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木野龍逸の「ニッポン・リークス」 2020/12/2(No.74)
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【No.74】不思議な展示内容の伝承館は誰のため?
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<放射能汚染地域を通って伝承館へ>
9月20日、福島第一原発が立地する福島県双葉町に「東日本大震災・原子力災害伝承館」がオープンしました。
伝承館の建設費は約53億円。けれども開館前から、展示内容を議論していた会議の議事録が黒塗りで公開されたことが報じられたほか(2020年8月25日付朝日新聞)、開館直後には伝承館で東日本大震災や原発事故の実情を伝える「語り部」の人たちが参照するマニュアルに国や東電を含む「特定の団体」の批判などをしないよう書かれていたこと(2020年9月22日付朝日新聞)が明らかになるなど、ドタバタの状態が続いていました。
ではいったい、どんなものが展示されているのか。10月上旬に見に行ってみました。
伝承館の場所は、双葉町の駅から東に向かって約2キロメートルの、今は広大な空き地になっている津波被災地の中にあります。隣には地上4階建ての双葉町産業交流センターが建っています。
伝承館も産業交流センターも、周辺に何もないため(放射性廃棄物の仮置き場や、海岸沿いの防潮堤工事しか見えません)に建物が目立つことを含めても、かなりの大きさです。
ちなみに産業交流センターは、3階と4階に東京電力の福島復興本社が入居します。福島復興本社は富岡町にあったのですが、産業交流センターの開館に合わせて移転しました。中にはフードコートも併設されていて、浪江町役場の横にあった浪江焼きそばも、ここに転居した聞きました。私が行ったときには交流センターのオープン前日で、食べることはできませんでしたが。
伝承館に行くには、双葉駅からバスか、歩くか、車で行くかになります。バスは双葉駅~産業交流センターの間を電車の時刻に合わせて1時間に1~2本、運行しています。
双葉駅から東に向かって進むと、かつて「原子力 明るい未来のエネルギー」の看板がかかっていた道を通って、国道6号線を渡り、双葉厚生病院(避難にあたって多数の死亡者が出た大熊町の双葉病院とは別)を横目に見ながら東に進みます。
双葉駅は、富岡町の夜ノ森駅や大熊町の大野駅などと一緒に、2020年3月4日に避難指示区域が解除されました。といっても、駅に通じる道路が解除されただけで、周辺の街区は立ち入り禁止のままです。政策的に駅周辺だけを解除したことがよくわかります。
そんな状況なので、放射線量率はまだ下がっていません。双葉厚生病院の横にあるモニタリングポストは、私が行ったときには1.7μSv/hを表示していました。目立つ場所なので除染をしていると思うのですが、それでもこの程度はあります。東京の空間線量率は新宿で0.0336μSv/h(12月2日)なので、ざっと50倍です。
<地元の人もびっくりのプロローグ動画>
そんな放射能汚染の中を通って、さらに東の海の方に向かうと、伝承館や産業交流センターの建物が見えてきます。国道6号線から東側は特定復興拠点なので、道路の整備が進んでいます。何もない場所にきれいな道路だけがある、なんとも奇妙な光景です。
伝承館でまず驚いたのは、駐車場の広さです。HPによれば、乗用車110台、大型バス10台が止められることになっていますが、1台分のスペースに余裕があるのか、それ以上に広く感じます。
いよいよ伝承館の中に入りますが、まずは入館料、600円を払います。けっこうなお値段です。比べるのもおこがましいですが、広島の平和記念資料館は、入館料200円です。あの充実した展示内容で、200円です。600円なら、どれだけすごいものになるのでしょうか。ドキドキです。
伝承館のHPによれば、目的は「福島だけが経験した原子力災害をしっかり伝えること」です。はたしてそうなっているのでしょうか。
入館すると、まずはプロローグとして、床や壁に設置された7面の大スクリーンで約3分の動画を見ます。福島第一原発が運転を開始し、日本の成長を支え続けたけれども、震災の津波で全電源喪失になり水素爆発。それ以降、地域住民はみんな一所懸命に努力しているものの、今はまだ復興半ばにあるという経緯が紹介されます。
半世紀以上の経緯を、原発事故まで含めて3分で流すので、ものすごく駆け足です。終わった時、私の前に座っていた地元の人らしきおじいさん、おばあさんグループ3人が、「え?」と言って顔を見合わせていたのが印象的でした。
原発の建設時から、地元は賛成反対に分かれてたいへんな苦労をしてきました。そうした負の側面にはまったく触れていません。慎重に、原発に対する批判を避けているような印象を受けました。
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