「やま〜ん」はしばしば我が家に遊びに来るが
私は「やま〜ん」の家に行った事はない!
なぜなら彼は地下鉄「谷町線」の終点である
「八尾南(やおみなみ)」に住んでおり
私は「八尾南」という場所には
一度も行きたいと思った事がないからだ!

「八尾南なんてところに何があるのだね?」

と尋ねると

「ミキハウスの本社がある!」

と「やま〜ん」は答える!
そして!

「他には何がある?」

と尋ねると「やま〜ん」は黙る!
ほら見ろ!
「八尾南」が私にとって
行く必要のまったくない場所である事は
その無言で充分に説明がつく!
私は「やま〜ん」の家には行かない!
なので「八尾南」という場所には
生涯行く事はないだろう!

・・・と思っていたのは
昨年までの私だ!

「後藤おすひと」を名乗り
「駅スタンプ収集」にひろぐ私には
「八尾南」に行く必要が
おおいにある!
「後藤おすひと」にとって
「八尾南」に行く事は
宿命ですらあるのだ!

そんなわけで
「うちで飲みましょうよ!」
という「やま〜ん」からの招待を
私は初めて快諾したのであった!
名付けて!

「ハーフ・オペレーション谷町」!

これは「オペレーション今里」に続く
新たな冒険である!
地下鉄「谷町線」には
全部で26個の駅がある!
前回朝から晩までかかって乗り切った
「今里筋線」の駅数は
わずか11個なので
「谷町線」全26駅を一日で制覇する事は
ほぼ不可能と計算された!
ならば「谷町線」のほぼ中央にある我が家から
「八尾南」までを目指してみよう!
そうすれば十数駅の勘定になる!
つまり「谷町線」の南側にあたる
ほぼ半分の駅を巡る事となるわけだ!
「オペレーション」に「ハーフ」が付されたのは
そういう理由である!

では!
出発しよう!
今回は「やま〜ん」の接待を受ける事が
最大のきっかけであるため
「オペレーション」に挑みたい人を
誰かれかまわず誘うわけにはないかない!
私は単独で
「ハーフ・オペレーション谷町」
に挑んだ!
なので今回は
道中で私を写した写真はない!

まずはちょいと「日本橋」に用事があり
寄り道をした上で「谷町線」の線路に戻った!
これまで「後藤おすひと」は
「谷町線」南向きのスタンプで言うと
「谷町九丁目」まで収集を終えていた!
なのでスタート地点は
「四天王寺前夕陽ケ丘(してんのうじまえゆうひがおか)」
という事になる!
我が家からは徒歩距離で
よく見知った場所ではあるが
「オペレーション」の規定第3条には
こんな一節がある!

規定第3条
下車した駅では必ず外に出て
駅周辺を散策しなきゃだめですよ

我が家の近所の景色でもあるため
特に何の発見もなく
「四天王寺前夕陽ケ丘」駅付近を散策した!
そして「駅長室」へと入室し
最初のスタンプを押した!
なるほど!
駅長に尋ねるまでもない!
これは名作「上方落語」
『鷺とり』や『四天王寺詣り』に登場する
「四天王寺」さんだ!


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さてここで軽い発見だ!
本来「夕陽ケ丘」駅として着工されたこの駅だが
開設時になって
「四天王寺前」駅と改名が発表されたため
「なんで変えるんだ!」
と大問題になったそうである!
そこで最終的に
「四天王寺前夕陽ケ丘」という
ずいぶん長い駅名が生まれたらしい!
なのに!
ややっ!
このスタンプはそうではない!
このスタンプのせいで
また問題が起こらない事を祈りたい!

続いての駅は「天王寺」
こここそ私にとっては
あまりにも日常的な場所だ!
オペレーションに挑んだ2日前には
日本で最も高い高層ビル
「あべのハルカス」
がオープンしたばかりだ!
地上に上がろうとしたのだが
そのオープン景気のせいで
かなりの人だかりだった!
なのでちょいとお日様を見る程度にして
すぐにまた地下に潜る事にした!


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スタンプの柄は
これまた大阪人ならば誰もがよく知っている
「大阪市立美術館」だ!
「天王寺公園」
「天王寺動物園」などなど
名所の多い「天王寺」駅だが
この駅で下車しても
「天王寺」というお寺はない!
駅名(地名)の由来は
先の「四天王寺」から来ている!

続いて下車したのは
「阿倍野(あべの)」駅だった!
『発熱!猿人ショー』という
Piperによるばか番組を覚えておいでの方には
あの伝説の
「かたむきハウス」
があった場所と説明すれば
不覚にも身近に感じていただけるだろう!
「あべのハルカス」がオープンしたせいか
「あべのQ’s Mall」ができたせいか
かつては栄えたショッピングモール
「あべのベルタ」は
とても悲しい状態になっていた!
私が大阪に来た頃には
たいそうにぎわい
毎月のようにセールが行われ
そのおかげで
セールの飾り付けをするアルバイトを
よく頂いたものだ!
天井にモールやポップを吊るべく
夜通し「あべのベルタ」にいたものである!


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スタンプもなんだか悲しいデザインだった!
駅長に
「この辺にこんなのありましたかね?」
と尋ねると
「うーん・・・
 寺っぽいですけどねぇ・・・
 ここらに寺はありませんしねぇ・・・」
と悲しそうに答えた!

さて!
ここでこれら3駅の不思議な関係に
お気づきになられた方は
どれほどいらっしゃるだろうか?

「四天王寺前夕陽ケ丘」駅にある「四天王寺」から
「天王寺」駅は名前をもらっている!
「天王寺」駅にある「あべのハルカス」だが
「阿倍野」を名乗るのはその次の駅だ!
なんとも説明しにくい
”先へ先へ”の関係なのだが
私にはこの複雑な関係が
「さぁ!
 どんどん先に行け!」
と応援してくれているように思えた!
目指せ「八尾南」!
「やま〜ん」がカニ鍋の準備をしてくれている!

次なる駅は
「文の里(ふみのさと)」だった!
ここからは初めて降車する駅ばかりだ!
「文の里」というぐらいだから
さぞや文をしたためる習慣が強く
住人はほぼ着物で
懐には筆を挿しているイメージだった!
何かあっても口では言わず
「拝啓」
という書き出しで
手紙を出す人達が住む街を想った!
しかし地上に上がってみると
阪神高速の下にある
車通りの多い
あまりにも普通の交差点だった!
普段は何気なく聞き流していた地名だが
こうして地下から地上を想像する事で
この地名がとてもロマンチックな物だと
感じる事ができた事は
たいそうな収穫だ!

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インクが薄くて見えにくいが
「文の里公園」ではなかろうか?
珍しく駅長が忙しそうにしていた駅だったので
尋ねる事は控えた!

さて!
このスタンプを押したところで!
私の「スタンプノート」が終わった!
2014年1月23日に開始したスタンプ収集だったが
約1ヶ月半でノートの全ページを使い切った!
最後のページに押されたのは
私には縁もゆかりもない駅
「文の里」だった!
こうなる事は予想していたので
私はかばんの中から
新たな「スタンプノート」を取り出し
包装ビニールを開封した!
さぁ!
記念すべき二冊目の最初を飾るスタンプは
一体どこの駅なのだろうか?


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「文の里」だった!
スタンプが二つあったのだ!
あろう事か私のスタンプノートは
「文の里」に終わり
「文の里」に始まった!
それもまた一興というものだ!

こうした複数のスタンプを持つ駅は
これまでにもいくつかあった!
しかし
スタンプの枠などを見比べる事で
どちらが先に作られたスタンプなのかを
察する事は可能だ!
私はこうした2つ目のスタンプを
「2スタ(にすた)」
と呼ぶ事に決めた!
山口百恵さんは引退するまで
決して業界用語を使わず
夜にスタジオ入りすれば
「こんばんは」
と言っていたそうだ!
その逸話が大好きな私は
彼女にならって
なるべく日常では業界用語を使わないようにしている!
なので2つ目のスタンプを
「2スタ」と呼んでも
私は何とも混同せずに生きていける自信がある!

続く「田辺(たなべ)」駅周辺は
なかなか歴史ある町並みだったため
ずいぶん散策し
古民家の間を歩いてひろいだ!
それが楽しかったために
スタンプを押す手に力がこもったのだろうか?
ちょいとぶれてしまった!
しかし!
おかげで「谷町線」車輛が
ものすごくリアルに疾走する姿となった!
私はここで
駅スタンプに
「ぶらし」というテクニックがある事を知った!


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次の「駒川中野(こまがわなかの)」駅では
商店街のあまりのにぎわいに
たいそうショックを受けた!
人を避けなければ歩けないほど
商店街が家族連れで盛り上がっていた!
ちょうどお昼時でもあったので
私は前回の「オペレーション今里」を思い出し
駒川商店街で「お好み焼き」屋さんに入店し
焼きそばを大盛りで食べた!
お好み焼き屋さんの店主に
「この商店街はいつもこんなに栄えているのか?」
と尋ねると
「まぁ日曜やしねぇ!
 だいたいいつもこんなもんですわ!」
と実に爽快な笑顔で教えてくれた!
いいものだ!
日曜日に家族で商店街に出掛ける!
なんとも幸せな話ではないか!


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駅に戻って
やはり2つあったスタンプを押してみると!
桜の輪郭を持つ「1スタ」は
軽くしっちゃかめっちゃかだったが
「2スタ」の方は
自慢の「駒川商店街」を
描いたものだった!
街の自慢の商店街を駅スタンプにする!
これほど素敵な話はない!

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更に先へと進む私は
ここからなかなかショッキングな
スタンプ世界へと突入して行く!
駅長と共にひねった首が
元にもどらなくなるほど
ちんちらぽっぽーなスタンプが
私を待ち受けているとは
この時には知る由もなかった!

目的地「八尾南」は
まだまだ先である!