ものごとを俯瞰で見ることには、二つの心理的効果がある。
一つは、ものごとを「客観視」できること。もう一つは、「『ものごとを客観視できた』という実感を得て、そこから高揚感を得られること」だ。

人は、ものごとを俯瞰できると高揚する。おそらく、その瞬間に脳内には麻薬物質が出ていて、実際的な快感に酔いしれてもいるだろう。人は、俯瞰でものを見ると気持ち良くなるのだ。

だから、高い塔やビルの展望台は客足が途絶えない。タワーマンションの高層階は人気だ。権力を握った戦国武将は、その報償として高層の城を建て、てっぺんから城下町を見下ろした。

それもこれも、高いところに登ると実際的に気持ちいいからだ。登山も全く同じである。人が山に登るのは、「そこに山があるから」ではない。高いところに登ると、脳内麻薬が出て気持ちいいという実際的な理由があるのだ。

なぜ脳内麻薬が出るかといえば、それは「頭脳が明晰になった」という