ハックルベリーに会いに行く
1994:その16(1,679字)
桑田佳祐は1994年につながっている。彼がデビューした1978年からその数々の流行り歌を通じて紡いできた日本の恋愛における空気感が、そこから16年が経過した1994年においてもなお、男女の恋愛観に決定的な影響を与えている。
では、桑田佳祐はどのような空気感を紡いできたのか? それは一言で言えば「撤退戦」である。恋愛市場における男性の決定的な敗北の、その被害を最小限に食い止めようとした。それが桑田佳祐だ。
桑田佳祐の評価は、なんといってもサザンオールスターズのデビュー曲である『勝手にシンドバッド』において決定づけられた。同時に、ここに早くも、桑田佳祐の紡いできたスタイルが十全に湧き出している。
そのスタイルとは「道化」である。そもそもこの曲は、タイトルが道化ている。前年の1977年に国民的なヒットを記録した沢田研二の『勝手にしやがれ』と、ピンクレディの『渚のシンドバッド』の2曲のタイトルをそ
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