人が抱えている「欠落感」は、誕生の過程で必然的に発生する。胎児の状態では母親と物理的につながっていたのに、それが出生の瞬間に切り離されて、独立せざるを得なくなる。そうして、孤独を感じるようになる。この孤独感は、人間の一生のテーマとなるのだ。

恋愛というのは、この孤独感を埋めてくれるものだ。逆にいえば、孤独感がなければ、恋愛感情は生まれないのかもしれない。
恋愛は、人が生まれる過程で抱くようになった欠落感を埋めるため、必然的に発生する。恋愛感情は、そのまま生殖行為にもつながるので、種の保存のためにも好都合だ。母親から切り離されるという呪いが、恋愛という祝いのきっかけとして機能している。まさに「人間万事塞翁が馬」である。

また、恋愛とは別に「婚姻」という関係がある。
婚姻は、人間という種の中で非常に古くから続く社会制度だ。古今東西、ほとんど全ての社会がこの「婚姻」という制度を採用している。