「パパママ、笑って!」
 娘からいきなりそう言われた。三人で食事をしていたときだっただろうか。朝の支度をさせていたときだったろうか。ほんの数日前のことなのにもはやどんなシチュエーションだったのかも思い出せないくらい娘の言葉だけが際立って衝撃的だった。覚えているのは瞬時に妻と顔を見合わせたことだ。僕らは鏡で自分の顔を見るように、お互いの顔を確かめ合っていたんだと思う。喧嘩をしていたわけでもなかったし、機嫌だって悪くなかった。なのにどうして、と。