結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2012年10月23日 Vol.030
結城クイズ
漢字クイズです。 縦横十文字に並んだ漢字で四つの熟語ができるように「☆」に あてはまる漢字を答えてください。
例題:「明☆」「早☆」「☆食」「☆日」
明
早☆食
日
「明☆」「早☆」「☆食」「☆日」なので… 「☆」にあてはまるのは「朝」です。 「明朝」「早朝」「朝食」「朝日」ですからね。 よろしいですか。それでは問題です。
問題1(易):「万☆」「同☆」「☆生」「☆見」
万
同☆生
見
問題2(普通):「初☆」「☆画」「出☆」「☆力」
初
出☆画
力
問題3(難):「人☆」「☆食」「手☆」「☆重」
人
手☆食
重
はじめに - Web連載『数学ガールの秘密ノート』について
いつもメルマガご愛読ありがとうございます。 なぜか最近「はじめに」がだんだん長くなってきました。 個々のコーナーもさることながら、臨時のトピックが多いからかもしれません。
今日の「はじめに」は、いま計画中の Web連載『数学ガールの秘密ノート』について書こうと思います。
◆Web連載『数学ガールの秘密ノート』
http://www.hyuki.com/girl/note.html
『数学ガールの秘密ノート』について
Web連載『数学ガールの秘密ノート』は、 結城の書籍「数学ガール」シリーズのキャラクタたちが 数学用語を対話形式で解説する楽しい読み物です。
「僕」やミルカさんやテトラちゃんが対話しながら、 数学用語を説明していくことになるのですが、 「数学ガール」シリーズの内容よりはずっと難易度を下げて、 易しい雰囲気になったらいいなと考えています。
書籍の「数学ガール」シリーズは比較的「がっつり」数学を やっている部分がありまして、それはそれで良いのですが、 もう少し広い読者さんにも数学を楽しんでいただけるようなものになったら、 と思うわけです。
Web連載について
Web連載というのは、定期的にWebで読めるようにするということなのですが、 現在結城は、cakes(ケイクス)というWeb上の読み物を公開する プラットホーム向けに準備を進めています。
◆cakes - クリエイターと読者をつなぐサイト[ケイクス]
https://cakes.mu/
cakes(ケイクス)は、 週150円でcakes上のすべての読み物が読めるという方式のWebサイトです。 感覚としては雑誌に近いと思います。 雑誌には多様な人の記事が集まっていて、 ぱらぱらめくっていくと、自分の知らなかった書き手の読み物に出会えます。 cakesはそれに近いのかな、と思っています。
いろんな媒体で書く理由
結城は、本を書いたり、メルマガを書いたり、 Web連載をしたりといろんな媒体で書こうとしています。 その理由は何かというと、
「いろんなことを試してみたい」
という気持ちが大きいですね。 以前もメルマガを始めるときに書いたかもしれませんが、 新しい媒体に向かうときに、違う自分、 違うトーンの手応えを感じるように思うんです。
このメルマガは2012年の4月に始めましたので、ちょうど半年たったわけですね。 私なりにメルマガの感覚(文章や企画を用意して、メルマガという媒体に乗せる感覚) がわかってきたので、もう少し別の展開をさせてみたいなと思っていたのでした。
cakesの加藤さんと話して
「Webで記事を書く」ということを考えていて、ふと、
「そういえば、最近cakesという名前をよく聞くなあ」
と思いつきました。 そこで、cakesの代表である加藤貞顕さん(@sadaaki)にコンタクトを取り、 東京の渋谷にあるcakesのオフィスに出かけていきました。
そこで加藤さんからcakesというプラットホームのお話を詳しく聞き、 結城の連載についての相談をしてきたのです。 それがちょうど一ヶ月くらい前(2012年9月末)くらいのことですね。 とても楽しいひとときでした。
興味を持ったのは、 どうしてcakesが「定額料金読み放題」というモデルを取ったかでした。 加藤さんによれば、Webでは細かい記事を読むたびに購読手続きを取ると、 細かい決裁が発生して読者が煩雑であると。まあそれはそうですね。 だから、定額料金読み放題というモデルになったということらしいです。 それは「読者視点」の発想でした。
著者・読者・出版社のこれから
話は少しそれますが、 結城はよく「著者」と「読者」の関係について考えます。
著者は文章を書く。
読者は文章を読む。
これはシンプルですよね。
そして、その文章そのもの、もしくは文章を読む体験に それなりの価値があれば、読者さんの支払いによって 著者は継続的に文章を書くことができる。 読者は継続的にその著者の文章を読むことができる。
著者はうれしい。
読者もうれしい。
これもシンプル。
それでは出版社はどんな役割を果たしているだろうか。 ここですべてを論じることはできませんし、 現在数多くの人が書いていますので、 出版社に期待される機能だけを出すと、
- 企画(魅力的な企画を作る)
- 編集(文章の品質を向上)
- 印刷(文章を紙の形にする)
- 営業・宣伝・広報・販売(文章を読者に知らせ、届ける)
といったものがありますよね。 そのほかにトラブルが発生したときに 著者を法的に守るという機能もあるかもしれません。
いずれも現在の書籍を支えている大事な機能であることは まちがいないと思います。
しかし、電子書籍を巡る世の中の動きや、経済環境の変化などにより、 これから近い将来に、出版社のこのような機能が次第に 「出版社という一つの会社」というくくりから飛び出して、 細かく分散する可能性が考えられます。
企画を立てる人、編集をする人、営業・宣伝・広報する人、 印刷する人…それらが一つの会社というくくりにいる必然性は 実はあまりない(のかもしれない)ということです。
すでにいくつかの機能は分散しています。 たとえば、結城は自分のWebサイトやTwitterで読者さんに 自著の告知を行ったり、読者さんと対話したりします。 著者と読者が直接対話していることになります。 出版社が持っている「宣伝・広報」の一部を著者が担っているといえます。 さらに、読者さんは、
「こんどこんな本を書いてね!」
とツイートやメールで結城に教えてくださることがよくあります。 結城はこういうツイートやメールが大好きなんですが、 これは「企画」の一部を読者さんと著者が担っているともいえます。
このような動きは一昔前なら考えられなかったことですよね。
もしかすると今後、これまで「出版社」が担っていた仕事の 多くが分散していく動きは加速するかもしれません。 (しないかもしれません) 未来のことですから、確実なことは誰にもいえませんが、 大きな変化が起こるような予感は多くの人が持っているはずです。
cakesのようなモデルは、出版社と敵対するわけではなく、 著者と読者をつなぐ新たな試みの一つだと思っていますが、 これがうまくいくかどうかも、よくわかりません。 うまくいくんだろうか。 端で見ていてはよくわからないので、 結城はcakesで実際にWeb連載をしてみて、
「実際のところはどうなんだろう」
という感触をつかんでみたいなと思っています。 新しいプラットホーム上で何かを作り、何が起こるのかを 感じてみたいなと思っているのです。
もちろん、プラットホームはプラットホームに過ぎなくて、 大事なのは常に「読者のことを考える」という点にあります。 結城は書く人であり、読者に向けて良い読み物を提供したい。 それはどんなに時代が変わっても変化しません。 そこを崩すことなく、新しい試みには積極的に取り組みたいと思っています。
Web連載と書籍について
Web連載『数学ガールの秘密ノート』に話を戻します。 この連載は数学用語を対話形式で解説する読み物になりますが、 これも、うまくまとまれば将来書籍にしようと考えています。 「Webで書く感覚」と「書籍にする感覚」はおそらく違うと思うのですが、 その違いを楽しみつつ、がんばりたいと思っています。
結城が「おもしろい」と思うものを何とか数学ガールたちに表現してもらい、 それをWebという形態を通して読者さんに読んでもらう。 そしてまたそれを再編集して、書籍という形で読者さんに読んでもらう。 どんな工夫をどう盛り込むか…考えれば考えるほどわくわくしてきます。
少し長くなってしまいましたが、 Web連載『数学ガールの秘密ノート』に関連したトピックをいくつか お届けいたしました。
新しい試みなので、きっと失敗したりすることも多いと思いますが、 ぜひ応援いただければと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、「はじめに」がまた長くなりましたが、 今回のメルマガをお送りいたします!
目次
- 結城クイズ
- はじめに - Web連載『数学ガールの秘密ノート』について
- 数学文章作法 - 第6章「目次と索引」
- Q&A - 練習問題に解答は必要ですか
- 結城クイズの答え
- 次回予告 - 結城浩セミナー/プレビュー版(6)
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