冬晴れの午後、補助輪のついた自転車が納車された。
「明日から天気が悪いみたいなので一日早く持ってきちゃいました」
 自転車屋のおじさんがそう言って笑った。白か、赤か、紫か、それとも水色か。迷い続けた娘に根気よくつきあってくれた。ぼくも妻もあえてなんの助言もしなかった。娘が自分で決めるのをひたすら待ち続けた。
 仕事を切り上げ、いつより少し早く保育園に娘を迎えに行く。明日から雨だからという自転車屋さんのご厚意を無駄にしたくなかった。