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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/04/26
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今日は【岡田斗司夫アーカイブ】から選りすぐり 2017/05/28放送の『ニコ生ゼミ』
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 富野由悠季が『ガンダム』で描いた、人類進化のその先
 

 「SF映画」っていろんな定義の仕方があって。「科学的につじつまが合っていればSFだ」とか、いろんな言い方があるんだけども。

 たとえば、『機動戦士ガンダム』っていう作品があるんだけど、昔、「ガンダムはSFと言えるか?」っていう大論争がSF界であったんだ。

・・・

 ガンダムはSFなんだよ。

 なぜかというと、最後に出てくる「ニュータイプ」っていう概念を、遺伝でなくて進化として捉えてるからなんだよね。

 
 「宇宙空間に行ったことによって認識力が広がって、他人の考えていることや、思いやりとかが言葉を介さずにもわかってしまう人」というのが、いわゆるニュータイプ。

 ガンダムではそういう人たちが戦争に利用されてしまう話を描いてるんだけど。

 たぶん、ガンダムの監督の富野さんの世代というのは、今西錦司という生物学者の影響をすごく強く受けているんだよね。

 今西錦司っていう人は、京都大学の名誉教授なんだけども、「今西進化論」というのを編み出した人なんだ。

 今西進化論を一言でいうと、「サルは立つべくして立った」というもの。


 ダーウィンの進化論では、「なぜサルは立ったか? なぜキリンの首は伸びたか?」っていう疑問に対して、「首が長い個体は短い個体よりも多く生き残れたから、結果的に長い首のキリンだけが残っていった」っていう生存説なんだよね。

 ところが、今西錦司というのは「サルは立つべくして立った」と言うんだ。

 「必要性とかじゃなく、まず立ちたかったから立ったんだよ!」っていう(笑)。

 「それがたまたま生存に繋がったという理屈を僕らは解釈の上でこねくっているけど、本当は違う」みたいなことを言った人なんだけど。


 もう少し詳しく言ってみるね。

 「生理・生態がよく似た個体同士は、生活史において競争と協調の動的平衡が生じる。」

 難しい言い方だよね。

 「この動的平衡状態の中で組織されたものが “種” である。その種の社会は、いろいろなチャンスによって分裂し、別の種の社会を形成する。」

 つまり、地球と宇宙コロニーみたいなものだよね。

 「分裂した種の社会は、それぞれ棲み分けることによって、可能ならば競争を避けつつ、適切な環境に移動することができた時、生物個体と種の社会は、それぞれが自己完結し、自律的な働きを示す。その結果、生じる生理生態形態が「進化」である」

 つまり、いる場所によって、形態とか生きている構造、生物学的な特性が変わってしまう。

 それが進化だという。

 これはガンダムの、「人間は宇宙に行ったから進化した」という考え方に近いね。

 「従って、進化とは棲み分けの密度化という方向性があるという。その過程において突然変異は種の社会の中で通常以上に高頻度で起こる必要があり、またその変化は速やかに種全体に広がる。変化はランダムではなく、派生の制約上、方向性を持つ」

 たとえば、「宇宙に行った人類はみんな同じような進化をしちゃう」という共通した方向性を持つわけだね。

「起きた変移に対して、生物が主体的に振る舞うので適応的に見える、というのが『主体性の進化論』(1981)における今西進化論である」と。


 ちょっとね、できるだけ正確に伝えようとしたから、原文っぽい調子で言ったんだけども。

 基本的に今西錦司が言ったのは、「同じ生物でも、棲み分ける環境によって変化して、一度その変化が起きると、種全体に一斉に広がる」って言ってるんだよね。


 僕がガンダムを「良いSF作品だ」って思う理由は…

 …「SF作品だ」と思うんじゃないよ?

  「「良い」SF作品だ」と思うんだけど。


 これ、今やってる「ガンダム講義」の最後の最後で言うつもりだったんだけども。

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