日本で近代が始まったのは、明治維新が大きなきっかけだった。これによって西洋文化が流れ込んできたのだが、それは「国民国家」という政体の始まりでもあった。我々が「日本人」というものを強く意識するようになったのは、この明治維新以降だ。それ以来150年間、その概念の枠組みの中で生きてきた。

 

国民国家は、他の国家との協調や競争、あるいは戦争の上に成り立つので、常に他の国からは一定の距離を置く。それらが溶け合うことはけっしてない。

 

そして、20世紀の前半までは協調や競争関係が上手くいかなかったから、戦争がくり返された。その副産物として科学が発達したものの、基本的には大きな傷跡を世界中に残してようやく、1945年に「戦後」という時代の幕が開いた。

 

そこからは、「国家」という概念はそのままに、今度は「経済の競争」の軸足が移された。すると、これはまあまあ平和裏に推移し、世界が軒並み豊かになった。