<阪神JF:追い切り>

 阪神JF(G1、芝1600メートル、13日)の追い切りチャンピオンは関東馬メジャーエンブレム(田村)だ。オーバーワークだけを避けた9日のウッドでの最終追い切りでは、古馬2頭をちぎってみせた。ド迫力ボディーが生み出す強烈なフットワークは、2歳牝馬とは思えない。

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3頭併せで追い切られ内から抜け出すメジャーエンブレム。左はコンドルヒデオ

 牡馬クラシックに挑む馬と勘違いしてもおかしくないほどにメジャーエンブレムの馬格、落ち着きは群を抜く。坂路でウオーミングアップ、ウッドでの併せ馬を行い、引き揚げてきても息はまったく乱れない。オーナー関係者が構えるカメラの前でも微動だにせず、ポーズを決める。「血統的には手がかかるはずなんだけど、この子は主張しないタイプ。普段からおとなしいし、おっとりしてるんですよ」。愛娘を語る田村師の口元が緩む。力強い動きとその精神面にS評価だ。

 師が「本気でやるとべらぼうな時計が出る。オーバーワークにならないように・・・」と説明した最終追いで、圧倒的な走りを見せた。向正面で5馬身先行する2頭を目標にコーナーで加速。直線入り口で並ぶ間もなく抜き去り、ゴールでは外コンドルヒデオ(古馬500万)に3馬身、中ノーブルガイア(古馬500万)に5馬身先着を果たした。5ハロン65秒8-12秒8。オーバーワークに注意した追い切りでも並の2歳馬には出せない数字を軽々たたき出した。

 豪快な動きを披露した一方で、課題もクリアした。前走アルテミスSは3コーナーからハナに立つ競馬。押し切る寸前に大外から差され、初黒星を喫した。「前走は残念だけど、まったく出し抜けを食らう感じだったから。ああなったのでいろいろメニューを考えてきたし、その効果も感じられる」。中間はこれまで通りリフレッシュ放牧を挟み、調教では前に馬を置く形で折り合いを重視してきた。デビュー2戦同様の好位抜け出しへ準備は整った。

 「古馬のオープン馬が苦労するドボドボの馬場を馬なりで上がってきた。まだ追い切りを1本もしたことがなかったのに軽めで60秒を切ってきた。とにかく半端じゃない」。デビュー前から田村師を驚かせた逸材が、大一番を前に思い通りの仕上がりだ。「輸送は心配していない。枠も内外、関係ない。あとはルメールに任せる」。万全の追い切りだったからこそここまで言い切れる。【木南友輔】