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前回までのあらすじ
「ゆいレール」に乗った!
「牧志(まきし)」駅を後にした我々は
続く「安里(あさと)」駅に向かった!
前回の『ひろぐ』では
”沖縄の人々には「うちの駅」という感覚がない”
と記したが
この駅こそ「うちの駅」感覚が最も薄い駅だ!
その証拠として那覇の人々は
この駅周辺の事を
誰も「安里」とは呼ばず
「栄町(さかえまち)」と呼んでいる!
「沖縄に来たのだから海が見たい!」
「水族館に行きたい!」
「マリンスポーツがしたい!」
そう言い張る人達に付き合うのを面倒と思うあなた!
あなたは絶対にこの「安里」駅で下車して
「栄町市場商店街」に行くべきだ!
私は今回「沖縄」に9日間滞在して
この「栄町市場商店街」こそが
「沖縄」の神髄であると感じた!
「懐かしい昭和のたたずまいを残す町」
というキャッチコピーで
各店舗が一丸となり盛り上げている商店街なのだが
私はそこに「昭和」を感じる事はなかった!
感じたのはむしろ「異国情緒」である!
私が子供の頃にはまだ日本ですらなかった「沖縄」!
この「栄町市場商店街」を歩くと
「ははーん!
この土地はやっぱり外国だったのだ!」
と改めて感じてしまう!
二人がすれ違うのもやっとという
とにかく細い道いっぱいに店舗が並び
まるで「ジャッキー・チェン」が
物干竿を片手に
自転車で追いかけ合いをしそうな風景だ!
日差しはほとんど入らず
今が昼なのか夜なのかは
各自で時計を見て判断しなければいけない!
ふと見れば
我らが「デルシネ」チームの
沖縄芸人「ボンボ」が出演するチラシが貼られていたが
これすらも45年ぐらい前に終わっているかのように見える!
(実際はまだ上演もされていない!)
訪れたのは昼間だったが
夜になればこれらの細道が
一斉に飲み屋街に変わる!
ある店などはお酒しか出さず
”食べ物はよそのお店で買って来て下さい!”
と言われる!
つまりコンビニエンス・ストアで買って来ても
母親におにぎりをにぎってもらっても
お酒さえ注文すれば
それらを持って入店できるのだ!
しかもそんな必要が無いほど
楽しくおいしい食べ物屋さんが
どっさりシャッターを開ける!
我々も「ボンボ」の案内で
後日この商店街で飲んだくれたのだが
観光客用の割高なお店で
おいしい楽しいと言う人達を
哀れに思えて来るほどの素敵な時間をひろいだ!
悪い事は言わない!
「沖縄」で観光ガイドを持って遊ぶ事に
拒否反応を示す人は
是非とも「ゆいレール」に乗り
この「栄町市場商店街」で飲んだくれていただきたい!
様々な趣向で商店街を盛り上げる
ホームページも必見だ!
店主のおばさん達を寄せ集めて
ラップ・ユニットなども結成されているのだ!
「栄町市場商店街ホームページ」
続いての「ゆいレール」駅は
その名も
「おもろまち」駅!
関西人ならばまず間違いなく
「ほんまやな?」
と強く思ってしまうこの駅名!
芸人である「こまちゃん」こと「ミルクボーイ駒場」君
そして「アグー」こと「ガブリエルみき」は
この駅で降りずにはいられまい!
この地域もまた
近年になって米軍から返還された土地で
「北谷(ちゃたん)町」と並び
その再開発に成功した場所だと聞く!
免税店やスーパーマーケットなどが
壮大なスケールで建ち並ぶ街で
私がかつて訪れた
「沖縄県立博物館」もここにある!
ただし!
この駅で下車して
「おもろい!」
と思えるかどうかは
その人次第だ!
少なくとも我々
「オペレーションゆい」参加者3名は
努力だけはしてみた!
続く「古島(ふるじま)」駅は
学校が多く”文教地区”といった雰囲気だった!
そんな治安の良さそうな場所を
「おもろまち」でおもしろを蓄えた我々が歩き廻っては
不審者とみなされる!
なので散策は少なめにしておいた!
ここまで来ると
さすがに私の「スタンプ」捺印も
熟練の技に差し掛かっている!
次なる「市立病院前」駅は
その名の通りの場所だった!
私は今回収集した「スタンプ」を
その後「デルシネ」上映会場で様々な人に披露し
「もしもこれらの駅の中で
どこかゆかりのある駅があったとしたら
コメントをもらえないか?」
と頼んで廻った!
すると!
実に面白い男がこの「市立病院前」駅を選んでくれた!
「ガレッジセール」の「かわちゃん」だった!
「ちゃーがんじゅー!」
というのは方言で
「いつも元気で!」
といった意味だそうだ!
恐らく「がんじゅー」は
「頑丈」と一致するのではないだろうか?
「かわちゃん」のお父さん!
ちゃーがんじゅー!
さて!
時刻は夕方に差し掛かり
「オペレーションゆい」もいよいよ佳境である!
終点一駅前の
「儀保(ぎぼ)」駅で下車した我々は
次の終点駅に進む事を少々じらし
意味もなくコンビニエンス・ストアで
立ち読みなどして過ごした!
てっきり終点「首里(しゅり)」駅で
このスタンプ柄に出会えると思っていたのだが
予想外にも「儀保」駅の「スタンプ」がこれだった!
そして終点「首里」駅へ!
午前11時に出発した「オペレーションゆい」は
午後の6時に終了した!
実に7時間の旅であった!
最後に押した「スタンプ」は
やはり首里城だった!
「首里」駅はその名の通り
2千円札のデザインとなった
首里城に行く駅である!
「首里」駅で降車して
首里城に行かない観光客は
恐らく我々ぐらいだろう!
はてさて!
かくして「オペレーションゆい」を完遂した我々は
ビールでも一杯飲んで成功を祝おうと考えた!
ところが「首里」駅付近では
飲み屋などまるで見当たらない!
うろうろとさまよってみると
交差点に小さく赤いちょうちんが見えた!
店舗は地上には見当たらず
数段ほど階段を降りたところにあるようだった!
その隠されたようなたたずまいからして
「誰でも歓迎します!」
といった雰囲気ではなかった!
むしろ
「よそ者は入るべからず!」
といったアピールいっぱいだった!
しかしまぁどんな扱いを受けようとも
ビールの一杯でも飲んで祝杯とし
その後は「ゆいレール」に乗って
ホテルに近い「牧志(まきし)」か「美栄橋」辺りに戻り
観光客大歓迎のお店で深酒をしようと考えていたので
それほど吟味などせずに
階段を降りてみる事にした!
驚いた!
どう説明したらいいのだろう?
そこは建物ではなかった!
マンションの外壁に
簡易の屋根と壁をつけて
無理矢理に店舗を作り上げていた!
なのでカウンター奥の
食器棚の隙間に見える壁は
マンションの外壁だった!
席はカウンターしかなく
4人も座れば満席だ!
そんな1席に座って
毛糸の帽子をかぶった気難しそうな店主が
一人で晩ご飯を食べていた!
「開いてますか?」
と尋ねると
「ああ。」
と愛想なく言って
自分の食事をカウンターの中にさげた!
座席の背後に並ぶ数本のエレキギターを見る限り
そこが普通のお店でない事はすぐにわかった!
「日本人?」
店主がいきなり我々に不思議な質問をした!
しかし外国人が多い「沖縄」だ!
ひょっとしたら必ずする質問なのかもしれない!
「ええ!」
と答えると
「昨日は香港からの客だったからさぁ!」
と店主は話した!
その言葉に「沖縄」の訛りがまったく無い事を
私は不思議に思った!
ふと見れば壁には
「厳島神社」のカレンダーがかけられていた!
聞けば「広島」の出身らしい!
少し安心した!
生粋の「沖縄」人が
ちょいとした意地悪で方言を話したら
まるで理解できない!
少なくとも会話はできる店主だった!
さっそく飲み物を頼むと
こう言い渡された!
「うちは飲み物は
お茶だろうが酒だろうが
何を頼んでも500円だからね!
俺が大きい缶でビールを出すか
小さい缶で出すかはわからないけど
それでも500円もらうからね!」
いきない面倒そうな親父だった!
はいはいわかりましたよ!
なるほどそういうお店ね!
どうせ1杯飲んだら
さっさとここから消えますよ!
「煙草吸ってもいいですか?」
お世辞にも”清潔感あふれるお店”ではない!
だめと言われる事もないのを承知で
喫煙を宣言すると
「ああ!」
と言って灰皿を差し出してくれた!
飲み物も揃ったので我々は祝杯をあげた!
いくら1杯だけとは言え
何か食べ物が欲しくなったので
おすすめを聞いてみると
鶏肉だと言われたので
何の期待もなく注文した!
驚くほどおいしかった!
「実はね!
1日かけて”ゆいレール”全駅で降りて
スタンプを全部集めようと思ってね!」
「あはは!
そんなおかしな事する奴がいるんだねぇ!」
少しずつ親父が笑い始めた!
「俺はねぇ!
内地(日本本土)のもんには優しいけど
うちなんちゅ(沖縄県民)には厳しいんだよ!」
妙な緊張感が次第に溶けると
おかしな事を言って笑わせてくれる親父に変わっていった!
「たった5年ぐらいこの店に通っただけで
常連顔する面倒な奴がいてさぁ!」
5年通っても常連と思ってくれないのか?
よっぽど「へんこ」な親父だぞ!
けど「床屋」だろうが飲み屋だろうが
「へんこ」な親父は大好きな私だ!
「俺たちみたいな奴らが
ぶらりと入り込んでも
よかったのかなぁ?」
「いいよ!
普通だったら”なんにもないよ”って言って
追い返したりもするけどね!
俺は人を見るんだよ!
あんた達は歓迎しようと思ったんだ!」
一体我々に他とどんな違いがあったのかは
まるでわからない!
しかし考えてみれば
仕事で「沖縄」に来ておきながら
仕事をせずに一日中「ゆいレール」に乗った
そんな3人だ!
ビジネスマンにも見えなければ
観光客にも見えなかったのだろう!
「今シャケ焼いてやるよ!
うまいんだよこれが!」
親父は注文もしていない調理を始めた!
こうやってサービスと見せかけて
結局はどっさり料金を請求する店を
私は何軒か知っている!
しかしその親父と喋っていると
例えそこがそんなお店だったとしても
”別にそれはそれでいいんじゃないか?”
という気持ちすら起こり始めた!
ビール1杯のつもりだったが
更にもう1本注文してみた!
また大きな缶のビールが出て来た!
「こまちゃん」と「アグー」の表情を見ても
「こんな店早く出ましょうよ!」
といった顔には見えなかった!
みんなで楽しくおしゃべりに興じた!
「へぇ!
お姉ちゃんは岡山の出身かい!
俺詳しいよ岡山は!
昔付き合ってた女がいたんだ!」
「どこにでもいたんでしょうね!」
「まあそういう事だな!」
みんなで笑っていると
シャケからおいしそうな香りの煙が上がり始めた!
そんな頃に
眼鏡をかけた中年男性が入店して来た!
その男性は深い「沖縄」訛りで
不思議な事を言った!
「へぇ!
やってたねぇ!」
それまで笑顔いっぱいだった親父が
ふと我々が入店した時のような真顔に戻った!
「ビールちょうだい!」
ややっ?
親父が彼に出した缶ビールは
小さな缶だった!
おいしそうに焼けてきたシャケを見て
男性は言った!
「そのシャケ俺にも焼いてよ!」
するとだ!
「ないよ!」
と親父が言う!
「えー?」
と眼鏡の男性が言う!
「知ってんだろ?
俺はうちなんちゅには厳しいんだ!
この人らにはただで焼いてるけど
あんたにはないよ!」
これはすごいお店に入ってしまったぞ!
しかも親父はシャケの料金を
我々に請求する気がない!
「本気ね?
本気ね?」
眼鏡の男性が必死で親父に尋ねた!
「それ本気ね?」
だめだった!
彼がかわいそうではあったが
そのおかしな状況と
「本気ね?」
の力のこもり具合があまりにも愉快だったため
我々は大爆笑してしまった!
「もうねー!
この親父さん面倒な人だからねー!」
親父は我々を彼に紹介し
彼をも我々に紹介してくれた!
「比嘉(ひが)」さんというお医者さんだった!
そこからは彼も含めて
5人でわいわい騒いだ!
「まぁ飲んでくれよ!」
親父はマンションの外壁に無理矢理作った棚から
焼酎のボトルを取り出し
私に並々と注いでくれた!
実を言うと
私は焼酎が飲めない!
なので
いやいや!
と断ったのだが
「いいからさぁ!
これはもう俺のおごりだから!」
と親父は言う!
これを断っては失礼にあたると感じた私は
大学生時代に悪酔いして
二度と飲むまいと誓った焼酎を
口の中に流した!
あれ?
うん!
おいしいじゃないか!
私にも「こまちゃん」にも
グラスが軽くなると
親父はどんどん焼酎を注いでくれた!
更にはこれも食べろあれも食べろと
次々と食べ物を出してくれた!
気がつけば我々は「比嘉さん」を
「ひがちゃん」と呼んでいた!
私などは「ひがちゃん」の肩に
腕を回しながら焼酎を飲んでいた!
ところがやがて
「ひがちゃん」がポケットから煙草を取り出し
おかしな事を言った!
「煙草吸っていいの?」
おかしな話だ!
どう見ても「ひがちゃん」は
その店の常連だった!
5年で常連になれないお店の常連だった!
なのにどうして今更そんな質問をするのだろう?
「え?
あれ?
吸っちゃいけなかったの?
あれ?
けど親父さんがすぐに灰皿をくれたから!」
「この店に来たら
いつもは外で吸うんだけどねぇ!
だってほら!
親父さんが・・・。」
なんだ?
何の話だ?
自分の事を他人に話されるのが
いやだったのだろう!
親父が「ひがちゃん」をさえぎって語り始めた!
「俺さぁ!
もうすぐ死ぬんだよ!」
・・・ん?
その元気いっぱいの口調からは
そんな事は何も感じられないのだが
「ひがちゃん」を見れば
黙ってグラスの中など見つめている!
本業である医者の目をしている!
「ゆいレールで来たなら市立病院があっただろ?
俺は癌でさぁ!
あそこにしばらく入院してたんだ!
もうぼろぼろだよ!
最近退院できてさ!
やっとまた店を開けたんだ!」
・・・。
その時になって私は
「ひがちゃん」が入店して
いきなり言った言葉の意味を理解した!
「へぇ!
やってたねぇ!」
親父はその店を
開ける時もあれば
開けられない時もあるようだった!
「煙草も散々吸ったし
酒もさんざん飲んだけどね!
もうやめなきゃいけなくなっちゃった!」
親父は退院してから
店を開店しても
副流煙で気分が悪くならないよう
店内を禁煙にしていたらしい!
「ひがちゃん」のような常連客が現れても
屋外で喫煙させていたそうだ!
ならば!
ならばなぜ私には快く灰皿を出してくれたというのだ?
私はあわてて葉巻をもみ消そうとした!
しかし!
「消すな消すな!
いいんだよ!
いいんだ!
これは俺の体調がいいって事なんだから!
それにね!
俺にはね!
人を見る目があるんだ!
だからあんたはいいんだよ!」
よくはわからないのだが
親父はその日ぶらりと現れただけの我々を
最高のお客としてもてなそうと
心に決めているようだった!
見ず知らずの我々を
そこまで信用してくれるのならば
我々が何者なのかをしっかり明かすべきだ!
そこで初めて我々は
自分達が何者なのかを名乗った!
二人は芸人である事!
そして私は「後藤ひろひと」という
作家である事!
警戒など必要のない
逃げも隠れもできない
そんな立場にいる人間である事を知らせた!
恐らくは親父の信用に値する存在である事を
しっかりと話した!
「ほらな!
やっぱりな!
俺は人を見る目があるから!
そんじゃまぁ飲んでよ!」
親父は更に我々のグラスを焼酎で満たした!
「俺はさ!
散々悪い事をして生きて来たんだ!
色んな所でいっぱい悪い事をした!
だからさ!
もうすぐ死ぬと決まったらさ!
ここからは罪滅ぼしだ!
沢山の人に恩返しをして生きて行くつもりなんだ!
心配するなって!
あんた達が注文した分しか金は取らないよ!
俺が勝手に料理して勝手に酒を注いだんだ!
だから!
だから今夜は好きなだけ飲んでってくれ!
俺には人を見る目があるんだから!」
なんだか・・・
なんだか泣けて来た!
次に来た時には
もうお店が無くなっているかもしれないからか?
親父がこの世を去っているかもしれないからか?
いいや!
そういう事ではなかった!
昨年「デルシネ」のために「沖縄」を訪れた時には
周囲からあまり歓迎はされなかった!
運営側からは
「何がしたいのかよくわからない」
と投げ捨てられるような扱いを受け
その気晴らしに飲みに出掛けても
「よそ者が荒らしに来た」
か
「金を落としていく観光客」
ぐらいの扱いしか受けなかった!
「デルシネ」の観客が見せてくれる最高の笑顔だけが
唯一の支えとなって「沖縄」に滞在した!
けど!
今!
ぶらりと入った”よそ者お断り”の小さな飲み屋で
最高の男から
最高の歓待を受けている!
残る命を懸けたもてなしを受けている!
それがどうにも嬉しかったのだ!
また一人
「勝新太郎」似の常連客が入店して来た!
我々は席を譲るべく店を出る事にした!
「こまちゃん」と「アグー」が見ているのも構わず
私は何度もこれ以上ないほどまで頭を下げ
煙草の件について詫びた!
親父は
いいんだよ!
を繰り返して笑った!
私はポケットの中に入っていた1万円札を差し出し
おつりはいらないと言い張ったのだが
「やめろよ!
いらないよ!」
と怒り口調で突き返された!
3人で4時間近く長居して
さんざん飲み食いしたにも関わらず
注文を受けた4千円しか受け取ってはくれなかった!
「また来てくれよな!
俺はあんまり生きられないけど!
あと・・・
あと40年ぐらいかな!」
関西からやって来た我々は一斉に突っ込んだ!
「長いなー!」
いっぱいの笑顔と
いっぱいの笑い声で店を出た!
そして「首里」駅までのわずかな道を歩いた!
どういうわけか
3人共誰も口をきこうとはしなかった!
ただ無言で駅までの道を歩いた!
けど!
我慢ができなくなった!
みんなの目に
なんだか不思議な熱いものがあふれ
一気にこぼれ出た!
「ゆいレール」に乗って
スタンプ帳に「スタンプ」をもらうという
まったく無益な旅で
最後の最後に
大切な「スタンプ」を
心に押された気がした!
私はどれほど小さな仕事であっても
必ず努力する点が一つある!
それは
「もう一度この人に会いたい!」
と思ってもらう事だ!
それは単なる”営業上手”になるためではない!
技術や能力以上に
”心”を提供する事で
結果的にお金よりも大切な報酬が得られるからだ!
なので私は仕事を選ぶ!
それをする価値がないと判断した
仕事相手や仕事内容であれば
すぐに仕事をお断りする!
しかし価値あるものと判断すれば
私は私の全てをもって仕事に挑む!
例えそれが金銭的に損となるものであろうとも
私はそれが「正しい事」だと思っている!
「首里」の飲み屋の親父から焼酎を注がれ
それが「正しい事」だと更に確信した!
「そのお店は一体どこにあるんですか?」
教えるはずがない!
あなたがもし
とんでもなくいい人だったら
親父よりも先に
お店が破産してしまうだろうから!
ホテルの部屋に戻って
「スタンプノート」を眺めながら
ふと携帯電話の機能である
万歩計をチェックした!
1万9千歩も歩いていた!
だいたいの歩行距離も表示されるので見てみると
なんと!
14kmと出ていた!
あのう・・・
「ゆいレール」の全長が
13kmなんですけど!
ひろぎにひろいだ「沖縄」での休暇だったが
休暇はなんと
あと2日も残っていた!
さーて!
明日は『ミヤネ屋』出演!
放映エリアの方々はテレビでお会いしましょう!
「ゆいレール」に乗った!
「牧志(まきし)」駅を後にした我々は
続く「安里(あさと)」駅に向かった!
前回の『ひろぐ』では
”沖縄の人々には「うちの駅」という感覚がない”
と記したが
この駅こそ「うちの駅」感覚が最も薄い駅だ!
その証拠として那覇の人々は
この駅周辺の事を
誰も「安里」とは呼ばず
「栄町(さかえまち)」と呼んでいる!
「沖縄に来たのだから海が見たい!」
「水族館に行きたい!」
「マリンスポーツがしたい!」
そう言い張る人達に付き合うのを面倒と思うあなた!
あなたは絶対にこの「安里」駅で下車して
「栄町市場商店街」に行くべきだ!
私は今回「沖縄」に9日間滞在して
この「栄町市場商店街」こそが
「沖縄」の神髄であると感じた!
「懐かしい昭和のたたずまいを残す町」
というキャッチコピーで
各店舗が一丸となり盛り上げている商店街なのだが
私はそこに「昭和」を感じる事はなかった!
感じたのはむしろ「異国情緒」である!
私が子供の頃にはまだ日本ですらなかった「沖縄」!
この「栄町市場商店街」を歩くと
「ははーん!
この土地はやっぱり外国だったのだ!」
と改めて感じてしまう!
二人がすれ違うのもやっとという
とにかく細い道いっぱいに店舗が並び
まるで「ジャッキー・チェン」が
物干竿を片手に
自転車で追いかけ合いをしそうな風景だ!
日差しはほとんど入らず
今が昼なのか夜なのかは
各自で時計を見て判断しなければいけない!
ふと見れば
我らが「デルシネ」チームの
沖縄芸人「ボンボ」が出演するチラシが貼られていたが
これすらも45年ぐらい前に終わっているかのように見える!
(実際はまだ上演もされていない!)
訪れたのは昼間だったが
夜になればこれらの細道が
一斉に飲み屋街に変わる!
ある店などはお酒しか出さず
”食べ物はよそのお店で買って来て下さい!”
と言われる!
つまりコンビニエンス・ストアで買って来ても
母親におにぎりをにぎってもらっても
お酒さえ注文すれば
それらを持って入店できるのだ!
しかもそんな必要が無いほど
楽しくおいしい食べ物屋さんが
どっさりシャッターを開ける!
我々も「ボンボ」の案内で
後日この商店街で飲んだくれたのだが
観光客用の割高なお店で
おいしい楽しいと言う人達を
哀れに思えて来るほどの素敵な時間をひろいだ!
悪い事は言わない!
「沖縄」で観光ガイドを持って遊ぶ事に
拒否反応を示す人は
是非とも「ゆいレール」に乗り
この「栄町市場商店街」で飲んだくれていただきたい!
様々な趣向で商店街を盛り上げる
ホームページも必見だ!
店主のおばさん達を寄せ集めて
ラップ・ユニットなども結成されているのだ!
「栄町市場商店街ホームページ」
続いての「ゆいレール」駅は
その名も
「おもろまち」駅!
関西人ならばまず間違いなく
「ほんまやな?」
と強く思ってしまうこの駅名!
芸人である「こまちゃん」こと「ミルクボーイ駒場」君
そして「アグー」こと「ガブリエルみき」は
この駅で降りずにはいられまい!
この地域もまた
近年になって米軍から返還された土地で
「北谷(ちゃたん)町」と並び
その再開発に成功した場所だと聞く!
免税店やスーパーマーケットなどが
壮大なスケールで建ち並ぶ街で
私がかつて訪れた
「沖縄県立博物館」もここにある!
ただし!
この駅で下車して
「おもろい!」
と思えるかどうかは
その人次第だ!
少なくとも我々
「オペレーションゆい」参加者3名は
努力だけはしてみた!
続く「古島(ふるじま)」駅は
学校が多く”文教地区”といった雰囲気だった!
そんな治安の良さそうな場所を
「おもろまち」でおもしろを蓄えた我々が歩き廻っては
不審者とみなされる!
なので散策は少なめにしておいた!
ここまで来ると
さすがに私の「スタンプ」捺印も
熟練の技に差し掛かっている!
次なる「市立病院前」駅は
その名の通りの場所だった!
私は今回収集した「スタンプ」を
その後「デルシネ」上映会場で様々な人に披露し
「もしもこれらの駅の中で
どこかゆかりのある駅があったとしたら
コメントをもらえないか?」
と頼んで廻った!
すると!
実に面白い男がこの「市立病院前」駅を選んでくれた!
「ガレッジセール」の「かわちゃん」だった!
「ちゃーがんじゅー!」
というのは方言で
「いつも元気で!」
といった意味だそうだ!
恐らく「がんじゅー」は
「頑丈」と一致するのではないだろうか?
「かわちゃん」のお父さん!
ちゃーがんじゅー!
さて!
時刻は夕方に差し掛かり
「オペレーションゆい」もいよいよ佳境である!
終点一駅前の
「儀保(ぎぼ)」駅で下車した我々は
次の終点駅に進む事を少々じらし
意味もなくコンビニエンス・ストアで
立ち読みなどして過ごした!
てっきり終点「首里(しゅり)」駅で
このスタンプ柄に出会えると思っていたのだが
予想外にも「儀保」駅の「スタンプ」がこれだった!
そして終点「首里」駅へ!
午前11時に出発した「オペレーションゆい」は
午後の6時に終了した!
実に7時間の旅であった!
最後に押した「スタンプ」は
やはり首里城だった!
「首里」駅はその名の通り
2千円札のデザインとなった
首里城に行く駅である!
「首里」駅で降車して
首里城に行かない観光客は
恐らく我々ぐらいだろう!
はてさて!
かくして「オペレーションゆい」を完遂した我々は
ビールでも一杯飲んで成功を祝おうと考えた!
ところが「首里」駅付近では
飲み屋などまるで見当たらない!
うろうろとさまよってみると
交差点に小さく赤いちょうちんが見えた!
店舗は地上には見当たらず
数段ほど階段を降りたところにあるようだった!
その隠されたようなたたずまいからして
「誰でも歓迎します!」
といった雰囲気ではなかった!
むしろ
「よそ者は入るべからず!」
といったアピールいっぱいだった!
しかしまぁどんな扱いを受けようとも
ビールの一杯でも飲んで祝杯とし
その後は「ゆいレール」に乗って
ホテルに近い「牧志(まきし)」か「美栄橋」辺りに戻り
観光客大歓迎のお店で深酒をしようと考えていたので
それほど吟味などせずに
階段を降りてみる事にした!
驚いた!
どう説明したらいいのだろう?
そこは建物ではなかった!
マンションの外壁に
簡易の屋根と壁をつけて
無理矢理に店舗を作り上げていた!
なのでカウンター奥の
食器棚の隙間に見える壁は
マンションの外壁だった!
席はカウンターしかなく
4人も座れば満席だ!
そんな1席に座って
毛糸の帽子をかぶった気難しそうな店主が
一人で晩ご飯を食べていた!
「開いてますか?」
と尋ねると
「ああ。」
と愛想なく言って
自分の食事をカウンターの中にさげた!
座席の背後に並ぶ数本のエレキギターを見る限り
そこが普通のお店でない事はすぐにわかった!
「日本人?」
店主がいきなり我々に不思議な質問をした!
しかし外国人が多い「沖縄」だ!
ひょっとしたら必ずする質問なのかもしれない!
「ええ!」
と答えると
「昨日は香港からの客だったからさぁ!」
と店主は話した!
その言葉に「沖縄」の訛りがまったく無い事を
私は不思議に思った!
ふと見れば壁には
「厳島神社」のカレンダーがかけられていた!
聞けば「広島」の出身らしい!
少し安心した!
生粋の「沖縄」人が
ちょいとした意地悪で方言を話したら
まるで理解できない!
少なくとも会話はできる店主だった!
さっそく飲み物を頼むと
こう言い渡された!
「うちは飲み物は
お茶だろうが酒だろうが
何を頼んでも500円だからね!
俺が大きい缶でビールを出すか
小さい缶で出すかはわからないけど
それでも500円もらうからね!」
いきない面倒そうな親父だった!
はいはいわかりましたよ!
なるほどそういうお店ね!
どうせ1杯飲んだら
さっさとここから消えますよ!
「煙草吸ってもいいですか?」
お世辞にも”清潔感あふれるお店”ではない!
だめと言われる事もないのを承知で
喫煙を宣言すると
「ああ!」
と言って灰皿を差し出してくれた!
飲み物も揃ったので我々は祝杯をあげた!
いくら1杯だけとは言え
何か食べ物が欲しくなったので
おすすめを聞いてみると
鶏肉だと言われたので
何の期待もなく注文した!
驚くほどおいしかった!
「実はね!
1日かけて”ゆいレール”全駅で降りて
スタンプを全部集めようと思ってね!」
「あはは!
そんなおかしな事する奴がいるんだねぇ!」
少しずつ親父が笑い始めた!
「俺はねぇ!
内地(日本本土)のもんには優しいけど
うちなんちゅ(沖縄県民)には厳しいんだよ!」
妙な緊張感が次第に溶けると
おかしな事を言って笑わせてくれる親父に変わっていった!
「たった5年ぐらいこの店に通っただけで
常連顔する面倒な奴がいてさぁ!」
5年通っても常連と思ってくれないのか?
よっぽど「へんこ」な親父だぞ!
けど「床屋」だろうが飲み屋だろうが
「へんこ」な親父は大好きな私だ!
「俺たちみたいな奴らが
ぶらりと入り込んでも
よかったのかなぁ?」
「いいよ!
普通だったら”なんにもないよ”って言って
追い返したりもするけどね!
俺は人を見るんだよ!
あんた達は歓迎しようと思ったんだ!」
一体我々に他とどんな違いがあったのかは
まるでわからない!
しかし考えてみれば
仕事で「沖縄」に来ておきながら
仕事をせずに一日中「ゆいレール」に乗った
そんな3人だ!
ビジネスマンにも見えなければ
観光客にも見えなかったのだろう!
「今シャケ焼いてやるよ!
うまいんだよこれが!」
親父は注文もしていない調理を始めた!
こうやってサービスと見せかけて
結局はどっさり料金を請求する店を
私は何軒か知っている!
しかしその親父と喋っていると
例えそこがそんなお店だったとしても
”別にそれはそれでいいんじゃないか?”
という気持ちすら起こり始めた!
ビール1杯のつもりだったが
更にもう1本注文してみた!
また大きな缶のビールが出て来た!
「こまちゃん」と「アグー」の表情を見ても
「こんな店早く出ましょうよ!」
といった顔には見えなかった!
みんなで楽しくおしゃべりに興じた!
「へぇ!
お姉ちゃんは岡山の出身かい!
俺詳しいよ岡山は!
昔付き合ってた女がいたんだ!」
「どこにでもいたんでしょうね!」
「まあそういう事だな!」
みんなで笑っていると
シャケからおいしそうな香りの煙が上がり始めた!
そんな頃に
眼鏡をかけた中年男性が入店して来た!
その男性は深い「沖縄」訛りで
不思議な事を言った!
「へぇ!
やってたねぇ!」
それまで笑顔いっぱいだった親父が
ふと我々が入店した時のような真顔に戻った!
「ビールちょうだい!」
ややっ?
親父が彼に出した缶ビールは
小さな缶だった!
おいしそうに焼けてきたシャケを見て
男性は言った!
「そのシャケ俺にも焼いてよ!」
するとだ!
「ないよ!」
と親父が言う!
「えー?」
と眼鏡の男性が言う!
「知ってんだろ?
俺はうちなんちゅには厳しいんだ!
この人らにはただで焼いてるけど
あんたにはないよ!」
これはすごいお店に入ってしまったぞ!
しかも親父はシャケの料金を
我々に請求する気がない!
「本気ね?
本気ね?」
眼鏡の男性が必死で親父に尋ねた!
「それ本気ね?」
だめだった!
彼がかわいそうではあったが
そのおかしな状況と
「本気ね?」
の力のこもり具合があまりにも愉快だったため
我々は大爆笑してしまった!
「もうねー!
この親父さん面倒な人だからねー!」
親父は我々を彼に紹介し
彼をも我々に紹介してくれた!
「比嘉(ひが)」さんというお医者さんだった!
そこからは彼も含めて
5人でわいわい騒いだ!
「まぁ飲んでくれよ!」
親父はマンションの外壁に無理矢理作った棚から
焼酎のボトルを取り出し
私に並々と注いでくれた!
実を言うと
私は焼酎が飲めない!
なので
いやいや!
と断ったのだが
「いいからさぁ!
これはもう俺のおごりだから!」
と親父は言う!
これを断っては失礼にあたると感じた私は
大学生時代に悪酔いして
二度と飲むまいと誓った焼酎を
口の中に流した!
あれ?
うん!
おいしいじゃないか!
私にも「こまちゃん」にも
グラスが軽くなると
親父はどんどん焼酎を注いでくれた!
更にはこれも食べろあれも食べろと
次々と食べ物を出してくれた!
気がつけば我々は「比嘉さん」を
「ひがちゃん」と呼んでいた!
私などは「ひがちゃん」の肩に
腕を回しながら焼酎を飲んでいた!
ところがやがて
「ひがちゃん」がポケットから煙草を取り出し
おかしな事を言った!
「煙草吸っていいの?」
おかしな話だ!
どう見ても「ひがちゃん」は
その店の常連だった!
5年で常連になれないお店の常連だった!
なのにどうして今更そんな質問をするのだろう?
「え?
あれ?
吸っちゃいけなかったの?
あれ?
けど親父さんがすぐに灰皿をくれたから!」
「この店に来たら
いつもは外で吸うんだけどねぇ!
だってほら!
親父さんが・・・。」
なんだ?
何の話だ?
自分の事を他人に話されるのが
いやだったのだろう!
親父が「ひがちゃん」をさえぎって語り始めた!
「俺さぁ!
もうすぐ死ぬんだよ!」
・・・ん?
その元気いっぱいの口調からは
そんな事は何も感じられないのだが
「ひがちゃん」を見れば
黙ってグラスの中など見つめている!
本業である医者の目をしている!
「ゆいレールで来たなら市立病院があっただろ?
俺は癌でさぁ!
あそこにしばらく入院してたんだ!
もうぼろぼろだよ!
最近退院できてさ!
やっとまた店を開けたんだ!」
・・・。
その時になって私は
「ひがちゃん」が入店して
いきなり言った言葉の意味を理解した!
「へぇ!
やってたねぇ!」
親父はその店を
開ける時もあれば
開けられない時もあるようだった!
「煙草も散々吸ったし
酒もさんざん飲んだけどね!
もうやめなきゃいけなくなっちゃった!」
親父は退院してから
店を開店しても
副流煙で気分が悪くならないよう
店内を禁煙にしていたらしい!
「ひがちゃん」のような常連客が現れても
屋外で喫煙させていたそうだ!
ならば!
ならばなぜ私には快く灰皿を出してくれたというのだ?
私はあわてて葉巻をもみ消そうとした!
しかし!
「消すな消すな!
いいんだよ!
いいんだ!
これは俺の体調がいいって事なんだから!
それにね!
俺にはね!
人を見る目があるんだ!
だからあんたはいいんだよ!」
よくはわからないのだが
親父はその日ぶらりと現れただけの我々を
最高のお客としてもてなそうと
心に決めているようだった!
見ず知らずの我々を
そこまで信用してくれるのならば
我々が何者なのかをしっかり明かすべきだ!
そこで初めて我々は
自分達が何者なのかを名乗った!
二人は芸人である事!
そして私は「後藤ひろひと」という
作家である事!
警戒など必要のない
逃げも隠れもできない
そんな立場にいる人間である事を知らせた!
恐らくは親父の信用に値する存在である事を
しっかりと話した!
「ほらな!
やっぱりな!
俺は人を見る目があるから!
そんじゃまぁ飲んでよ!」
親父は更に我々のグラスを焼酎で満たした!
「俺はさ!
散々悪い事をして生きて来たんだ!
色んな所でいっぱい悪い事をした!
だからさ!
もうすぐ死ぬと決まったらさ!
ここからは罪滅ぼしだ!
沢山の人に恩返しをして生きて行くつもりなんだ!
心配するなって!
あんた達が注文した分しか金は取らないよ!
俺が勝手に料理して勝手に酒を注いだんだ!
だから!
だから今夜は好きなだけ飲んでってくれ!
俺には人を見る目があるんだから!」
なんだか・・・
なんだか泣けて来た!
次に来た時には
もうお店が無くなっているかもしれないからか?
親父がこの世を去っているかもしれないからか?
いいや!
そういう事ではなかった!
昨年「デルシネ」のために「沖縄」を訪れた時には
周囲からあまり歓迎はされなかった!
運営側からは
「何がしたいのかよくわからない」
と投げ捨てられるような扱いを受け
その気晴らしに飲みに出掛けても
「よそ者が荒らしに来た」
か
「金を落としていく観光客」
ぐらいの扱いしか受けなかった!
「デルシネ」の観客が見せてくれる最高の笑顔だけが
唯一の支えとなって「沖縄」に滞在した!
けど!
今!
ぶらりと入った”よそ者お断り”の小さな飲み屋で
最高の男から
最高の歓待を受けている!
残る命を懸けたもてなしを受けている!
それがどうにも嬉しかったのだ!
また一人
「勝新太郎」似の常連客が入店して来た!
我々は席を譲るべく店を出る事にした!
「こまちゃん」と「アグー」が見ているのも構わず
私は何度もこれ以上ないほどまで頭を下げ
煙草の件について詫びた!
親父は
いいんだよ!
を繰り返して笑った!
私はポケットの中に入っていた1万円札を差し出し
おつりはいらないと言い張ったのだが
「やめろよ!
いらないよ!」
と怒り口調で突き返された!
3人で4時間近く長居して
さんざん飲み食いしたにも関わらず
注文を受けた4千円しか受け取ってはくれなかった!
「また来てくれよな!
俺はあんまり生きられないけど!
あと・・・
あと40年ぐらいかな!」
関西からやって来た我々は一斉に突っ込んだ!
「長いなー!」
いっぱいの笑顔と
いっぱいの笑い声で店を出た!
そして「首里」駅までのわずかな道を歩いた!
どういうわけか
3人共誰も口をきこうとはしなかった!
ただ無言で駅までの道を歩いた!
けど!
我慢ができなくなった!
みんなの目に
なんだか不思議な熱いものがあふれ
一気にこぼれ出た!
「ゆいレール」に乗って
スタンプ帳に「スタンプ」をもらうという
まったく無益な旅で
最後の最後に
大切な「スタンプ」を
心に押された気がした!
私はどれほど小さな仕事であっても
必ず努力する点が一つある!
それは
「もう一度この人に会いたい!」
と思ってもらう事だ!
それは単なる”営業上手”になるためではない!
技術や能力以上に
”心”を提供する事で
結果的にお金よりも大切な報酬が得られるからだ!
なので私は仕事を選ぶ!
それをする価値がないと判断した
仕事相手や仕事内容であれば
すぐに仕事をお断りする!
しかし価値あるものと判断すれば
私は私の全てをもって仕事に挑む!
例えそれが金銭的に損となるものであろうとも
私はそれが「正しい事」だと思っている!
「首里」の飲み屋の親父から焼酎を注がれ
それが「正しい事」だと更に確信した!
「そのお店は一体どこにあるんですか?」
教えるはずがない!
あなたがもし
とんでもなくいい人だったら
親父よりも先に
お店が破産してしまうだろうから!
ホテルの部屋に戻って
「スタンプノート」を眺めながら
ふと携帯電話の機能である
万歩計をチェックした!
1万9千歩も歩いていた!
だいたいの歩行距離も表示されるので見てみると
なんと!
14kmと出ていた!
あのう・・・
「ゆいレール」の全長が
13kmなんですけど!
ひろぎにひろいだ「沖縄」での休暇だったが
休暇はなんと
あと2日も残っていた!
さーて!
明日は『ミヤネ屋』出演!
放映エリアの方々はテレビでお会いしましょう!
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