娘の自転車の補助輪を外したのは八月の最終週だった。計画的なものではない。朝、海辺で自転車を走らせていたらパンクした。その日の午後、逗子の自転車店に修理に向かう途中で衝動的に思いついたのだ。
「どうせだから補助輪取っちゃおうか?」
「えー!」
 娘にとって青天の霹靂だったのは間違いない。