牌譜
ピンズのホンイツで2pを1枚余らせたイーシャンテン。この視点で観戦すると誰も目にもホンイツが明らかですが、対戦相手の目から見るとどうでしょうか?
視点を変えてみました。南家の印象いかがですか?
第1打が西です。ソーズのターツ落としは入っていますが
ソーズのターツが残っていても、マンズのターツが残っていても
点数状況的に1000点だとしても、2000点であってもおかしくない。
こうなるとだいぶ絞れてきましたが、これでも
4-7mや3-6m、2-5m待ちだって全く否定できないでしょう。
何枚も余らせてるホンイツに放銃するなんて――
という感想は、予め南家の牌姿を知った上でのこと。
つまり「ピンズのホンイツ」ということが心理に刷り込まれているからなのです。
実戦中に必要な技術は、全部見た上での感想ではなく――
自分の捨て牌が他家に対してどのようにみえるか?
を客観的に分析できる技術なのです。
南3局西家・ドラ
打
打は布石でも何でもなく、通常の打牌選択です。
しかし強者は並んでいる自分の捨て牌によって戦略を変えてくるものなのです。
ポン
役牌を1つ仕掛けてこうなりました。こうなったらホンイツ一直線ですが――
捨て牌はこうでした。とすると――
せっかく第1打にを切っているんだから、ホンイツに見えないよう工夫してみようか?
と、後から策を練るわけですね。
しかしここではまだ字牌を切るわけにはいかず、素直にを手放しました。
そしてをツモるとではなくを打ち出します。
この打ち手は「麻雀ライアー 鈴木たろうプロ」です。
こいつこのお方は対戦相手の雀力も考慮した上で、自分の捨て牌がどのような影響を与えるかを考察し、敢えてこのような切り順にしているのです。
最終的にはこの牌姿。南ポン、789pチーのマンガンテンパイです。
リーチと仕掛けに挟まれた金の選択。リーチの現物はだけです。
視聴者のみなさんにはピンズのホンイツが刷り込まれているので、ピンズが余っているホンイツに現物とはいえが簡単に出るわけがないだろう!と思うかもしれません。
【パターンA】
※が手出し チー打
チー ポン
【パターンB】
※が手出し チー打
チー ポン
【パターンA】と【パターンB】
との切り順が1牌変わるだけでだいぶ印象が変わりませんか?
【パターンB】は「ホンイツも十分あり得る」印象ですが
【パターンA】は「マンズのブロックが残っているかもしれない」印象です。
そもそも場に2枚見えのが放銃になるとしたら
シャンポンや単騎待ちなどではなく
チー
この形からの食い伸ばし、つまりくっつきテンパイの形ってことです。
【パターンA】でをチーする前の手出しがでした。
※は雀頭
ここからのくっつきを拒否してを残すことは考えにくいです。
ホンイツだったら十分考えられますね。しかしホンイツならは不要なわけですから
よりものほうが先に打たれそうなものです。
つまりホンイツなら【パターンB】の捨て牌になるでしょうよ という話なのです。
たろうのホンイツをボカす切り順も素晴らしかったのですが
それでも止め、リーチには通っていない初牌のを選択した金も素晴らしかった。
深く読めば読むほど通りそうに見える。本当に打ってもおかしくない牌でした。
決定戦終了後、気になって金にを止めた理由を聞いてみました。
たろうさんのことを本当にリスペクトしてるので止めました
シンプルですが、深く共感できるような回答でした。
南3局、たろうにはもう親番はない。3巡目に役牌の1鳴き。
ラス目とは超僅差ですが、トップ目とは18000点離れた3着目だったのです。
トータルトップ目とはいえ、俺の知っている鈴木たろうが
この点差で簡単にトップを諦めるような仕掛けをするわけがないだろう
Aリーグで、決定戦で
幾度となくたろうと戦ってきた金だからこそ、このが止まったというわけです。
放銃していたら今後の展開が全く違うものになったことでしょう。
それくらい大事な局面での両者見事な攻防でした。