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Vol.153 結城浩/数学文章作法 - 著者の不安/Q&A/仕事の心がけ/
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Vol.153 結城浩/数学文章作法 - 著者の不安/Q&A/仕事の心がけ/

2015-03-03 07:00
    Vol.153 結城浩/数学文章作法 - 著者の不安/Q&A/仕事の心がけ/

    結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年3月3日 Vol.153

    はじめに

    おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

     * * *

    新刊の話。

    『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』の初校ゲラがやってきました。

    ゲラとは、結城が編集部に送った原稿をいったん組版して紙に印刷したものです。 この初校ゲラを読んで、朱を入れ、編集部に渡すと、再校ゲラになって帰ってきます。 同じように再校ゲラを読んで、朱を入れ、編集部に渡すと、 あとは私としては出版を待つばかりになります。

    で、初校ゲラ。 読み返すとザラザラするところがあちこち見つかりますので、 そこにていねいにヤスリを掛けていきます(比喩)。 これまでも本を出すたびに行ってきた作業ですが、 毎回、初心に返って行います。

    結城はいつも、

     「今回の本が生まれて初めて書いた本であるかのような気持ち」

    で校正に取り組むのが好きです。 初心忘れるべからず。初めの愛から離れるな。 ということですね。

    筆者の立場からして何冊目の本であったとしても、 今回の本で初めて、結城の本に出会う読者さんもいるわけですから、 当然の心がけだと思っています。

    刊行は四月の予定。

    がんばらなくては!

     ◆『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』
     http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797382317/hyuki-22/

    ちなみに、Twitterでのようすを見ていると、 「数学ガール」シリーズや、「数学ガールの秘密ノート」シリーズは、 進級・進学のお祝いによく選ばれているようです。

    中学生・高校生・大学生のお知り合いがいらっしゃる方、 ぜひ!

     * * *

    数学の本の話。

    以前も紹介したことがありますが、最近また改訂されたので改めてご紹介。

    学習院大学の田崎晴明氏が書いた数学の本が無料で公開されています。 かなり大部の骨太な本ですけれど、 大学数学に興味のある高校生にはぴったりの一冊ではないかと思います。

     ◆数学:物理を学び楽しむために
     http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/mathbook/

     * * *

    ちくま学芸文庫の話。

    結城「数学文章作法」シリーズは、筑摩書房から出版されています。 私の本を出してもらっているから書くわけではありませんが、 ちくま学芸文庫のMath&Scienceシリーズは、 数学に関連した本をぞくぞく出していてすごいと思います。

    特に、古典的な本や絶版で手に入りにくい本が文庫化されるのはありがたい。 シャノン。コロモゴルフ。エミール。遠山啓。マンデルブロ。 千円程度で買えてハンディに読めるというのは素晴らしいことだと思います。

     * * *

    ゲームの話。

    結城はiPhoneでパズル的なゲームをするのが好きです。

    最近のお気に入りはMartin Magniの「Odd Bot Out」。 すでに100面をコンプリートしましたが、 これはたいへん楽しいゲームでした。

    物理エンジンとパズルが組み合わされており、 ヨタヨタ歩くロボットを出口まで導くというものです。 運に頼る要素が少ないため、かなり論理的に考えることができます。 しかしながら、現実世界のように不安定な要素もあり、 そのバランスが非常におもしろい。

    結城はゲームを楽しむとき、難易度の調整に特に注目します。 というのは、結城が書く本でも似たような「難易度の調整」が必要になるからです。 あまり難易度が高すぎるといやになるけれど、低いものばかりではつまらない。 難易度の調整をうまく行って、 飽きずに先に進みたくなるようにするのは重要な技法なのです。 このOdd Bot Outは少し易しめだけれど、飽きずにこなせる良いゲームでした。 ところどころ、はからずもロボットがコミカルな動きに なってしまうのも最高ですね。

     ◆Odd Bot Out
     https://itunes.apple.com/jp/app/odd-bot-out/id919968216

     * * *

    新たな発見の話。

    先日、中学生の息子に「ハノイの塔」の話をしました。

    中学生の息子はハノイの塔は知っていたけれど、 最小手数の求め方は知らなかったようでした。 そこでクイズにして、答えをいっしょに導きました。

    ちょうど、「僕」とユーリが数学トークをするのと同じような感覚があり、 非常に楽しいひとときでした。 こういう経験は結城が本を書くときにもきっと役立つはずです。 息子との会話が一段落したあと、結城は「これも読んで」と自分の本を渡しました。 ハノイの塔について図版つきで解説しているからです。

     ◆『プログラマの数学』
     http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797329734/hyam-22/

    「ハノイの塔」に限りませんが、 数学読み物には「定番の題材」というものがあります。 そういう定番の題材を本で紹介するときには、 初めての人にもやさしくわかるように、 また、聞き飽きている人にも何かしら新たな発見があるような、 そんな描き方を心がけています。

    (おっと、これは今回の結城メルマガの、 『数学文章作法 執筆編』に通じる話題ですね)

    そして、読者に新たな発見があるような本を書くためには、 書いている私自身が何かを発見しなくてはならないと思っています。

    発見といっても、ほんのささいなことでいいのです。 とにかく「はいこれね!」みたいに、 雑な提示の仕方にならないようにしなくてはと思っています。 そしてそのためにも、私自身の発見や、喜びや、ワクワクが大事なのです。

    自分の発見があるなら「何とかよりよく伝えたい」と工夫したくなりますからね。 「せっかく気付いた、これとこれの関係を描きたい」 のように。

    この話題は、先日結城メルマガで連載していた、 「数学ガールの特別授業(教師編)」でも少し書きましたね。 昨年の新潟での講演会でも、先生方に喜んでいただけてとてもよかった。

    著者は新たな発見をして、その感動を読者に伝える。 発見自体が小さくても、それは大きな仕事である、 そんなふうに結城は思っています。

     * * *

    発見と理解の話。

    発見といえば、本を書いていると、毎日のように小さな発見がある。 自分の文章を書く中で真剣に考えるからだろうか。

    ネットで得る情報や本を読み流して得る情報と、 自分が体験した発見とは大きく違う。 得た情報そのままでは自分の血肉にはなっていない。 情報をよく噛み砕いて、取り込んで、消化して、初めて血肉になる。

    そして、いったん血肉になると、 同種の情報に出会ったときにその意味がよくわかる。 深みや広がりを感じることができる。 そんなふうに思う。

    表面的な情報をたくさん集めても、上滑りで終わる。 でも一つでも自分の発見があると、それが変わる。 一点突破でいいのだ。十分掘り下げた経験と、 そこで見つけた小さな輝く石。それだけで、 たくさんの表面的な情報の意味まで変化する。

    参考書を読む。重要な部分や役立つ部分は、 あとで参照するために画面キャプチャしたり、 カメラで撮ったりする。 その行為で記録としては残るけれど、 私の頭に残るわけではない。印象も薄い。

    でも、手を動かして書き直したり、 タイプし直したりすると、変化が始まるようだ。 掛けている時間の問題なのか、 それとも身体を動かすことに意味があるのか。

    よくわからないけれど、 今年は手書きに注目している。

    ただし、画面キャプチャを否定しているわけではない。 キャプチャしておくと、複数の参考書を比較して考えるのに極めて有効だ。 Evernoteで整理しておくと、 自分の関心事にぴったりあったマイ参考書が完成する。

    要は、道具を使いこなせということなんだろうな。

     * * *

    一パーセントの話。

    結城は毎週金曜日にWeb連載「数学ガールの秘密ノート」を更新しています。 更新後24時間は全文無料で読めるのですが、そのURLをツイートしています。

    では、そのツイート経由で何人くらい読んでいるのでしょうか。

    Twitterでは、毎週200から400くらいクリックされています。 また、Facebookでも同程度のリーチがあります。 TwitterとFacebookの両方でダブる人も多いでしょうけれど、 オーダーとしては「毎週数百名にリーチしている」とはいえるでしょうね。

    Twitterでの結城のフォロワーさんは、現在2万数千人いらっしゃいます。 ですから、数百名というオーダーは1%から2%にあたることになります。 結城メルマガの購読者さんの数もそのくらいのオーダーです。

    極めてざっくりした話になりますが、SNSでは、

     「潜在的人数の1%くらいから反応してもらえる」

    と考えるとしっくり来ることが多いです。 「数万人の1%で数百人」ですね。 結城の個人的な感覚としては、ということですが。

    逆に「1人から反応をもらった場合、 同様のことを感じている人はその100倍くらいいるかも」 とも思っています。 つまり、反応してくださった方はその100人の代表者といえる。 ですから、1人の反応もおろそかにしてはいけないな、と思うのです。

    もちろん、Twitterなどで反応してくださった方すべてに対して、 こちらから反応する必要はまったくないのですが、 いつも感謝しつつ、みなさんの反応を受け止めたいと思っています。

     * * *

    面談の話。

    ずいぶん以前の話だけれど、結城も会社勤めをしていたことがあり、 そこでは上司との面談の機会があった。 一対一で話し合い、仕事に関しての要望や意見などを互いに交換する機会である。

    最初の頃は「こんな面談なんて改めてやらなくても、 普段の仕事の中でやりとりすればいいのではないか」と思ったけれど、 やがて「いや、改めて面談するのも意味があるな」と思うようになった。

    普段の仕事の中ではどうしても、差し迫った課題だけが話題に上る。 脊髄反射的な反応や、やりとりが多くなりがちである。 でも、場所と時間を確保して「面談」という形でモードを変えてやると、 時間的に長いスパンを見越した話し合いもできるし、 その話し合いの中で発見することもある。

    ところで、通常の会社では「上司・部下の面談」に時間を使うと思うけれど、 同じように「自分自身との面談」にも時間を使ってみたらどうか、と思った。

    つまり、会議室に一人でこもり、仮想的な自分が、 リアルな自分に対して面談を行うのである。

     「最近、どう?」
     「ここしばらくはこういう仕事だったけど、不満は何かある?」
     「長期的に、こうしたいという要望はあるかな?」

    こんなことを、自分で自分に問いかけてみるのである。 意外に大きな発見があるのではないか。 ポイントは、ばたばたしたところで行うのではなく、 時間をきちんと取り、あたかも本当に問いかける人がいるかのように 振る舞うところだと想像する。

    深いレベルで、心の健康にも役立つように思うのだが、どうだろう。

    よく知らないのだけれど、もしかすると、 GTDなどの「レビュー」にはそういう効果もあるのだろうか。

     * * *

    Twitterの話。

    Twitterの欠点について考えていた。

    Twitterは便利だが、 なまじっか簡単にネットへの書き込みができることから生じる欠点もある。 「自分が普段関心もなく、格段の知識を持っているわけでもない話題」について、 わけ知り顔に言いたくなり、思いついたら即ツイートできてしまう。

    確かにそれはTwitterの欠点だな……と思ったのだが、 よく考えてみると、それはTwitterの欠点というよりは、私自身の欠点であった。 Twitterが悪いというよりは、Twitterは私の欠点を単に増幅しただけである。

    それに関連して、C.S.ルイスのこんな言葉を思い出した (出典が思い出せないので、記憶で書いています。すみません)。

     地下室で急に電灯をつけたらネズミが騒ぎ出した。
     でも電灯がネズミを生んだわけではない。
     電灯は現実を明らかにしただけだ。

     * * *

    動画の話。

    Hiroki Kokubunさん(@cocopon)のツイートから、 素敵な図形(動画)をご紹介します。

     ◆「フラクタル」のスケッチ
     https://twitter.com/cocopon/status/563344622886215681/photo/1

     ◆「フラクタル」のスケッチ ジャギーのかたまり
     https://twitter.com/cocopon/status/563345270243475458/photo/1

    こういう動画というのは、 じっと見ているとパターンが見え隠れして楽しいですね。

    いったい、どういうまとまりがどういう動きをしているのか。 目で形を追いかけているうちに、 頭に何だか新しい刺激が与えられるように感じます。

     * * *

    短歌の話。

    素数が無数にあることの証明を短歌にしてみました。

     無限個の素数はないと仮定してそれらの積に1を加えよ(結城浩)

    なかなか気に入っています。

    簡単に解説します。 素数が無数にあることの証明として、 背理法を用いたものがよく紹介されます。 以下のようなものです。

    素数が有限個しかないと仮定します。 たとえばn個しかないとすると、 素数は、2,3,5,7,...,Pn のようにすべてを並べることができます。

    これらすべての積に1を加えた数Mを考えます。

     M = 2×3×5×…×Pn + 1

    実は、この数Mもまた素数になります。 なぜなら、どんな素数(2,3,5,...,Pn)でMを割っても、 割り切れない(1あまる)からです。

    ところが、Mは素数なのに、2,3,5,7,...,Pn の中には含まれていません。これは矛盾です。

    したがって背理法により、 素数が有限個しかないという仮定の否定である、 素数は無数にあることが証明できました。

    先ほどの短歌(?)はこの証明の鍵になるMの作り方を詠んでいるのです。

     無限個の素数はないと仮定してそれらの積に1を加えよ(結城浩)

    いかがでしょうか。

     * * *

    さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。

    今週は『数学文章作法 執筆編』の第1章「著者の不安」をお届けします。

    執筆するとき、著者は誰しも不安を感じるものです。 書く能力について、書く時間について、そして書く意味について。 今回はそのような「著者の不安」について考えます。

    これまで何回か「数学文章作法のスケッチ」と題して準備運動をしてきましたが、 今回は少し踏み込んで、実際の書籍になる予定の章をPDFでお送りします。

    今後も、執筆編の執筆(ややこしいな)については、 「数学文章作法のスケッチ」というコーナーでお送りし、 実際の書籍になる予定の章についてはPDFでお送りしようと思います。

    それではお楽しみください!

    目次

    • はじめに
    • 数学文章作法 - 著者の不安
    • Q&A - お気に入りのTEDトークは?
    • 十年前の活動を振り返る - 仕事の心がけ
    • おわりに
     
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