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Vol.240 結城浩/『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』刊行!/井庭研での二つの質問/長期執筆作戦会議/
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Vol.240 結城浩/『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』刊行!/井庭研での二つの質問/長期執筆作戦会議/

2016-11-01 07:00
    Vol.240 結城浩/『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』刊行!/井庭研での二つの質問/長期執筆作戦会議/

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年11月1日 Vol.240

    はじめに

    おはようございます。

    いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

    気がつくと11月。2016年もあと二カ月。

    時の経つのは早いですね……と毎月言ってるような。

     * * *

    新刊の話。

    新刊『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』刊行です!

    先週の水曜日、結城は編集部で新刊にサインをしました。 毎回恒例になりましたが、 このサイン本は一部の書店さんで先行販売されるものです。

    サインするタイミングは、 結城が初めて「本」という形になった新刊に出会うとき。 何度経験しても、深く感動するイベントです。

     ◆サインを待つたくさんの新刊(編集部にて撮影)

    2016-10-26_note8many.jpg

    ありがたいことに、 結城のサイン本は全国書店さんから強く求められています。 細かいやりとりまではわかりませんが、 書店さんと出版社の営業さんとのあいだでの交渉で配本冊数が決まるようです。

    その交渉には結城は関わっていないのですが、 結城からの要望として、 「できるだけ広い範囲の書店さんに配本されるように」 と営業さんに伝えています。 単純に販売冊数だけを考えると、 どうしても都会が中心になってしまいがちです。でも、 応援してくださる読者さんは全国にいらっしゃる。 そのことを忘れないようにしたいと思うからです。

    「できるだけ広い範囲で」と営業さんに伝えると、 営業さんからは「それではサイン本の冊数を増やして」 という要望が返ってきます。ごもっとも。 今回はいつもよりもサイン本を多くしました。 今回は北海道(紀伊國屋書店札幌本店)から、 沖縄(ジュンク堂書店那覇店)までサイン本が届きます。

    結城がサインするそばから、 出版社の方々が台車をごろごろ転がして移動し、 宅配業者に託したり、直接書店に持参したり。 ほんとにありがたいお話です。

    《サイン本》は結城が一冊一冊書きますので、 物理的な制約がどうしても掛かります。 でも、以前から始めた《メッセージカード同梱本》では、 結城の手描きをベースにしたメッセージカードを同梱しますので、 サイン本よりもずっと多くの方に届きます。 《サイン本》や《メッセージカード同梱本》で、 少しでも多くの方に新刊の刊行を喜んでいただければ、 と願っています。

    さて、そういった販促活動はさておき、 今回の『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』は、 いままでとは異なる読者さんにも喜んでいただけるものになっています!

    実際「秘密ノートシリーズはやさしすぎるから読まなくていいよ」 と思っていた読者さんの中には、 今回の「やさしい統計」を読んで気に入り、 他の巻も読んでみようと感じた方がいらっしゃいます。

    ご自身では読まないけれど「子供に読ませたい」や、 「生徒に勧めたい」という方もいらっしゃるようですね。

    先週の土日ではアマゾンでも販売開始されました。 ありがたいことに「数学」分野の売れ筋ランキングで、 第1位になりました。感激です!

    新しい分野に歩を進めたことで、 より広い読者さんに読んでいただけるきっかけになるなら、 著者として、とてもうれしく思います。

    どうぞ、応援よろしくお願いいたします!

     ◆『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』
     https://note8.hyuki.net/

    そうだ。Kindle本の話。

    たくさんの方から「統計本のKindle版は?」 とお問い合わせをいただいていますが、 公式スケジュールとしてはまだ未定ですので、 現時点でアナウンスできる情報はありません。 ごめんなさい。 でも、Kindle本をはじめとした電子書籍は必ず出ます (なお、非公式情報としては、遅くても11月中には出るはず……です)。

     * * *

    今度は『数学ガール6』の話。

    今年力を入れてがんばろうとしてきた『数学ガール6』ですが、 現在は途中を飛ばして第10章を書いています。 分量的には予定の数倍書いているのですけれど、 まだ芯がぶれているようで困っています。

    プリントアウトして第10章全体を読み返し、 気付いたところに赤を入れ、 それをファイルに反映……という作業を何度も繰り返しています。

    ここしばらくは、第10章の骨組みを確認するため、 Evernoteのアウトライナーで頭を整理していました。 アウトライナーで項目を書き上げてみると、 第10章の全体像がよくわかります。

    もっとも、アウトライナーできれいにまとまっても、 実際に文章を書くとつながりがおかしかったり、 読んでいて意味がわからなかったりすることもあるので、 なかなか文章は難しいです。

    アウトライナーで書いているとき、 著者は全体を俯瞰して見ているわけです。 実際に文章を読んでいる読者はあまりそういう見方はしておらず、 文章の流れに乗って読んでいることの方が多いでしょう。 その結果、 著者にはわかっている大きな流れが読者に伝わらないまま、 話だけが何となく進んでいく現象が起きてしまいます。

    なので、アウトライナーで全体像を確認したとしても、 その全体像に文章を押し込めるのはまちがっている可能性があります (正しい可能性もあります)。 結局は、アウトライナーとエディタを「行き来」して、 確かめる必要があるのでしょう。

    まあ、時間を掛けてじわじわ進むしかないですね。 『数学ガール6』、先はまだまだ長そうです。

     * * *

    確率の話。

    やさしい確率の基本的な問題です。

    表に「1」と書いてあり、裏に「2」と書いてあるコインが一枚ある。 コインには偏りがないとする。 このコインを二回投げて、出た数二つを合計する。 さて合計は「偶数」になるだろうか。 それとも「奇数」になるだろうか。 あなたは、偶数・奇数どちらに掛けますか。

    たかしくんはこう考えました……

    コインを一回投げて出るのは偶数か奇数の二通りがある。 二回投げたときには以下の三通りがある。

     (1)「二回とも偶数」、
     (2)「二回とも奇数」、
     (3)「偶数と奇数が一回ずつ」。

    (1)〜(3)の三通りのうち合計が奇数になるのは (3)の一通りしかない。 だから、合計が「偶数」に掛けたほうが当たる。

    ……と、いうことですが、このたかしくんの考えは誤りです。

    途中までは正しいのですが、最後の「だから、」以降が誤り。 たしかに(1)〜(3)の三通りなのですが、 (3)は(1)と(2)を合わせたのと同じ確率で起きるので、 結局「偶数」に掛けるのと、「奇数」に掛けるのとでは、 どちらも同じになるのです。

    以下のように整理するとわかりやすいですね。

     (1)は「偶数→偶数」(合計は偶数)、
     (2)は「奇数→奇数」(合計は偶数)、
     (3)は「偶数→奇数」と「奇数→偶数」(合計は奇数)

    (3)は二つ分を合わせて考えていたわけです。

    高校時代、結城は「確率」が苦手でした。 問題文の内容を捕まえようとすると、 どんどん逃げていくみたいな感じがしたからです。 「場合の数」が持っているややこしさと似ていますね。

    自己弁護するわけじゃないですけれど、 大人になり、プログラミングの本、暗号の本、 数学読み物を書いてきて、 「そもそも、確率って人間には難しいのでは?」 と感じるようになりました。

    確率を含めて、

     ・動的なもの
     ・ランダムなもの
     ・確率に関わるもの

    は、人間が苦手とする概念じゃないでしょうか。

    「動的なもの」というのは簡単にいえば、 「時間にともなって変化するもの」です。 対義語は「静的なもの」すなわち 「最初決めたならば未来永劫変わらないもの」ですね。 静的なものに比べ、動的なもののほうが人間は苦手です。 ですから、動的なものをいかにして静的なものに落とし込むかは、 プログラミングの技法のひとつになります。

    「ランダムなもの」も人間は苦手です。 人間はもともとパターンを見つけてしまう能力を持っていますから、 それが邪魔をしてしまうのだろうなと思います。 単にランダムな現象が起きているのに、そこにパターンを見つけ、 意味を見出してしまうのは人間の弱点ともいえるでしょう。

    そして「確率に関わるもの」も人間は苦手です。 その苦手な部分につけ込むと高い保険金を払わせられたり、 不安を煽る詐欺に引っかかったりします。宝くじはどうでしょうね。

    「動的なもの」「ランダムなもの」「確率に関わるもの」 という人間の弱さを、コンピュータは助けてくれるでしょうか。

    あなたはどう思いますか。

     * * *

    重版の話。

    先日、みすず書房さんから連絡がありました。

    結城が解説を書かせていただいたメダワーの 『新版 若き科学者へ』が重版になるとのことです。 編集さんによりますと「特に新聞書評などがあったわけではないけれど、 刊行以来ずっと堅調に売れ続けて重版まで漕ぎ着けた」とのこと。

    重版になっても結城に印税が入るわけではないのですが、 「重版出来!」のニュースはいつもうれしいものです。

    特に『新版 若き科学者へ』は、 結城自身が大学一年生の頃に愛読していた本でもあり、 重版するほど多くの方に届いたのはうれしいですね。

     ◆メダワー『新版 若き科学者へ』(みすず書房)
     https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4622085305/hyam-22/

     * * *

    インタビューサイトの話。

    結城は ask.fm というインタビューサイトで、 いろんな方から「質問」を受け取っています。 現在1200人ほどの方がフォローしてくださっています。

     ◆ask.fm - 結城浩
     http://ask.fm/hyuki0000

    それはそれでいいのですが、 最近、スマートフォンで ask.fm にアクセスすると、 無関係なアプリのダウンロードページに飛ばされる現象が起きています。 たいへん困ります。

    考えてみますと、 結城は ask.fm で他の人に質問することはほとんどなく、 単に結城あての質問に答えるサイトとして使っていますね。

    ピカリーン!(頭の上で電球が光る様子)

    だったら、別に ask.fm を使わなくても、 「自分専用のインタビューサイト」を作ってもいいんじゃないでしょうか。

    こんなことを、ある夜に考え始めました。 うん、「シンプルなWebサイト」として、 自分専用の ask.fm を作ったら楽しいかも!

    またです。 結城は、仕事が忙しくなると「シンプルなWebサイト」 を作りたくなる衝動にかられます。 またそれが始まったのです!

    では、ユーザインタフェースを考えてみましょう。

    そのサイトで必要なページはどんなものがあるでしょうか。

     1. これまでの「質問と回答」の一覧が表示されているページ
     2. 個々の「質問と回答」が表示されているページ
     3. 「質問」を投稿するためのページ

    一般ユーザ(結城以外)に見えるのは上の三ページのみでいいでしょう。 一覧と、個々の質問と回答とを見ることができ、投稿もできると。

    では、管理者兼解答者としての結城に見えるのはどんなページが必要? 投稿された質問はすぐに表示されるわけじゃなくて、 結城が回答して初めて表示されるようにしたいから……

     4. 「未回答の質問」の一覧が表示されているページ(結城専用)
     5. 「回答」を投稿するためのページ(結城専用)

    以上のページがあればいいでしょうかね。 その他に、RSSリーダで読む人のために、

     6. 更新通知用のRSSのインタフェース

    も用意しておきましょう。

    ドメインはどうする? いつものように hyuki.net のサブドメイン上に作ることにします。 たとえば、 ask.hyuki.net みたいな感じにします。

    サイトの名前はどうしようか? たとえば「結城浩に聞いてみる」とか「結城浩にインタビュー」とか。 軽い「質問」と「回答」を楽しむ感じにするなら、 「インタビュー」は大げさかな。

    質問者のユーザ管理は? ユーザ管理はたとえばTwitterで認証するタイプにしてもいいけれど、 匿名の扱いなどがめんどうになるので、全員匿名にしちゃいましょう。

    ここまで頭で考えてきたので、 そろそろ画面遷移図を描きたくなりました。

    ノートを取り出して、いそいそと描きます。 こんな感じになりました。

     ◆結城浩専用の質問サイト画面遷移図

    2016-10-25_ask.jpg

    続いて、もしも実際に作るとしたら、 作成手順はどうなるかな、と考えます。

     ◆結城浩専用の質問サイト作成手順

    2016-10-25_ask2.jpg

    ここまで考えてくると「できた気分」になり、 だいぶ満足。

    夜も遅くなったので、「エア開発」は終了です。

    いつか、忙しくてつらいときに 「開発」することにしましょうね……。

     * * *

    少しずつ進める話。

    先日、ある打ち合わせに向かうため、地下鉄に乗りました。 都内の地下鉄は複雑に絡み合っていて、 乗り換えもややこしい場合があります。

    結城は方向音痴でよく迷子になるので、 自分で方向を判断せず、駅構内の表示に素直に従うことにしています。 多少遠回りになっても、迷うよりはましですからね。

    その日、地下鉄の乗り換え用として矢印と共に、

     「〇〇線まで700m」

    という表示があるのに気付きました。 なるほど距離も示されていればわかりやすいですね。 ……と思いつつ、よく考えてみると「700m歩く」って、 けっこうな距離じゃないでしょうか。

    電車に乗って外出すると、 電車に乗っているにもかかわらず足が疲れていることがあります。 その原因は、駅構内を意外に長い距離歩いているせいかもしれませんね。

    それにしても、それだけ長い距離を歩いてしまうのは、 なかなか興味深い現象です。長い距離を歩けてしまうのは、 「まっすぐでのっぺりした何もない通路が700mあるわけじゃない」 のがポイントなのかな、と想像しています。

    「○○線まで700m」と書かれていても、 途中には階段があったり、キオスクがあったりしますので、 自然と「自分は目的地に向かって進んでいる感」があります。 さらには、

     「○○線まで520m」
     「○○線まで340m」
     「○○線まで112m」

    のように、目的地までのカウントダウン表示もあります。 ですから気がつかないうちに歩けてしまうのかも。

    そこで、気付きました。

    この現象は「長い文章を人に読んでもらうコツ」に変換できそうです!

    長い文章を人に読んでもらうためには、 「まっすぐでのっぺりした何もない文章」 を提示するのは好ましくありません。 読者が途中で飽きてしまうからです。

    階段や、キオスクや、「目的地まであと何メートル」 のような表示を文章中に設置するなら、 読者はそれらを手がかりに読み進められるでしょう。 飽きずに読み進むための手がかりや、 カウントダウンに相当するものを文中に設置するのです。

    「読者が目的地に向かって進んでいる感」を作り出すのは大事です。 章に分け見出しを工夫し、 扱う題材を整理し、順序よく読者に提示することは有効でしょう。

    駅構内を歩きながら、結城はそんなことを考えていました。

    いろんなところに、よい文章を書くためのヒントは転がっています。

     * * *

    さてそれでは、今週の結城メルマガを始めましょう。

    どうぞ、ごゆっくりお読みください!

    目次

    • はじめに
    • 井庭研での二つの質問 - 仕事の心がけ
    • 長期執筆作戦会議 - 仕事の心がけ
    • おわりに
     
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