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木野龍逸の「ニッポン・リークス」
                   2016/2/1(No.038)
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[目次]
1.東電福島第一原発事故トピック
【No.38】経産省が動画「福島の今」を公開──課題に触れず安全安心を強調
2.メルマガ後記
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1.福島第一原発事故トピック
経産省が復興ビデオを公開──課題に触れず安全安心を強調

<安全、安心、廃炉作業の進展をアピール>
 経済産業省と内閣府原子力被災者生活支援チーム(ほぼ経産省からの出向者で構成)は1月28日、動画で知る福島の現状「福島の今」をwebサイトで公開した。同日、経産省資源エネルギー庁は記者レクを実施し、動画について説明。情報発信を強化する方針を示した。

動画「福島の今」
https://www.youtube.com/watch?v=WlimIcWwyCk&feature=youtu.be
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/index.html#movie

配付資料
https://drive.google.com/file/d/0B5jyJeiqBSmLVkNzY010R2thcEk/view?usp=sharing

 この映像を見てみると、福島第一原発の事故収束作業(国は「廃炉に向けた取り組み」と表現)が順調に進み、燃料デブリ取り出しへの課題も大きくはなく、福島県で実施している県民健康調査では健康影響は確認されておらず、復興が加速しているという印象を強く受ける。

 なぜそう感じるのかというと、現状の問題点や課題に、ほとんど触れていないからだ。

 例えば汚染水対策では、凍土遮水壁の運用開始が遅れていることや、海側遮水壁の閉合によって汚染水の発生量が増加していることには触れていない。

 燃料デブリの取り出しに向けた作業については、米国スリーマイル島原発事故を引き合いに出し、格納容器内にロボットを投入したのが同事故より1年半も早かったと紹介しているが、2号機のロボット調査が当初の昨年8月開始より大幅に遅れて、現在は開始時期の見通しが立っていないことは説明していない。

 さらにいえば、スリーマイル島原発事故ではロボット投入から約1年後には燃料デブリの取り出しを開始している(http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sochi1/siryo3.pdf)。一方、今年4月に、福島第一原発は1号機へのロボット投入から1年が経過するが、ほとんど進展が見られない。