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恐怖! 多くのゾンビ物のモデルとなった実在のウイルスとは?【コタクベスト】
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恐怖! 多くのゾンビ物のモデルとなった実在のウイルスとは?【コタクベスト】

2013-09-23 10:30
    多くのゾンビ物のモデルとなった実在のウイルス


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    2012年6月28日公開記事を、編集・修正して再掲載します。
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    ほんとの病気がいちばん怖い。

    ポップカルチャーで不動の人気を誇るゾンビ物。ゾンビが出現する理由は黒魔術から謎の衛星までさまざまですが、人をゾンビのような何かに変えてしまうものへの恐怖は何千年も前から存在していました。

    噛みつき、光への恐怖、言葉の喪失、そして凶暴性。映画に出てくるたいていのゾンビが持つこれらの特徴は、ある病気の症状と同じもの。

    その病気とは、狂犬病です。では多くのゾンビウイルスのモデルとなった狂犬病とはどんな病気で、どのような点がゾンビウィルスと似ているのでしょうか? 詳細は以下より。
     


    【大きな画像や動画はこちら】

     
    狂犬病ウイルス


    狂犬病のウイルスは弾丸のような形をしており、唾液等の分泌物を介して伝染します。体内に入るとウイルスは神経網を伝って拡がっていき、最終的に脳に達して上記のような恐ろしい症状を引き起こします。

    実は狂犬病には、麻痺の症状が強く現れるタイプと、患者が凶暴化するタイプの2つがあります。麻痺性の場合は他の病気でも見られるような言語障害、身体機能の低下、麻痺、意識障害等が主な症状のため、診断が難しいそう。一方、凶暴性の狂犬病はウイルスに感染した動物の約半分、人間では3分の2のケースで発病し、ホラー映画のゾンビの元となっているのはこの後者です。

    ウイルス感染後1週間から時には数年にもおよぶ潜伏期間の後、凶暴性狂犬病を発病した患者は突然平常心を失い、異常に活発になります。自分や周りのことがわからなくなり、意識もあいまいになって、それと引き換えに凶暴性が増していきます。まだ症状が穏やかなうちは、イライラして周囲の人に当たり散らすだけかもしれません。活発で落ち着きがなく、誰にでもすぐに腹を立てるようになります。

    そして症状が進行するとさらに攻撃的になり、周囲に危害を加え始めます。たとえばインドのある患者は凶暴になりすぎたため、病院の職員が避難して警察を呼び、消防団が押さえ込んで鎮静剤を与える必要があったそうです。

    これは患者のせいではありません。彼らはわざと誰かを傷つけようとしているわけではないのです。狂犬病ウイルスは一般的に、患者の恐怖心を増大させる作用があります。その顕著な例が水への恐怖(恐水症)。ゾンビ映画でこの症状は出てきませんが、狂犬病患者は水を異常に怖がるようになります。以下の動画の男性は恐水症を発症しており、コップの水を口元に持っていくのも困難なようです。



    先のインドの患者が攻撃的になったのは、看護師が患者に水分を補給させようとしたことが原因でした。

    この他の症状は映画に出てくるゾンビの特徴とよく似ています。患者は明るい光や風にあたるのを怖がり、暗闇や密閉された空間に隠れたがります。言葉を発しなくなるのは、自分自身の声を怖がっていることにも原因があるようです。凶暴性の狂犬病で最もひどい症状になると食欲にも異常が現れ、動物では小枝や石を食べた例が報告されています。また、噛みつきに抑えがたい衝動を感じるようになり、科学者はこれはウイルスが新しいホストへの感染を拡げようとするために起こると考えています。

    ゾンビ映画ではこの噛みつきが生死の分かれ目。たった1回の噛みつきは意識のある人間としての死を意味し、言葉も、意識も、暴力的な衝動を抑える理性も失って、噛み付く相手を求めてさまよい続けるゾンビとなるのです。

    ワクチン接種と速やかな治療が可能な先進国では、狂犬病はそれほど大きな問題ではありませんが、全世界では今でも毎年6万人の命が奪われています。感染後の早い段階であればワクチンで発病を抑えて治療できますが、本格的に症状が現れてから、つまりウイルスが脳に達してからは、治る見込みはほとんどありません。記録にある限りで感染後すぐのワクチン投与なしに回復した例は、世界でも米ウィスコンシン州の15歳の少女の1例のみ。少女は医師により意図的に昏睡状態にさせられた上で、抗ウイルス薬を投与されたそうです。

    映画のゾンビの描写は、言葉も正気もなくし、凶暴化する狂犬病の症状を極端にしたようなもの。町の住民のほとんどが狂犬病ウイルスに感染してしまったとしたら、それこそゾンビ映画のような悪夢が起こりうることを示しています。

    また、映画はゾンビに襲われる恐怖だけでなく、自分が感染者となったときの恐怖も描いています。主人公自身がゾンビに襲われて、いつゾンビ化するかわからない、なんてストーリーがたまにありますよね。狂犬病患者は発病して錯乱や凶暴化の症状が出た後でも一時的に正気を取り戻すことがあり、その間は症状も多少やわらいで、他の人と会話したりできるそう。しかし同時に、また近いうちに自分が自分でなくなる恐怖と戦うことになるのです。

    それはゾンビよりもずっと怖い、実在する病気の本当の怖さです。

    参考:Scientific AmericanWadsworthMumbai MirrorWHONY Times


    The Virus that Inspired the Whole Zombie Genre [io9]

    (さんみやゆうな)

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