夏の畑は戦争だ。梅雨の晴れ間が夏日に重なるとあっという間に群生した背高泡立草に侵略される。赤ん坊が泣き叫んでいるような秩序のない生命力。噎せ返るような湿気の中でぼくはその命を一本ずつ手で抜いて駆逐していく。抜いても抜いてもまた生えてくる。ベトナム戦争のような泥沼の戦いは夏の間中続く。

 畑の秩序を保つために農薬を使う人も少なくない。いや、むしろ使っていない方が少ない。除草剤を使うと雑草だけが根絶やしになる。野菜だけは生き続ける。同じ植物なのに駆逐される生命されない生命がある。人間にも害はないという。推測だが、