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「映画的」という表現は、誰でも一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。
これはしかし、不思議な言葉である。比較的頻繁に使われるにもかかわらず、実はその定義が曖昧なのだ。それを厳密に理解している人はもちろん、深く考えたことのある人さえそうそういないだろう。
それにもかかわらず、人口に膾炙している。本や雑誌を読んでいると、頻繁に突き当たるといってもいいくらいだ。
つまり、そりなりに有名な存在であるにもかかわらず、正体が謎なのだ。一体「映画的」とはどういう意味なのだろう? その正体は何なのか?
それを追求する前に、まず確認しておきたいのは、この言葉はたいていポジティブな意味合いで使われている――ということだ。だいたい褒め言葉として用いられる。「映画的」と言われて、ネガティブに受け取る人はほとんどいないだろう。
それは、我々の中に映画全般に対してポジティブな印象があるからに他ならない。映画を好
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