Vol.306 結城浩/チャンスをつかむ心がけ/「何がうれしいのか」という問い/心を動かす文章をめぐって/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年2月6日 Vol.306

はじめに

結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

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『数学ガール/ポアンカレ予想』の話!

先週『数学ガール6』の本文を脱稿しました(ようやく)。 そしてTwitterやWeb日記で今回のテーマをアナウンス。 今回の数学ガールは、

 『数学ガール/ポアンカレ予想』

という本になります。

ポアンカレ予想というのは、トポロジー(位相幾何学)の問題です。

数学者アンリ・ポアンカレが《問いかけ》の形で論文の最後に書いた問題、 それが《ポアンカレ予想》です。 この問題が提示されたのは20世紀初めのこと。

そこから多数の数学者が挑戦し、 なんと百年という時間が過ぎました。

そして、21世紀の初め、 グリーシャ・ペレルマンがこの《ポアンカレ予想》 の証明を完成させたのです。

「数学ガール」シリーズ第6弾は、 この《ポアンカレ予想》に挑戦します!

刊行は2018年の春を予定しています。

今回のテーマを発表してから、 とても多くの読者さんからはげましのメッセージをいただいています。

本文は脱稿したのですが、 まだまだ校正作業は続きます。

ぜひ、応援よろしくお願いいたします!

 ◆『数学ガール/ポアンカレ予想』
 http://www.hyuki.com/girl/poincare.html

 ◆『数学ガール/ポアンカレ予想』宣伝画像

2018-01-31_poincare.png

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『プログラマの数学 第2版』の話。

2018年1月に刊行した『プログラマの数学 第2版』は、 引き続き多くの方に読まれているようです。

プログラマに限らず一般の方も 「クイズ仕立ての楽しい数学の本」 としてお読みになっている方もいらっしゃるみたいです。

2018年1月28日〜2月3日の 書泉ブックタワーコンピュータ書ベストで、 『プログラマの数学 第2版』は第3位となりました。

 https://twitter.com/shosen_bt_pc/status/960004452445900801

編集部によりますと、2018年2月上旬には 『プログラマの数学 第2版』の電子書籍も配信開始とのこと。

こちらも引き続き応援よろしくお願いいたします!

 ◆『プログラマの数学 第2版』
 http://www.hyuki.com/math/

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批評の分析の話。

『ライアーゲーム』で有名な漫画家の甲斐谷忍さんが、 以下のような興味深いツイートをしていました。

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 「編集者に漫画を見てもらって、批評をもらったのですが、
 何が問題なのかいまいちわからない」
 という意見を多く聞いたので、ざっくりと表にしてみました。
 ちなみに 「話」「構成」「演出」ともに10点満点です。

 https://twitter.com/mangakap/status/958553459170590720

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詳細はリンク先に画像があるので、 そちらを見ていただきたいのですが…… 要するに、編集者から批評してもらったときに、 編集者の言葉をどのように分析し、 理解するかという話題です。

まず、甲斐谷さんは漫画に対する評価を、

 ・話
 ・構成
 ・演出

の三つの軸に分解してそれぞれ10点満点とします。 座標値が0から10までを取る三次元空間の一点ともいえますね。

甲斐谷さんは、それに続けて「編集者の批評の言葉」ごとに、 この三つの軸がそれぞれ何点であるか(バランスがどうであるか) を示しているのです。

たとえば、

 「読みにくい。何を言いたいかよくわからなかった」

という批評は、

 ・話が5点
 ・構成が1点
 ・演出が2点

とされています。つまり、話はまあできてるけれど、 構成や演出はよくないということになります。

あるいは、

 「まとまってはいる。小さくまとまっている。すんなり読めた」

という批評は、

 ・話が4点
 ・構成が6点
 ・演出が4点

とされています。構成はよいけれど、 話と演出は構成ほどはよくないということでしょうか。

甲斐谷さんは上のツイートで、 8個の批評の言葉をこの方法でざっくり分析しています。

結城はこのツイートを見たとき、 「うまい!」と思いました。

批評の言葉というのは、感覚的であり、 何となくはわかるけれど、じゃあどうすればいいの? という疑問が出てきそうです。

でも、このように批評の言葉を分解・分析するならば、 漫画家は自分の作品の「弱点」と「強み」が明確になるでしょう。 そうすれば、自分の作品をよりよくする手掛かりが得られます。

この分析の内容が的確かどうかは私にはわかりませんが、 このように分析するという発想がすばらしいと思いました。 定性的な評価を定量的な評価に変えようとする試みといえます。

さすが、大金が掛かったゲームで相手をいかに欺くかというコミック 『ライアーゲーム』の作者さんですね。頭いい……

 ◆甲斐谷忍『LIAR GAME 1』
 https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B009GZIU4S/hyuki-22/

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それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

どうぞ、ごゆっくりお読みください!

目次

  • はじめに
  • 「何がうれしいのか」という問いは何がうれしいのか - 教えるときの心がけ
  • チャンスをつかむ心がけ - 仕事の心がけ
  • 心を動かす文章をめぐって - 文章を書く心がけ
  • おわりに