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【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 第五話第四章「主人との再会」
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【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 第五話第四章「主人との再会」

2022-10-13 11:34
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    第五話第四章 主人との再会


    著:古樹佳夜
    絵:花篠

    [本作に関する注意]---------------------------------
    本作(テキスト・イラスト含む)の全部または一部を無断で複製、転載、配信、送信、譲渡(転売、オークションを含む)すること、あるいはSNSなどネット上への公開・転載等を禁止します。また、内容を無断で改変、改ざん等を行うことも禁止します。
    -----------------------------------------------------

    ◆◆◆◆◆不思議堂◆◆◆◆◆


    吽野 「ふう、やれやれ。これで元通りだね」

    吽野は安堵の息を漏らした。
    盗まれた品は全て不思議堂に戻った。
    今回のことは災難だったが、盗人は先ほど捕まったし、
    商品も無傷であったから、よしとしよう。
    そう自分に言い聞かせ、荷解きを始める。

    店内は散乱したままだったが、早々に片付け始めれば
    明後日にはまた不思議堂を開店できそうだ。
    もちろん、阿文も片付けを手伝ってくれるだろう。
    吽野はそのつもりで算段をしていた。

    ところが、

    阿文 「……なんだか、目眩がする」

    そう言った阿文は足元がおぼつかなくなり、
    床の小さな段差でつまずいた。


    吽野 「おっと」

    吽野は転びそうになる阿文を咄嗟に受け止めた。
    そして、いつも腰掛けている籐の椅子に座らせた。

    吽野 「阿文クン、大丈夫?」
    阿文 「ああ」

    阿文はうなだれていた。

    阿文 「疲れたのかもしれない。大捕物だったし」

    一言返すだけなのに、やけに緩慢な様子だった。

    吽野 「捕物をしたのは俺なんだけどね!」
    阿文 「まあ、それはそうだが……」

    吽野は冗談めかした口調で、
    阿文に言い返されるのを待っていた。
    いつも通り軽妙に返してくれると踏んでいたのだ。
    ところが、とうの阿文は笑うこともなく、ぼんやりしている。
    『僕だってあんな場所に付き合わされて、たまったもんじゃない』とか
    普段通りであるならば文句の一つも出そうなものだ。

    吽野 「阿文クン? おーい」

    吽野は阿文の前で掌をひらひらとさせる。
    ようやく、阿文はハッと正気付いた。

    阿文 「すまない。ぼんやりしていた」
    吽野 「ほんとにねぇ。どうかしちゃったの?」
    阿文 「うーん。頭が痛いような。あの場所、空気が悪くて……」
    吽野 「そうだった?」
    阿文 「先生は感じなかったのか?」
    吽野 「……あんまり?」
    阿文 「そうか」

    阿文はそう言ったきり、
    目頭を押さえて、また具合が悪そうに項垂れてしまった。
    言われてみれば、帰り道でも返事が単調で
    朦朧としていたかもしれない。

    吽野 「お風呂に入って、早めに眠ったら」

    吽野は阿文を心配し、肩を叩いて促した。

    阿文 「ああ。そうさせてもらう」

    阿文は勧めに応じ、店の奥へと引っ込んだ。
     
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