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川尻達也vs小見川道大の生々しさ■ジャン斉藤の「Mahjong Martial Arts」
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川尻達也vs小見川道大の生々しさ■ジャン斉藤の「Mahjong Martial Arts」

2012-12-17 14:37

    週に一度、ニコ生でマット界の出来事と麻雀戦術を語る配信をやってます。今年は12月17日の時点で東風・東南合わせて973回打ちました。ざっと計算するとゲーム代だけで60万近く払ってる上客ですが、ふつうに社会不適合者ですよね。年間2000打数打ってた19歳の頃はホームレスでした。いま振り返ると本当に馬鹿ですね。10年経ったらいまの自分にも同じことを言っていそうですが。。。

    とはいっても配信の中心はプロレス格闘技の話題が9割です。11月中旬くらいの放送回でリスナーからこんな質問がきた。

    「大晦日に川尻達也vs小見川道大はありえますか?」

    正確には忘れてしまいましたが「ありえないことはないけど、主催者はやりづらいんじゃないですかねー」という感じで答えた気がする。だから今回の発表はちょっと驚きました。両選手とも同じフェザー級だし、初対決の話題性もあるからやってもおかしくはない。

    でも、DREAMにとっても再出発の場となる大晦日で、団体の顔である川尻選手に小見川選手という実力者をぶつけるのってえらく生々しい。DREAMオフィシャルサイトのニュース記事ではふれてはいないですが、今試合のキモは、日本で戦極無双していた小見川選手がUFCで5戦して1勝しかできずにリリースされたことじゃないですかね。

    ここ数年、日本の格闘技ファンがすっかりトラウマになっている「日本vs北米」という図式。これまでは北米のトップランカーに負けたということで消化できなくもありませんでしたが、今回はUFCからリリースされた日本人選手……。DREAMファン目線からすれば「川尻敗北」という現実は受け入れがたいはずです。いやー、こわくて生々しい現実が浮き彫りになるカード。そして小見川選手からしてもこんな起死回生の機会はない。

    勝ったほうが上がる、負けたほうは下がる。シンプルな格闘原理がヒリヒリと伝わってくる。正直、旧DREAM末期って、所属選手が負けても、それが「なかったこと」にされて次大会に出場するという、ソンビ的マッチメイクが格闘技が持つ独特の緊張感をそいできたところはあった。

    DREAMは“場”ではなく“団体”的なMMAイベントです。事実上の所属選手を中心としたマッチメイクを組み、物語をつむいでいく。たとえばいまの日本って外国人ファイターを「◯◯選手の対戦相手」として招聘する(勝っても次回は呼ばれない外国人選手って多いですよね)。それは日本人より高いギャラや、セコンドの渡航費を払ってキャリアを積ませても、これからというときに結局は北米市場に移ってしまうから。プロモーターからすれば投資のしがいがまったくない。

    今回のDREAM大晦日に出陣する日本人選手は事実上の「DREAM所属ファイター」と言っていい。契約形態はそれぞれ違ってくるでしょうが、青木真也選手がPRIDE武士道時代から月給をもらっていたことを語っていたりして、簡単にいえばそこはプロレス団体と同じようなもん。新日本プロレスは他団体の選手も使うけど、団体所属選手を中心にプロデュースしていく。上井文彦さんは外敵ばかりを重宝していた?アレは営業出身の人間にマッチメイクをやらせるのが間違いだから忘れてやってください~。

    所属選手は団体に尽くす。団体は選手に試合の場を提供する。しかし、ここ数年はその図式が成り立たなくなり、DREAMを離れていく選手もあらわれた。元寇で鎌倉幕府に尽くしながら十分な恩賞を受けられず不満を募らせていった御家人と同じだ。御恩と奉公が成り立たなければ武家人は反旗を翻す。

    いまの日本格闘技界って応仁の乱でボロボロになった室町幕府みたいなもんですかね。もう誰もDREAM幕府の言うこと聞かないみたいな。そこに織田信長というピエールさんが現われて…あんまり例えていくと怒られるからここまでにして話を戻します。

    そのむかし、さいたまスーパーアリーナのけやき広場で20代の女子がミルコ・クロコップのタオルを頭からかぶり泣き崩れていた。応援していたミルコがランデルマンにまさかのKO負けを喫したからだ。当時は「ミーハーなファンもいるな~」と苦笑しながら田村潔司の入場テーマにあわせて手拍子していたポンコツな私ですが、やっぱり闘いって応援している自分の存在さえも否定されてしまうようなシチューエーションじゃないと燃えないもんだなーとあらためて思う。「負けたら次はない」わけはないんですが、観る者をそう思わせないといけないし、今回の試合はそんな緊張感を感じることができる。

    「小見川と川尻にそこまで思い入れはないよ!」というファンも多いことでしょう。それはすごくわかります。こんどの年末は船木誠勝vsヴォルク・ハンとか三崎和雄引退興行、所英男vs佐藤ルミナ、小川直也vs藤田和之……、もう思い入れだけでお腹いっぱいとなるカードばかり。試合内容以前に選手同士が向かい合っただけで「勝ち」の企画ばかりだ。
    戦力が分散していることもあって話題的にも集客的にも今回のDREAMは大晦日史上、もっとも苦戦が予想されている中、川尻選手と小見川選手のにはこの先の格闘技の歴史をつむいでいかねばならない役割があると思う。格闘技プロレスって思い入れというスパイスが重要ですけど、消費するばかりじゃなくて、どこかで誰かがそれを作っていかないといけない。来年の夏頃、けやき広場でビビアーノ・フェルナンデスのタオルを頭からかぶって泣き崩れるビビ女子を生むためにも。川尻選手と小見川選手の試合は、どちらが確実に傷つくカードであり、この先の楽しみを作るためにいまと戦うものだと思います。

    というわけで、DREAM注目をこんなにも訴えながらも、私は両国IGFの小川直也vs藤田和之も見たいので今年は自宅でダブル視聴します。皆さんはどんな予定ですか?(ジャン斉藤)

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