ライトノベルは売れることがその成立条件だ。
では、売れるためにはどうすればいいか?
それは、伝統的な型を踏襲しながら、最新の流行にも乗っている必要がある。この二律背反する二つの条件を同時に達成してこそ、初めてライトノベルが売れる。

ところで、伝統的な型を踏襲することは、比較的優しい。それは方法論がある程度確立していて、誰でもそれを学んだり真似たりすることができるからだ。
それよりも、流行をとらまえる方が難しい。そこで今日は、流行のとらまえ方について考えてみる。


まず、ほとんどのアマチュアが流行のとらまえ方を失敗する。理由は簡単で、「今」の流行を追いかけるからだ。
ライトノベルに限らず、流行というのは常に「未来」を追いかけなければならない。なぜなら、ライトノベルを企画したとして、それが本という形になって書店で販売されるまでには、少なくとも「半年」のタイムラグがあるからだ。そして、半年もあれば流行というものは大きく動く。だから、「今」の流行を追いかけているとどうしても古くさく見えてしまうのだ。

ただ、こういう指摘をしてもアマチュアの人は「そうはいっても二番煎じみたいなものが世の中に溢れているではないか?」と思ってしまう。しかしながら、よく考えてみてほしい。そうした二番煎じが、果たして売れているだろうか? あるいは、そういう二番煎じを書く作家が、果たして残っているだろうか?
答えはもちろん「否」である。そういう本は結局売れないし、そういう作家はいつの間にか消えてなくなる。

アマチュアの人にはにわかに信じられないかもしれないが、実際に本を出している作家や、実際に本を編集している編集者、実際に本を出版している出版社も、半数以上がおよそプロとはいえないような人々である。アマチュアに毛の生えたような人たちばかりだ。本当のプロはほんの一握りである。

なぜそういう構造になっているかというと、そういうアマチュアに毛の生えたような人たちの中から、ときどき育って本当のプロになる人がいるからだ。そしてそういう人たちは、実際に出版するものの失敗し、痛い目を見る中でしか成長できないということがある。
だから、ビジネスの構造上、出版社もある程度の失敗は容認してくれているのである。その中で育ってくれればいいと思っている。

その代わり、失敗をくり返してそれ以上成長しそうになければ、すぐに見限られる。そうして、プロの門戸を固く閉ざされる。
一度プロに挫けた人間は、アマチュアよりもチャンスが少なくなる。なぜなら、せっかくのチャンスをふいにした人間は、チャンスをまだもらっていない人間よりも、成長する可能性が低いように思われるからだ。

だから、プロとして書き続けるためには、成長することと、それからもう一つ、「周囲から『こいつは成長しそうだ』と思われること」が不可欠だ。それを演出することが肝要となってくるのだが、それについてはまた項を改めたい。


さて、流行のとらえ方に話を戻すと、ライトノベルの場合は、企画する段階で、少なくとも半年先、一年先を見据えていかなければならない。では、半年先、一年先の流行をとらえるにはどうすればいいか?
それは、ライトノベルが対象とする「最少年齢の読者」のことを考えるのである。そうすれば、流行というのは見えてきやすい。

「最少年齢の読者」というのは、一口にライトノベルといってもいろいろなジャンルがあるので、それは作品によってまちまちだろう。小学6年生という場合もあれば、30歳の大人だったりする場合もある。ここでは、仮に「高校1年生」ということにする。高校1年生がターゲットのライトノベルを考える。

この場合、実際に本が出版される1年後に高校1年生になるのは、今の中学3年生である。だから、自分が対象とする読者は、実は「未来の高校3年生」、つまり「今の中学3年生」だということが分かる。
そこで今度は、「今の中学3年生」を観察するのである。もっというと、「今の高校1年生」と「今の中学3年生」の両者を観察するのだ。そうして、その違いを見つけ出すのである。

流行というのは、ほんの僅かずつでも動いている。高校1年生と中学3年生とでも、どこかに微妙な違いがあるはずだ。それを見つけられたら、未来の流行を見つけるための大きなヒントになる。

そこで次回は、高校1年生と中学3年生の違いの見つけ方について考えてみたい。