Vol.236 結城浩/スマートフォンと親密さ/ファクトベースの自己アピール/ガブリエルのラッパ/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年10月4日 Vol.236

はじめに

おはようございます。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

なんと! また台風が来ているとのことです! 今年は異様に多くありませんか、台風。

台風そのものはもちろんいやですけれど、 台風が近づくと、気圧が大きく変化して、 寝苦しかったり、昼間も頭がぼうっとしがちです。 まったく困ったものです。

とはいえ、そんな私の「困った」は大したことがないですね。

台風の被害を受けている/受けた地域の方々に、 お見舞いを申し上げます。

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新刊の話。

『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』のカバー画像が到着! それに合わせて、 いつものように書籍案内のランディングページを作りました。


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 ◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』
 http://note8.hyuki.net/

カバー画像が到着すると、がぜん楽しくなりますね!

ところで肝心の原稿ですが、現在再校ゲラを読んでいるところです。 今週の水曜日に再校読み合わせがあり、 これで結城の手からはほぼ離れることになります。 いよいよラストスパートです。

発売に合わせた販促企画もあります。

 ・サイン本無料プレゼント
 (結城が個人的に企画。実施中)

 ・サイン本先行販売
 (北海道から沖縄までのいくつかの書店さんで、
  発売日よりも少し前から結城の直筆サイン本を販売予定)

 ・メッセージカード同梱販売
 (チェーン書店さんの一部で、
  結城が手描きしたメッセージカードが
  同梱された書籍を販売予定)

結城が個人的に企画しているサイン本無料プレゼントは、 以下で実施していますのでぜひどうぞ!

 ◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』《サイン本無料プレゼント》
 https://snap.textfile.org/20160921120829/

その他の「サイン本先行販売」と「メッセージ同梱販売」については、 またおいおいアナウンスしていく予定です。

《統計》は、21世紀のリテラシー。 でもなかなかとっつきにくいのも事実です。 今回の本では、かなりの部分が中学生でも読めるはずです。 『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』をぜひ応援くださいね。

 ◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』
 http://note8.hyuki.net/

ちなみに、本書の価格が「12の3乗になっている」 というご指摘を @himmelnote さんからいただいて感動しました。 ほんとだ!

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 数学ガールの秘密ノート、価格が12の3乗だ
 https://twitter.com/himmelnote/status/780773989631176705
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コラムの話。

野崎昭弘先生の新刊『数学と方法――もっと数学が好きになるヒント』が、 十月初旬に刊行されます。僭越ながらその中に、 結城の書き下ろしコラム「自由な数学を楽しもう」も載せていただきました。 野崎先生、ありがとうございます。

 ◆野崎昭弘『数学と方法――もっと数学が好きになるヒント』
 https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4489022514/hyam-22/

なお、野崎先生の御本には、 新井紀子先生、松野陽一郎先生のコラムも掲載されます!

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睡眠の話。

気圧のせいなのか、年齢のせいなのか、 最近朝早く目が覚めてしまうことが多いです。

以前「朝早く起きてるわたしかっこいい!」 みたいな意識を持ったことがあるのですが、 最近は少し気持ちを改めました。

睡眠が少ないのはよくないです。 睡眠が少ないと、活動時間は確かに増えます。 しかし問題はその活動時間の「品質」です。

睡眠が少ないと、どうしても疲れやすくなったり、 いらいらすることが多かったり、 ぼうっとする時間が増えたり、 食後の睡魔と戦うことが多かったりします。 これではいくら活動時間が増えてもしょうがないですよね。

なので最近、目覚めが早すぎた場合には、 意識して二度寝するようにしています。 少しでも身体を休め、 活動時間の長さではなく、 活動時間の品質を上げたいと思っています。

 ◆睡眠重要です。おやすみー

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 * * *

謝罪の話。

開店前のお店で、店員さんを集めて発声練習するところってありますよね。 お仕事のユニフォームを着て並び、

 「いらっしゃいませ!」
 「ありがとうございます!」

と声を揃えるものです。 きっとああやって練習しておくと、 お客さんがいらしたときもスムーズに挨拶や感謝ができるのでしょうね。

ところで、ネットで発言する人は、あのノリで、

 「わたしのまちがいでした。すみません!」
 「さっきは言葉が過ぎました。申し訳ありません!」

と謝罪の練習をするのはどうだろう、と思いました。

ネットでは炎上騒ぎやもめごとが毎日のように発生します。 そんな中で絶対に謝らない人がいるために、 話がこじれるということもよくありますね。

他人のもめごとの場合には、 「早めに一言謝ればこんなにこじれないのに」 と思えますが、自分に関してもめごとが発生したらどうでしょう。 ついカッとなったり、意固地になったりして、 同じ轍を踏んでしまうかもしれません。

ふだんから謝罪の練習をしておくと、 いざというときにサッと謝れる……かな?

私も謝罪の練習をしておかないと……

 「いつも勝手なことばかり言ってすみません!」
 「もしかして、あなたを傷つけた発言があったかもしれません。
  ごめんなさい!」

えっと、以上は軽口といえば軽口ですが、 それほど不真面目な話でもありません。

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「とする」「となる」の話。

Twitterで @takey_y さんが、 数学の答案に関係してこんなツイートをなさっていました。

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 「・・・とおく」
 「・・・とする」
 「・・・となる」
 「・・・である」
 の使い方は、一度まとめておきたいと思うのだけど、
 既にどこかにあるだろうか。
 https://twitter.com/takey_y/status/780222695828955136
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こういう基本的な言葉遣いの話は、 数学読み物を書いている身としてはたいへん興味があります。 結城個人の語感からは、以下のようになりますね。

「・・・とおく」というのは、 複雑な式を一つの文字で置き換えるときなどに使います。 たとえば「x+y+zをaとおく」のように (複雑な数式がテキストでは書きにくいので、あまりよい例ではないですが)。 このように「おく」ことで、x+y+zと書く代わりにaを使うことができるので、 以降の議論が単純になります。

「・・・とする」というのは「・・・とおく」と同じ状況でも使いますが、 もっと広く、条件を何か仮定するときも使います。 たとえば「ここで x = y とする」のように。 「・・・とする」ことによって「とすれば、こういうことが成り立つ」や、 「とすることによって、これが導ける」のように議論が進み始めます。

「・・・とする」が仮定だとすれば「・・・となる」は結果になります。 議論が進んできて、結果として何かが導けたなら、 そこで「・・・となる」という言い方をしますね。 「・・・となる」は「・・・がいえる」とも似ています。

「・・・である」というのはニュートラルな主張を表します。 仮定でもなく結果でもなく、たとえばすでに知っていること、 正しいと知られていることなどに使います。 議論を進めるときの論拠などでも使います。

いずれにしても、 これらの表現は議論を進めるための重要な道しるべになります。 読者はこれらの言葉を読みながら、議論を追っていくことになりますね。

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「君の名は。」の話。

映画「君の名は。」が大ヒットしています。 結城も家内と観に行き、たいへん満足しました。

ネットを見ていると批判的な記事も見つかりますが、 それだけ多くの人にリーチしたんだろうなと思っています。 多くの人にリーチすると批判も増えるものですから。

ところで先日カクヨムに「君の名は。」のサイドストーリーが 掲載されているのを知りました。

 ◆君の名は。 Another Side:Earthbound
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054881743073

こういう多次元的な企画が出てくると「なるほどなあ」と思います。 一つの物語が生まれると、その設定や世界観が読者の心の中に宿り、 キャラクタたちがそこで動き始めることになります。 このようなサイドストーリーは、 そのニーズに応える「あるべき姿」なのでしょう。 これは広く二次創作にもいえることですね。

物語の力というと、村上春樹と河合隼雄の対談集を思い出します。

 ◆『村上春樹、河合隼雄に会いにいく(新潮文庫)』
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101001456/hyam-22/

この対談は、最初から最後まで物語について語り合ったもので、 結城はたいへん興味深く読みました。物語へのコミットについて。 物語が人をどう導くか(惑わすか)。ほんものの物語について。 そのようなことが書かれた一冊です。

物語は夢と同じで、ふわふわしているようだけれど、強いものです。 うっかり関わるとこわい面もあります。だからこそ魅力があるのですけれど。

そういえば「君の名は。」も夢の話ですね。

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未来を切り拓く話。

「君の名は。」といえば、先日、 新海誠監督が2014年に作成した、 Z会の広告アニメーション「クロスロード」を見ました。

 ◆新海誠監督によるZ会の広告アニメーション「クロスロード」
 https://youtu.be/AfbNS_GKhPw

このアニメーションも「君の名は。」と同じように、 都会の男の子と田舎の女の子の人生が(入れ替わりはしないけれど) クロスするお話になっています。

あいかわらずの美しい画面とどきどきする演出で、 何度も何度も見てしまいました。

このアニメーション「クロスロード」の中で結城が好きなシーンは、 女の子が坂道を自転車でのぼるところ、 男の子がコンビニバイト終わって勉強に取り組むところ、 試験開始でいっせいに問題用紙を開くところ、 そして女の子が心配そうな母親を後にして合格発表を見に出かけるところですね (女の子のセリフがいい)。

このアニメーションは通信教育のZ会の宣伝なので、 ちゃんとZ会の内容が盛り込まれています。 友達は塾に行くけれど、この男の子は塾に行かない(行けない?)。 コンビニバイトが終わってから受験勉強をZ会でやっている。 女の子は田舎で塾がないけど、受験勉強はZ会でやっている。 通信教育のZ会の特徴をうまく織り込んでいるなあと思いました。

このアニメ、何回見ても「試験開始」のシーンで泣けてきます。 試験開始で、受験生がいっせいに問題用紙を開くシーンです。 若い人が真剣に努力して自分の未来を切り拓こうとする姿に、 心からエールを送りたくなるのです。 もちろん人生で大学受験がすべてではありません。 しかし、大学受験を大きなステップとして未来へ進む人は多いはずです。

がんばれ、受験生。

 ◆新海誠監督によるZ会の広告アニメーション「クロスロード」
 https://youtu.be/AfbNS_GKhPw

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レスポンシブデザイン対応の話。

結城のメインWebサイトは www.hyuki.com です。 このサイトは1999年ころからずっと使っているもので、 昔のページはいわゆる「レスポンシブデザイン対応」になっていません。

レスポンシブデザインというのは、一つのWebページが、 PC・タブレット・スマートフォンのどれでも適切に読める Webデザインのことです。PCではきれいに読めるけれど、 スマートフォンだと文字が小さすぎて読めないというのは、 レスポンシブデザインではありません。

現代のWebページの読者は、多彩なデバイスで読みます。 ですから、レスポンシブデザインに対応しておかないと、 読者を遠ざける危険性があります。

ということで結城は、 時間を見つけては自分のWebサイトの古いページを こつこつとレスポンシブデザイン対応しています。

先日は「絵本を読むときのパターン・ランゲージ」を直しました。 これは、絵本を「読み聞かせ」するときのちょっとしたヒント集です。

 ◆絵本を読むときのパターン・ランゲージ
 http://www.hyuki.com/writing/ehonpat.html

「絵本を読むときのパターン・ランゲージ」 を公開したのは2001年ころ。いまから約15年前になります。

この文章を読んだ親御さんに絵本を読み聞かせしてもらった子供たちは、 現在はもう高校生か大学生、もしかしたら社会人になっているんですね。 時間の経つのは早いものですね。

この15年間でこのページが何人に読まれたかは知りませんが、 決して少なくはないはずです。そう思うと、 自分の考えをせっせと文章にしてどんどん公開するのは大切なことですよね。 時間は夢のように過ぎていきます。 自分の考えも夢のように巡り行き、変化していきます。 その都度その都度、書き留めておかなくてはね。

「絵本を読むときのパターン・ランゲージ」は全文Webで読めますが、 電子書籍でも100円で販売していますので、よろしければどうぞ。

 ◆絵本を読むときのパターン・ランゲージ(Kindle版)
 https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00AIZ3NFQ/hyuki-22/

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では、今週の結城メルマガを始めましょう。

どうぞ、ごゆっくりお読みください!

目次

  • はじめに
  • スマートフォンと親密さ - 文章を書く心がけ
  • ファクトベースの自己アピール - 仕事の心がけ
  • ガブリエルのラッパ
  • おわりに