ハックルベリーに会いに行く
台獣物語30(2,535字)
30
「はい!」と手を挙げたのは、なんとエミ子だった。ぼくは思わずエミ子を振り返った。人見知りの彼女が、人前で積極的に発言するなんて珍しい。少なくとも、学校では一度もなかった。
しかしエミ子は、そんなぼくの驚きなど無関係に、真剣な眼差しで手を挙げている。きっと、昨日の授業でいろいろと刺激を受けたのだろう。あるいは、今朝のこの道場の雰囲気が、彼女に何かを感じさせたのかもしれない。とにかく、いつものおどおどとした彼女ではなく、公園でおばさんにからまれたときやゲームセンターなどで見せた、集中力の高まった表情をしていた。
藤堂先生は、そんなエミ子を指名した。
「はい、きみ」
そこでエミ子は、こう答えた。
「『かくれんぼ』――ですか?」
すると先生は、ニヤリと笑ってこう言った。
「惜しい! 確かに、『かくれんぼ』にもそういう要素はあるが、もっとシンプルに「隠れているもの」だ。一つヒントを言う
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