第29回 あなたはいわれなき憎悪の圧を受け止められるか?
怠け者なので原稿仕事や勉強する際、適度な緊張感や重圧を求めて喫茶店へ行く。「あの人は勉強してる」という視線を感じるだけで、自意識過剰な私はサボらなくなる。可愛いバイトガールがいれば尚更だ。
先日、職場で資格取得を強要されたときも近所のドーナツ喫茶店で勉強していた。見られてるだけで、股をかくことも鼻をほじることもなくなる。効果的に勉強が出来る。ある日、エミネムを聴きながら勉強に集中している私に重圧をかけるように睨みつけてくる同年代の男に遭遇した。視線には憎悪も混じっていた。うろたえた。見知らぬ男だ。なぜ知らない男から憎まれているのか? 視線には殺意まで混じりはじめていた。身の危険を感じた私は、勉強を早々に切り上げ逃走したのである。
後日、私は出勤前の僅かな時間を有効活用するために件のドーナツ喫茶店を訪れた。臆することはない。私には後ろめたいことはあるにはあるが奴には関係のないところであるのだから。