ジャン・ゲティというアメリカの大富豪がいる。彼は20世紀に石油王として巨万の富を築いたが、同時に孤独な人間としても知られていた。
それを端的にあらわす、ある有名なエピソードがある。それは、彼の孫が身代金目的で誘拐されたときのことだ。
ゲティは、そこで身代金の支払いを拒むのである。なぜかというと、もし身代金を払ったならば、それが前例となって、他の孫も誘拐される可能性が高まる。そうさせるわけにはいかないから、支払いを拒んだのだ。
ぼくは、このゲティの行動原理はよく分かる。彼は、あくまでも合理的に、最善を尽くそうとしてそういう行動を