東京拘置所で自弁購入できるパンは、全て山崎製パンのもの。
食パンは「超芳醇」湯捏仕込み6枚入り。一枚163 kcal。
埼玉では消費期限の4日前、東京では5日前の超芳醇が届く。
3月までは205円だったが、消費税8 %の影響により4月から210円になった。栗入り高級つぶあんパンは115円から118円に、メロンパンは110円から113円、ジャム&マーガリンがサンドされたコッペパンの値段はあんパンと同じ。ソントンのジャムは一律に163円から167円に値上がりした。
私が初めて山崎の菓子パンを食べたのは、千葉の留置場で。2010年12月のことだった。
自弁で注文すると、週に2回近くのファミリーマートから届けられた。拘置所と違うのは食べる時間が一日30分と決められていたことだったけど、千葉ではリプトンのミルクティーも一緒に注文出来たので、この点では埼玉よりずっと良かった。
千葉の留置管理下の女性職員たちはやけにフレンドリーで、連日朝から晩まで続く取り調べに
「かわいそうねぇ。何もこんな時間まで呼び出さなくてもいいじゃないの。パンの消費期限は短いから食事のときにおやつを食べていいわよ。課長の許可はとってあるから大丈夫」
と言って、居室にほとんどいない私に朝からミルクティーとメロンパンを食べるという贅沢をさせてくれました。
留置場で食後にチョコレートやビスケットを食べられるなんて、まずないと思います。まぁ、警官が同情するほど苛酷な取り調べだったからですが。
私が千葉の留置場で驚いたのは、女性警官が全員ヤマザキのパンを日常的に食べているということ。姦しい女警たちは
「そのコッペパンは超ロングセラー商品よ」
「ランチパックやナイススティックも知らないの?5個入りの薄皮粒あんパンも?」
「食パンと言えば山崎のダブルソフトですね」
「パスコの超熟もいいけどやっぱり山崎の超芳醇よ」
「山崎と言えばサンロイヤルよねぇ」
という会話を私の部屋の前で延々としておった。
春のパン祭りで集めた白い皿を何枚持っているかという話に至っては、私には何のことかさっぱりわからなかった。 流通パンに疎い私は、山崎製パンが大手メーカーという認識もなく30余年生きてきたわけですが、そんなに有名なのでしょうか。
超芳醇は開封後1日しか美味しさが持ちません。2日目の味の落ち方が半端じゃないのです。これは普通なのかしら。
塀の中ではトースターなんて利器はありませんから、焼かずに食べます。
自由に物を買える人が好んで選ぶ食品を塀の中で購入できることはある意味幸せですが、トーストしないで食べられる期間は1日って短くない?
「冬季処遇終了のお知らせ」 2014年5月2日
年下の彼と年上の彼が2人で面会に来た2日の夜、アナウンスが流れた。
「冬季処遇として実施していた毛布の膝掛けについては、5月7日から使用できなくなりますので注意してください」
東京拘置所の冬季処遇期間長過ぎじゃない?空調のある施設で春に膝掛けなんて必要ないのに。
ところが5月になっても毛布を膝掛けに使っている人がいるのだ。
なぜわかるのかと言うと、職員から「食事中は膝掛けはずしてね~」「毛布は体に巻いちゃダメよ~、膝に掛けるだけにしてね~」と注意されているのが聞こえるから。
食事するときに寝具の毛布を膝に掛けるって不衛生だと思うんだけど、毎日必ず何人も注意されている。埼玉でも同じことを注意されている人がたくさんいた。
暖房のない埼玉ならわからないでもないけれど、拘置所の規則として食事の時間は膝掛け禁止になっている。これは、貸与している毛布を汚されると困るという理由によるもので、私物の毛布を使っている人には関係ない。ところが、私物の寝具を使っている人は食事中に毛布を使わないんだなぁ。
拘置所が貸与する毛布は製造年度が書いてあり、何年も洗わないで使い回されるんです。麻袋と安物のカーペットを重ねたようなゴワゴワした茶色い毛布は、とても使う気になれません。
寝具は、埼玉と東京拘置所で貸与されている物が全く同じ刑務所製。
私は留置場から拘置所に移った時、寝具の汚なさに驚愕し、弁護士さんに「先生!母にッ母にすぐ連絡して布団と毛布を差し入れしてほしいと伝えて下さいッ」とお願いしたもの。
母はすぐに羽毛布団と毛布に、枕と座布団まで送ってくれた。母が女神に思えました。真新しく暖かな布団にくるまって「お母さん、ありがとう」って唱えてました。
接見禁止で自分から連絡できなかったから、感謝の念を送ってました。2009年に初めて留置場で冬を迎えた折に弁護士さんから面会室で「お母さんが留置場は寒くないかと心配されてました」と言われた時も感動した。
あ~母親の存在って大きいなと思いました。
埼玉では、毎年4月10日前後に冬季処遇が終わった。
暖房のない埼玉が東京より冬季処遇の始まりが遅く終わりが早いってどういうことだろう。
東京は、1年中毛布が3枚居室にあるけれど、埼玉は季節によって1~3枚と増減する。天候によって毛布の引き上げ時期は変わり、2011年は5月9日と23日、2012年は5月7日と6月4日、2013年は5月7日と6月3日に1枚ずつ減った。
それ以降、11月上旬まで毛布の所持枚数は1枚になる。私は春になると毛布は全てクリーニングに出し、タオルケットを使っていた。
東拘は、私物でも必ず毛布かタオルケットを3枚所持しなくてはならず、立夏を目前にどうしようか検討中。真夏に毛布は視界に入るだけで暑苦しいですからね。
しかし東拘の寝具管理はひどい。これは人権侵害になると思う。
私は2013年7月30日から東京拘置所で生活しているのだが敷布団乾燥は9月20日と今年の3月17日の2度のみ。毛布の洗濯と掛布団干しは1度もない。
信じられます?
9ヶ月で2回だけですよ!
埼玉は年間通して、天気の良い日は天日に干していた。庭の鉄棒に自分で干すの。太陽の日差しでふっかふかになった布団で寝る心地よさと言ったらもう。拘置所にいること忘れちゃうくらい気持ちが良かった。
あの快感から遠ざかって10ヶ月目。
私物は一切洗濯してくれないのは仕方ないとしても、布団乾燥って留置場でさえ月に1度は必ずあったよ。
警察署では、業者が電気乾燥機でするから一応清潔に保たれている。拘置所の布団の何が不潔かって、カバーがないこと。官が貸与するシーツを使っている人は、2週間に1度しか洗ってもらえないし。それなのに皆、これに甘んじている。
2年半過ごした埼玉の女区で私物の布団を使っていたのは私1人だった。担当の麗子さんに訊いたら、布団を差し入れてもらった人は記憶にない、毛布やタオルケットをクリーニングに出すのはあなただけよ、と言われた。
私の感覚がおかしいの?
東拘では布団干しをするのはケーリさんで、各居室から集めた布団を台車に重ねて運んでいるのを見ると、官物しかないんです。私物の布団は1枚もなかった。カバーもつけず年に2度しか干さず、使い古されたどう考えても不衛生な布団を使わせるって人権問題じゃありませんか?
経済的な事情や差し入れを頼めない人のことを考えると、これは拘置所サイドが改善すべき問題だと思います。
埼玉の女区での布団干しの頻度は、天候より麗子さんの気分次第でした。
「毎日干してあげたいのは山々なんだけど忙しくって~」と言ってました。
すっごく晴天の日に「布団干し日和ですよ」って言ったら、私の布団だけ干してくれたこともあった。私が自分で担いで庭まで運ぶんですけどね。東拘はそんなサービス精神ゼロだから、布団を買い替えるしかなくてとても不経済。
人権団体って色々あるけど、寝具問題に取り組んでいるという話は聞いたことがない。
仮就寝を含めると、平日でも14時間は布団を敷いて過ごす拘置所において、寝具の質は重要です。暖房のない埼玉は布団で暖を取るため、冬季処遇に入ると平日は17時間、休日は23時間近く布団を敷いていることが出来るのです。
東京拘置所でもほとんどの人が、夕方の5時になると布団を敷いています。寝具問題は改善されるべきと思うのですが。
勾留されている人間は思考力が弱ってしまうので、何が正しいことなのか、何を求めるべきかわからないことが多い。
あなたの身近な人が勾留されたら、まず寝具と衣類を差し入れてあげてほしい。
清潔で質の良い物を身につけることで、心身が安定します。暑さや寒さに考慮して、機能性の高い物を選んであげてほしい。
私は否認事件の被告人でありますが、拘置所生活で人間が更生するにはどのような支援が必要か、という観点から考え、塀の外の人たちに伝えていきたいと思っています。