昔、とある牛丼チェーンで新人が入ると「店内を小走りさせる研修」を受けさせているのをテレビで見た。名目は「いち早く作業を終えるため」としていたが、実際はたかだか数メートルを走っても作業はほとんど短縮できない。それどころか、予備動作でかえって時間がかかる上に、危険が増す。つまりデメリットだらけだ。それにもかかわらず、その牛丼チェーンでは走らせる取り組みを頑なに継続した。

それで、「なんでそうなのか?」と考えてみたら、はたと気づいた。それは「サービス」なのだ。客へのアピールなのである。客に「一生懸命やっています」という姿勢をアピールし、彼らに「この店員はおれのために走っている」という満足感を味わわせるためにやっているのだ。

おそらく、多くの人に「執事を所有することへの憧れ」があるだろう。執事にあれこれと指図をしている自分を夢見る。夢までは見なくとも、自分のためにあれこれしてくれる人がいるといいな、と