Vol.170 結城浩/数学ガールの特別授業(ICUHS編)(2)/学ぶときの心がけ/仕事の心がけ/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年6月30日 Vol.170

はじめに

おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

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新刊の話。

先日刊行をアナウンスした結城の最新刊、

 『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』

の話題です。先週末から早くもアマゾンで予約が始まりました。


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 ◆『暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス』
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797382228/hyuki-22/

ありがたいことに、予約開始早々に、 暗号理論カテゴリでランキング第一位となりました! みなさんの応援に感激です。

原稿の大半は編集部に渡っており、 これから校正作業に入るという状況です。 最後まで気を抜かずがんばりますので、どうぞご期待ください!

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まちがいの話。

先日、国語の教科書に「まちがい」があったため、 出版社が自主的に一万冊を回収するというニュースがありました。

 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150623/k10010124651000.html

小学校一年生の国語の教科書のイラストで、 下書きを消し忘れて、手が三本あるように見えるのだそうです。

教科書がまちがっているのは確かによくないことだし、 出版社としても恥ずかしいことなので回収する気持ちはわかります。 出版社が自主回収することが悪いわけではありません。

でも、その一方でふと思うこともあります。 「人はまちがうものだし、国もまちがうものだ」 ということを伝えるいいチャンスだったのではないかということです。

国語で言葉のまちがいがあったわけではないし、 美術でイラストのまちがいがあったわけではない。 「まちがいましたけど、資源を大切にしたいので、回収しません。 すみませんでした」という解決法ではだめなのかな、と思いました。

まあ、もちろん、まちがいがあるのに「まちがいじゃない」 と抗弁するよりはずっといいと思うのですけれど。

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Twitterの話。

結城はまだ試していないのですが、 Privatter(プライベッター)というサービスに興味があります。

 ◆Privatter
 http://privatter.net/

これは、Twitterのフォロー関係を利用して、 「Twitterのフォロワーさんにだけ見られるテキスト・画像」 を公開できるようにするサービスのようです。

「全体公開・ログイン限定公開・フォロワー限定公開・ 相互フォロワー限定公開・リスト限定公開・パスワード限定公開・非公開」 という七段階の公開範囲が設定可能らしいですね。

テキストや画像を限られた人だけに見せたいという気持ちは確かにあるので、 Twitterのフォロー関係や、ログインの有無などを使うというのは名案です。 そのうち試してみたいものです。

ただ、結城は基本的に「限定公開」に依存した公開方法はとらないようにしています。 その理由の一つは「管理が複雑になるから」です。 「これは誰に見せるか」というのを考え始めると、 複雑なことを覚えておかなくちゃいけなくなります。 頭はできるだけクリアにしておきたいので、 限定公開を使うことは少ないのです。

別の理由として「誰かのミスやバグで公開されると困るから」もあります。 限定公開するということは、 そのサービスに依存して何かを守っているわけですよね。 でもどんなサービスも万全ではない。だから、 万一そのサービスが破綻したとしてもひどいことにならないようにしたい。 そういう気持ちが働くのです。

なので、結城としては「公開なら公開」「非公開なら非公開」 という管理方法がいちばんいいバランスかなと思っています。

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素朴な疑問。

アマゾンの電子書籍(Kindle本)って、 Kindleの機械を買わなくてもスマートフォンやタブレットで読めますよね。 つまり、スマートフォンやタブレットに「Kindleアプリ」があるので、 それをインストールすればふつうに読めます。

この事実は、知っている人にとっては「あたりまえ」のことですけれど、 意外と知られていないようです。 つまり、Kindleの機械を買わないと読めないと思っている人は意外に多い。

アマゾンが積極的にこのことを宣伝しないのは、 Kindleの機械を売りたいからなんでしょうかね。

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イノベーションの話。

会社でも社会でも、本当に有効なイノベーションを起こす人って、 多数から嫌われたり疎まれたり非難されるんじゃないだろうか。 そんなことをふと思った。

イノベーションというのは見方を変えると、 「既存の何か」を壊すわけだから、その「既存の何か」 を頼りにして生きている人は必死で抵抗するはずだ。

会社や社会をちょこっと改善するならみんなニコニコしてくれるかもしれないが、 本気で会社や社会を変えようとする人は多数の抵抗にあう、と想像できる。 みんなから嫌われているから正義の人だとはいえないが、 みんなから嫌われているから悪い人だとも言えない。

大きな改革を行なう人と、 単に破壊だけして終わる人を見分けるのはかなり難しいはずだ。 改革が失敗したらきっと「ほら、やっぱりね」と言われるだろうが、 そう言っている人の反対がなかったら成功していたかもしれない。

紙、印刷機、電話、自動車、インターネット。 何を想像してもいいけど、きっとそれらが世に出始めるとき、 大きな抵抗があったはずだ。

新しいものが常に善とは限らない。 言いたいのは、あとから考えるとあたりまえのものでも、 変化の最中には抵抗があるだろうということ。

イノベーションは良いものとみなされることが多いが、 総論賛成各論反対にあうことも多いはずだ。 多くの人は、そんなに変化を求めていない。

会社や組織で「イノベーションを求める」を掲げるところは少なくないが、 ほんとうにイノベーションを求めているのだろうか、と思うことがある。

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さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。

今回は、

 「数学ガールの特別授業(ICUHS編)」

の第二回目をお送りします。 先日結城が国際基督教大学高等学校(ICUHS)で行った講演を、 読み物形式にしたものです。 「問題と解答」という概念を軸にして、 数学に限らない「考えること」や「学ぶこと」の意味を問いかけます。

では、どうぞごゆっくりお読みください!

目次

  • はじめに
  • 数学ガールの特別授業(ICUHS編)(2)
  • 《問いかけ》について - 学ぶときの心がけ
  • 《問いかけ》を言葉にする意味 - 仕事の心がけ
  • おわりに