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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の解決!ズバっと 2015/07/30
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おはよう! 岡田斗司夫です。
メルマガ読者の方から、多数質問をいただいています。
かたっぱしから答えてみましょう。

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「橋下大阪市長について教えてください」

考えすぎてる人さん/19歳

 ニコ生や講演で何時間も話をされている岡田さんから見て、橋下市長はどんな人に見えますか?
 凄いところ、ダメなところ両方あると思うのですが、岡田さんの橋下評価を聞きたいです。

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 橋下さんは「ズルい人」だね。
 「ズルい人」という評価は良い意味でも悪い意味でも使えると思う。
 例えば橋下さんは、大阪市の教育委員会をボロクソに言うし、国に関しても「ぼったくりバー」と言ったりした。
 これが果たして、知事や市長として正しいのかどうかと言えば、すごく疑問符が付くんだよね。


■橋下徹は「権力者を批判する権力者」

 権力者が自分より上の権力に文句を言うのは、課長が社長の批判をして平社員の人気を取るようなもの。
 それをやると、その会社は問題が出てくると思う。

 もし社長のやり方に文句があるなら、社長に言うべき。
 つまり国のやり方に文句があるなら、大臣に会いに行って言えばいい。
 それは知事や市長の立場じゃなくて、本当に会いに行ける立場なんだから、行けばいいだけじゃん。
 でも「権力に対する反権力」として言うのは、自分自身に権力がある人間が、より大きな権力に対して戦うフリをすること。
 これはダブルスタンダードだと思うんだよね。

 橋下さんは自分がダブルスタンダードと分かっている。
 でも、それが一般大衆に対して最大限アピールする方法。
 自分より大きな権力と戦っている間は、知事や市長という権力者としての批判を回避することができる。
 これを最大限効率の良い方法として考えているあたりが、正直ズルいと思う。
 そういうズルさを使わない限り、維新の会も影響力を持てなかったという事情があるので、クレバーだなとも思う。


■民主主義にて、「職業政治家」がいるのは間違っている

 「選挙に負けたから大阪都構想は諦める」「政治家を辞めて、弁護士に戻ります」と言って橋下さんは政治家を辞めた。
 この辞め方はイヤじゃないな。
 「辞めるんじゃなくて、政治家になったんだから義務を果たせよ」という意見は、民主主義の考え方じゃないと思うんだよね。

 ついつい間違えちゃうけど、民主主義って「職業としての政治家」がいるのは間違いなんだよ。
 民主主義は「社会に問題がある」と思った人が立候補して、投票によってのみ、政治家になれる。

 政治家になれるかどうかは投票で決まる。
 でも政治家を辞めるかどうかは、「選挙に出ない」ことで、自由意志で選べる。
 だから「大阪都構想が破れたぐらいで政治家を辞めるとは何事だ」「民意で選ばれたんだから、責任をとって政治家を続けろ」と言うのは民主主義に反してるんだよ。

 延々と10年も20年も政治家を続けている奴の方が明らかに異常なんだ。
 自分がやれると思ったタイミングだけ政治家をやって、それ以外は本業で食っている状態が、本来の政治家の姿。
 職業軍人じゃあるまいし、職業政治家が存在していること自体が間違だと思っている。

 橋下さんの辞め方はイヤじゃない。
 でも橋下さんの戦略である「権力者を批判する権力者」は、郵政民営改革のように自民党を1つにまとめて選挙を上手くやった小泉さんと同じように、本当にズルいよなあ。
 こんなにズルい奴に、皆はついつい投票しちゃう(笑)
 民主主義を信じながら、民主主義に対する絶望みたいなものが俺の中にあるよね。


【まとめ】
 橋下さんは権力者でありながら、権力を批判することで、大衆の支持を獲得しました。
 ズルイと思いますが、同時にクレバーであると思います。
 ただ、政治家としての引き際は嫌いじゃありません。