Vol.102 結城浩/数学文章作法 推敲編/文庫解説/教えるときの心がけ/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年3月11日 Vol.102

はじめに

おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。 いかがお過ごしですか?

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この結城メルマガVol.102がみなさんのところに届くのは、2014年3月11日、 東日本大震災からちょうど三年目です。 昨年も書いたのですが、2011年の3月11日のツイートを読み返してしまいます。

 ◆2011年3月11日の結城のツイート
 http://twilog.org/hyuki/date-110311/allasc

地震の直前まで普段のツイートをしているんですが、 地震の直後は「祈り。」のひとことになってしまう。

この後、みなさんご存じの通りたいへんなことが次々起こるのですが、 あれから三年。ここに一言では書けない思いがあれこれ浮かびます。 いまだご苦労なさっている方々のことを思いつつ、 静かに祈りたいと思います。

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さて、先週はこの結城メルマガの通算100号記念のサイン本プレゼントの抽選を行いました。 厳正な抽選の結果、四名の方が当選され、メールにて連絡を取ることができました。 ご応募ありがとうございます。はずれてしまった方、ごめんなさいね。 サイン本は、2014年3月26日(水)までに発送する予定です。

多くの方が、応募に合わせて応援メッセージを送ってくださいました。 とてもはげまされました。ありがとうございます!

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次は、初校読みの話。

先週後半に『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』の初校が届き、 ずっと初校読みをしています。

自分のエディタで編集してLaTeXをかけてできたPDFで読むのと、 印刷所から回ってきた初校紙で読むのとでは、 ずいぶん気持ちがちがいます。 PDFで読むよりも、初校紙で読む方がまちがいを見つけやすくなります。

『数学文章作法 推敲編』を書いていても思うのですが、

 《読んでいるときの気分を変える》

というのは、推敲・校正で非常に大切なことです。

一つの視点、いつもの気分だけで文章を読んでいるとまちがいに気付きにくくなります。 できるだけ多くの視点、 バリエーション豊かな視点に立って文章を読んでいくことが大事ですね。

初校は版面がまだまだ荒いので、読みながらいろいろとひっかかります。

 ・組版の都合で文字間隔が乱れている
 ・図版のページ送りが予想と違っていた
 ・加筆・修正が必要な部分があちこちに残っている

まあ要するに原因はさまざまですが、 まだ品質はそれほど高くはない。 でも、めげずにひっかかるところを一つ一つ修正です。 地道な作業を積み重ねていくと、いつかどこかで

 量が質に変わる

という現象が起きます。 何がどうというわけじゃないけれど、スムーズに読める。 版面を気にしながら読むのではなく、内容に浸って読んでしまう。

……そんな切り替えが起きます。 おおざっぱにいえば初校と再校の間くらいでしょうか。 再校になるとざらざらも取れて校正を行うことができます。

でも、いまは初校読み、地道に地道に進みましょう。

今週一週間読み続けて、 来週の前半に「初校の読み合わせ」を行います。

編集部にいって、一ページ一ページ校正紙をめくりながら、 編集長とチェックをするのです。 結城にとって、とても大切な、そして楽しい作業です。

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別のお話。

結城は、平日は外で一人で昼食を食べます。 たいていはTwitterやFacebookを見ながら食べています。

一人の食事のはずなんですが、ネット(SNS)を見ていると、 ぜんぜんひとりぼっちという感じはしません。 そこにはいつものお友達がいて、自分のツイートに返事をくれたり、 互いにおしゃべりしたりしているからです。

いつものみんなとわいわいやりながら食事をしている感じがして、 さびしくないし、むしろ楽しい。

もちろん気の置けない人と直接顔を合わせて食事するのもいいですけれど、 ネットごしでも楽しいなあと思います。

あなたはどう思いますか。

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さて、書籍のご紹介。

講談社文庫で青柳碧人さん(@aoyagi_)が書いている 「浜村渚の計算ノート」というシリーズがあります。 浜村渚ちゃんというのは中学二年の数学少女です。

その最新刊『浜村渚の計算ノート5さつめ 鳴くよウグイス、平面上』の 巻末の解説を結城が書きましたのでご紹介します。

 ◆『浜村渚の計算ノート 5さつめ 鳴くよウグイス、平面上』(青柳碧人)
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062777762/hyam-22/

本書には数式は出てこなくて、 数学のトピックと絡んで物語が進むという感じですね。 いろんなルートを通じて数学に親しむ方が増えたらうれしいです。

結城にとって「文庫の巻末解説を書く」というのは初めての体験でした。 書き始めるまではあれこれ悩みましたが、 書き始めたら予想より早くまとまってほっとしています。

結城の「数学ガール」シリーズとはまた違う数学少女ものですので、 よろしければみなさまどうぞ。3.14(円周率の日)に刊行です。

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円周率の日といえば、来週の結城メルマガでは、 とてもうれしいアナウンスが(たぶん)できると思います。

結城にとってうれしい話なのですが、 結城のことを応援してくださるみなさんにも、 きっとうれしいと思っていただけるアナウンスだと思います。

どうぞお楽しみに!

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先週からCodeIQで結城浩の新しい問題が出題されました。 今回のテーマは、「暗号解読」です。愛称はクリプタン。 暗号解読クリプタン問題ですね。

 ◆クリプタン帝国の暗号文を解読しよう!
 https://bit.ly/cryptan

今回は「暗号プログラムの構成図を読み解き、暗号解読にチャレンジ!」と題して、 いつもとは少し毛色の違う出題になりました。

ところで、今回はいつもに比べて挑戦者の出足が鈍いようで、 これを書いている月曜の時点で挑戦済みは18名。 〆切が来て、全員の解答を見てみないとなんともいえないのですが、 今回は難しすぎたのかもしれません。 もうしわけありません……

ともあれ、お時間のある方はぜひチャレンジをお願いいたします!

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さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。

今回は『数学文章作法 推敲編』の第7章「推敲のコツ」をお送りします。 これまでの章であまり掘り下げることのできなかったさまざまなコツを、

 ・時間の管理
 ・効率的な推敲
 ・多様な推敲

というポイントにそってお話しします。

また「教えるときの心がけ」では、 「学ぶこと」と「教えること」がこれからの社会に大切というお話しをします。

それではどうぞお読みください!

目次

  • はじめに
  • 数学文章作法 - 推敲のコツ
  • 「学ぶこと」と「教えること」がこれからの社会に大切 - 教えるときの心がけ
  • 次回予告