そんなことが書かれてるんですか?」



 

――『猪木祭り』メインレフェリーだった塩崎さんの話が聞きたくて名古屋まで来ました!

塩崎 それだけのためにわざわざ東京から来たの?

――はい。ズンドコ興行の極み2003年の『猪木祭り』に関わった方に話を聞くのが大好きで。

塩崎 あ~、ボンバイエかあ。……裏側の話は知らないよ!(笑)。

――ハハハハハハ!

塩崎 しかし、ボンバイエかあ。当時ね、日本テレビがあの件で格闘技から手を引いちゃったでしょ。やっぱり資金力のことでいったら日テレでやっていてほしかったですよ。そうしたら今頃UFCが天下を獲ることはなかったかもしれない。

――ちなみに塩崎さんは『猪木祭り』のギャラはもらえたんですか?

塩崎 うん。あのときの俺の仲間連中はみんなギャラをもらってますよ。

――未払いは免れたんですか。

塩崎 もともとドクターからジャッジからすべて俺に揃えてほしいという話で。俺の人脈で揃えるのはいいんだけど、未払いはかなわんなと思って。

――というと、最初から金銭関係は怪しかったんですか?

塩崎 関係者のXさんって知ってる? 

――はい。Xさんが『猪木祭り』の現場責任者だったんですよね。

塩崎 その名前を聞いた時点で取っ払い要求ですよ!(笑)。

――信用できなかったと(笑)。

塩崎 うん。とても信用できないからさ。向こうは「今回は銀行振込で……」ってしつこく言うんだけど「銀行振込は受けつけないです。ボクが選んだメンバーは全員取っ払いでお願いします。じゃなきゃやらないです」と。それで「考えさせてください」って言われた2~3日後にはこっちの要求したとおりになって。

――そうやって被害回避したんですね。

塩崎 あのとき取っ払いじゃない人はみんな未払いだもんね。しっかし、なんで日テレも任せちゃったんだろうね。ハッキリ言って格闘技イベントに関しては素人集団。ボクが神戸に前日入りしたら、関係者がみんなテンパってるから「リング周りの準備を手伝いますか?」って聞いたんだよ。

――相当ドタバタしてたそうですね。試合前日に永田vsヒョードルが決まるくらいでしたから。

塩崎 そうしたら「いや、大丈夫です!」って鼻であしらわれたんだけど、大会当日は大混乱で。関係者が「俺を探してる」と聞いて会ったら半泣きの状態。「すいません……ゴングを忘れちゃいましたぁ!」って試合開始2時間前だよ? もう開場してるんだよ!!

――ハハハハハハハハハ! 出た、有名なゴング忘れた事件!

塩崎 そこでブチギレですよ。 だって「ゴングの代わりに笛を吹こうと思うんですけど……」とか言い出して。テレビ中継があってほかの大晦日イベントはゴングを鳴らしてるのに「ピ~~~! 1ラウンド終了!!」はないだろって(笑)。

――笛だと、たまに乾いた音が鳴り響きますし(笑)。

塩崎 「どうしたらいいですか?」「どこかスポーツショップを当たってこいや!」。そうしたら大晦日だからどこのお店もやってないと。で、そのときジャッジだった淡路島で修斗をやってた須田(匡昇)くんが「塩崎さん、三島(☆ド根性ノ助)くんが観戦に来ますよ」と教えてくれて。

――三島さんは大阪在住でジムをやってますね。

塩崎 すぐ携帯に電話したら三島くんはちょうどジムを出ようとしてたんですよ! それで「三島くん、ゴングを持ってきて!」とお願いして。

――こうしてゴングを持った三島さんが神戸ウイングスタジアム入りしたとき、日テレ24時間テレビのマラソンゴール並の大歓迎を受けたとか(笑)。

塩崎 いやいや、違うんだよ。三島くんがゴングを持って来るから「顔パスで入れるようにしろ!」って伝えたんですけど、1時間くらいしてからかな。ボクの携帯に三島くんから電話があって「警備員に止められて会場に入れません!」と困ってるんだよ。

――せっかくゴングを持ってきてるのに!

塩崎 関係者入り口にダッシュで向かって「おまえら、三島くんとゴングは顔パスだって言っただろ!コノヤロー!!」って怒鳴りまくってね。

――三島☆ド根性ノ助とゴングは顔パス(笑)。それでなんとか試合準備が整ったわけですねぇ。

塩崎 いやいや、まだまだ問題があったんですよ! それでゴングを持ってリングサイドに行ったらさ、どこにも見当たらないんだよ。

――えっ、またゴングが行方不明ですか?

塩崎 違う違う。ジャッジの席がリングサイドにないんだよ! 

――ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ! 試合開始直前なのにジャッジ席がない(笑)。

塩崎 ホントなんだよ。ジャッジの机もイスもないだんだよ、どこにも!! 「すぐに用意します!」って大会開始1時間前に「すぐ」も何もねえよって。そして「ジャッジペーパーは?」って聞いたらコピー用紙を持ってきやがって。

――コピー用紙って適当すぎますよ(笑)

塩崎 そこには案の定、対戦カードも何も書いてないんだよ? どうやってジャッジを記入するんだよって話で。「ボールペンは?」「すぐ用意しますっ!!」だし。

――「筆記用具くらいジャッジが持ってくるだろ」みたいなノリなんですね(笑)。

塩崎 ストップウォッチもなかったからね。どうやってラウンドを終了させるつもりだったんだよ!(笑)。

――心の中で5分数えるとか(笑)。

塩崎 凄く怒りまくったなあ。あのときスタッフは俺のことをメチャクチャ怖い人だと思ってるはずですよ。

――大晦日にずっと激怒してる金髪の人(笑)。『猪木祭り』はカードもなかなか決まりませんでしたよね。

塩崎 マッチメイクのほうはぜんぜん知らない。

――でも、事前にどの試合を裁くか決まってないとやりづらくないですか?

塩崎 ああ、それで急にK-1ルールまで裁かされて。「これ、K-1ルールなんでお願いします」ってそんな話は聞いてなかったんだよ。

――あのときは日テレが大ピンチだったから、同局で番組を持ってるK-1がレイ・セフォーを派遣したんですよね。

塩崎 しかもグローブがワンサイズしかないんですよ。「グローブにクレームが入ってます」と連絡があって慌てて行ってみたら「グローブが入らないです」「ほかのサイズは?」「……これしかないです」と。

――グローブはさすがに「すぐに用意」できないですねぇ。

塩崎 これは裏話ですけど、しょうがないからグローブの中を切って手が入るようにしてその上からテーピングで固めたんですよ。対戦相手も呼んで「こういうふうにするけどオーバーハンドブローは反則を取る」ということで了承してもらってね。選手に申し訳ないなと思いながらギリギリで試合を成立させましたね。

――大会ハイライトだった最後のビンタ乱闘はどうされてたんですか?

塩崎 最後? 試合が終わったら知ったこっちゃないよっ!

――ハハハハハハ!

塩崎 すぐに控室に帰って三宮に焼き肉を食いに行きましたよ!(笑)。

――おそろしいことに日テレ『猪木祭り』って当初は2ヵ月に1回やるという予定だったんですよね。

塩崎 そう、最初の話では年6回興行。でも、アレで終わりましたよね。あんときの番組プロデューサーは地方に飛ばされてるでしょ。

――その方はあの『LEGEND』東京ドーム大会も担当してたんですよねぇ。

塩崎 選手引き抜いてPRIDEを潰すみたいな話だったけどさ。


・永田さんの男気が救った『猪木祭り』
・修斗からの嫌がらせ
・リングスと八百長
・KOKダンヘンvsノゲイラ判定の顛末
・PRIDEの汚れたレフェリング
・「あの人は八百長でもなんでも平気でやる」
・「人気選手にポイントを入れてください」
・桜庭和志vsホイラーのストップの真相
・菊田早苗vsアレクの金的騒動
・船木vsヒクソンのストップは……17000字の続きはこのあとへ