そんな世界的存在となった浮世絵の中で、取り分け人気を博したのが葛飾北斎と歌川広重でした。特に北斎の場合は、浮世絵と同時に『北斎漫画』も大流行し、これはヨーロッパ中の挿絵画家たちに多大な影響を与えます。

 というのも、北斎が『北斎漫画』で展開した軽妙で洒脱な筆致は、当時ヨーロッパで広まり始めていた新聞や雑誌に欠かせない「風刺画」にぴったりだったからです。

 そうして、北斎の画風を真似する挿絵画家が雨後の竹の子のように現れました。北斎の間接的な弟子ともいえるような画家たちが、ヨーロッパ中に誕生していったのです。


 それから少し時代がくだった一八六八年、日本は明治維新を迎えました。いわゆる鎖国を解き、開国したのです。これによって、諸外国との交流が一気に盛んになり、さまざまな新しい文化が日本に雪崩のように流れ込んできました。

 新生日本は、欧米の進歩的な文明にいち早く追いつこうと「富国強兵」をス