結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年11月5日 Vol.397
目次
- 好きなことがだんだん苦痛になってきた
- LaTeXをすらすら書けるようになるには - 文章を書く心がけ
- 人の上に立つ役職、自信を持つためのコツ - 仕事の心がけ
- 読むスピードはどうすれば上がるのか - 学ぶときの心がけ
- 週末を怠惰に過ごしてしまうのを何とかしたい
- 職業選択の基準 - 仕事の心がけ
はじめに
結城浩です。
いつもご愛読ありがとうございます。
新刊の話。
『数学ガールの秘密ノート/学ぶための対話』は無事に再校読み合わせが終わり、原稿は結城の手から完全に離れました。編集部によれば2019年11月の刊行はほぼ確実になったとのことです。気がつけば今月刊行。もう少しですね。
今回は数学が苦手な新キャラ「ノナちゃん」が登場しますが、扱われている内容は必ずしも数学に限ったものではありません。学ぶこと、教えること、理解すること…という大切な話題を扱っています。生徒さんだけではなく、学校や塾の先生、保護者さんにも読んでいただきたい一冊。いつもとはちょっと違い、「数学なんて関係ない」という人にも読んでいただきたいなあと思っています。
その「いつもとはちょっと違う」気持ちはカバーイラストにも表現されており、いつもと雰囲気の異なる表紙に仕上がりました。
今回もカバーイラストはたなか鮎子さん、装丁は米谷テツヤさんです。一つのキャンバスから無限に広がる世界がみごとに表現されていて、今回の本書にぴったりです!
第1章は以下の「Web立ち読み」で無料で読むことができますので、まだでしたらぜひ。また、本書を気に入りそうな方へのご紹介もよろしくお願いいたします。
◆『数学ガールの秘密ノート/学ぶための対話』(Web立ち読み)
http://ul.sbcr.jp/MATH-v2TrQ
◆『数学ガールの秘密ノート/学ぶための対話』(アマゾン)
https://bit.ly/hyuki-note12
応援感謝です!
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ヨビノリたくみさんによる『数学ガール』紹介動画の話。
有名YouTuberのヨビノリたくみさんが、【3分書評授業】として『数学ガール』を紹介してくださいました!ありがとうございます!
◆難しくって読みやすい?基礎からわかる“僕”とJKの青春数学ラノベ!【数学ガール】【3分書評授業】
https://youtube.com/watch?v=IS73zumyUdw
また、ヨビノリたくみさんは先日「大学生が個性を身に付けたければ勉強すれば良いという話」というnoteを書いていました。
これは、大学生にぴったりの読み物です。noteの中でたくみさんが「この先、もしYouTubeがなくなることがあっても、自分の仕事がなくなるとは思っていない」と書いていますが、たいへんカッコイイですね。ぜひ、お読みください。
◆大学生が個性を身に付けたければ勉強すれば良いという話
https://note.mu/yobinori/n/n0bbd14d4f40f
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科学道100冊の話。
理化学研究所(理研)と、編集工学研究所が選ぶ「科学道100冊(2019)」の中に『数学ガール』が選ばれていました。感謝しつつご紹介します。
科学道100冊(2019)では、以下の100タイトルが紹介されています。WebサイトからはISBN付きのタイトル一覧(CSV)がダウンロードできます。年末年始の読書、書籍選びの参考にいいのではないでしょうか。
- 元素ハンター(17タイトル)
- 美しき数学(15タイトル)
- 科学する女性(18タイトル)
- 科学道クラシックス(50タイトル)
◆科学道100冊(2019)- 科学道100冊
https://kagakudo100.jp/st/lineup2019
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cakes(ケイクス)の話。
『数学ガールの秘密ノート/学ぶための対話』は「数学ガールの秘密ノート」シリーズを書籍化した第12冊目になります(書籍はどの巻からでも読めます)。書籍化のもとになった文章は、cakes(ケイクス)というWebサイトで毎週連載しているもの。現在第273回まで続いています。
先日、cakes(ケイクス)を運営している株式会社ピースオブケイクの沿革が書かれた記事が公開されていました。これによれば、コンテンツ配信サイトcakesが始まったのは2012年9月11日とのこと。
◆ピースオブケイクの沿革
https://www.pieceofcake.co.jp/n/n70114bdbbbc4
ところで、結城の記録によれば、Web連載「数学ガールの秘密ノート」をcakesで書き始めるための打ち合わせをしたのは、2012年9月末のこと。cakesが始まった直後ですね。
そして実際に結城のWeb連載「数学ガールの秘密ノート」が始まったのは2012年11月。我ながら、すばやい動きだと思います。
話は前後しますが「結城メルマガ」を開始したのは2012年4月でした。メルマガを半年続けて配信のペースがつかめたところで、別の展開としてWeb連載を始めたのですね。時系列はこうです。
- 2012年4月 結城メルマガ開始。
- 2012年9月 cakes開始。月末にWeb連載打ち合わせ。
- 2012月11月 結城のWeb連載開始。
そしてそれから夢のように時間は流れ、いまはちょうど8年後。結城は現在も「結城メルマガ」とcakesでの「Web連載」を継続しています(!)。8年間継続してWeb連載を続け、それをベースにして、もうすぐ12冊目の「数学ガールの秘密ノート」が刊行されることになります。
すばやく動くことと、継続すること、両方が大事なのですね。感謝、感謝です。
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親子の会話の話。
カフェ。隣席で父子二人が会話しています。
子「ねえ、パパって、注射したことある?」
父「注射? うん、あるよ」
子「そのとき、注射、痛かった?」
父「忘れたなあ」
子「ボクね!注射、痛かったけどガマンしたんだよ!」
父「小さい声で話しなさい」
違うんだ、お父さん。
子供がそう言ったときの返しは「えらかったね」なんだ。
さもないと、もっと大きな声になるぞ(実際、大きな声になった)。
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それでは、今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
好きなことがだんだん苦痛になってきた
読者さんから
自分が大好きだと思ってやってきたことに多くの時間を費やしていたら、だんだん苦痛になってきました。
そして、無理に好きだと思っている自分の存在に気がつきました。
心から好きだと思えることをまた探そうと思います。
応援してください。
結城から
応援します。
好きなことがだんだん苦痛になってくるというお気持ちや、もう好きではないのに無理にそう思い込もうとするお気持ちはよくわかります。
老婆心ながら、陥りがちなことについてお話しします。苦痛に気付いた後、つい、自分が「それ」を好きだった時期まで否定したくなるケースがあります。自分がもしも何かまちがった判断をしたのなら、それを反省することは悪くありませんが、その時代のすべてを否定してしまうのはあまりよくありません。各時点での自分を全否定したり、なきものにするとしばしば足元がぐらつきます。
人間は生きています。つまり、時間の流れにしたがって好きなものが変化するのは不思議ではありません。経験が増すにつれて飽きることもあります。過去を全否定するのではなく「あのときの私はそのように判断した。あの時代の自分は、あれが好きだったのだ」ということ自体は認めた方がいいと思います。
過去の自分も自分。現在の自分も自分。そして未来の自分も自分。それぞれの時代を生きる自分をきちんと認め、それぞれの時代を力一杯生きていきましょうね!
応援しています!