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マクガイヤーチャンネル 第175号 【『デッドプール2』と『万引き家族』の共通点】
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マクガイヤーチャンネル 第175号 【『デッドプール2』と『万引き家族』の共通点】

2018-06-13 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第175号 2018/6/13
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    おはようございます。マクガイヤーです。

    前回の放送「『デッドプール2』とXフォース」は如何だったでしょうか?

    御代しおり先生による原作解説が1.5時間、更に自分が担当した映画解説が1.5時間と、合計3時間に渡る充実の放送となりました!

    虹野ういろうおじさんを加えて3人で放送したこともあり、なんだか華やかさもあったような気がします(笑)。


    マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。


    ○6月30日(土)20時~

    「しまさんとマクガイヤーの推しNetflix」

    Netflix、Hulu、dTV、U-NEXT、Amazonプライム・ビデオ……と、様々な動画配信サービスをネットで愉しむことができる昨今ですが、大きな問題があります。

    それは、「配信されるコンテンツが多すぎてどれから観れば良いのか分からない」もしくは「面白いコンテンツを見逃してしまう」といった悩みです。

    そこで、編集者のしまさんとマクガイヤーが、Netflix配信ラインナップから独断と偏見で「推し番組」を紹介し合い、魅力を語り合います。

    久しぶりのしまさん出演回です。乞うご期待!



    ○7月7日(土)20時~「最近のマクガイヤー 2018年7月号」

    最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。

    詳細未定



    ○7月28日(土)20時~「ゾイド大特集」

    2018年6月より、久しぶりの「ゾイド」新シリーズである「ゾイドワイルド」の展開がアナウンスされています。6/23頃から新しいキットが発売される共に、7/7より新アニメ『ゾイドワイルド』も放送されるそうです。

    ゾイドといえば昭和の一期と平成の二期それぞれで大人気を誇ったシリーズですが、いよいよ復活して三期目の歴史を紡ぐことができるのかどうか、メカボニカやスタリアスの頃から親しんでいた自分としては、気が気ではありません。

    そこで、これまでのゾイドの歴史を振り返ると共に、ゾイドの魅力について語る放送を行ないます。

    今回は主に昭和ゾイドについて語ることになります。

    ゲストとして、YouTube動画などで活躍しているじろす(https://twitter.com/jiros_zoids)さんに出て頂く予定です。

    虹野ういろう(https://twitter.com/Willow2nd)おじさんもきっとまた出てくれるよ!





    ○Facebookにてグループを作っています。

    観覧をご希望の際はこちらに参加をお願いします。

    https://www.facebook.com/groups/1719467311709301

    (Facebookでの活動履歴が少ない場合は参加を認証しない場合があります)



    ○コミケで頒布した『大長編ドラえもん』解説本ですが、↓で通販しております。ご利用下さい。

    https://yamadareiji.thebase.in/items/9429081





    さて、今回のブロマガですが、放送後に観た『万引き家族』『デッドプール2』の共通点について書かせて下さい。



    『デッドプール』とは

    アメコミ映画なのにR指定、主役はスーパーヒーローなのにすぐ残酷に人を殺すし、分かりにくいギャグやジョークや映画のパロディ満載、すぐ第四の壁を破って観客に話しかける……とふざけ放題やりたい放題に思える映画『デッドプール2』ですが、本質的には真面目な映画です。


    そもそも前作『デッドプール』の時点で、真面目な映画でした。

    アメコミ映画の第一作には「もうベンおじさん死ぬとこみたくない問題」というか「ヒーロー誕生の描写に時間を割くとかったるい問題」があるのですが、上手く時間を巻き戻すことでテンポの良い映画になっていました。この構成はMCU最初のヒット作となった『アイアンマン』や『デップー2』だけでなく、出来の良いアクション映画に共通する「型」の一つですね。


    常にメタなギャグやジョークを口にするデッドプールですが、ストーリーはシンプルです。

    刹那的な生き方をしていた傭兵ウェイド・ウィルソンは、ある日「黄金の心を持った娼婦」であるヴァネッサに出会います。たちまち恋におち、人生の愉しさに目覚めるウェイド。しかし、突然意識を失い、末期がんであることが発覚します。

    いかにも怪しい人物の誘いに乗って、人体実験と引き換えに驚異的な治癒能力を得るウェイド、おかげでがんどころか死ぬ心配すら無くなりましたが、引き換えに全身に潰瘍ができたような醜い姿になってしまいます。

    「アボカドと腐ったアボカドがセックスしたような」「フレディとユタ州の地形図がセックスしたような」醜い顔です。

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    ちなみにユタ州は奇岩が多い渓谷や荒野の州として有名です。『127時間』の舞台でもありましたね。

    デッドプールは、こんな自分をヴァネッサが受入れてくれるのかどうか悩み、元の姿に戻ろうと奮闘します。

    つまり

    「醜い顔をした自分が愛するヒロインに受入れられるかどうか」

    が映画後半における最大のストーリーラインであり、主人公が行動する動機になるのです。



    ●『デッドプール2』とは

    『デッドプール2』では監督が代わり、ギャグやパロディやアクションが増量されたましたが、テンポも更に良くなりました。しかし「本質的には真面目でシンプルな映画」という骨格は踏襲されています。

    今回のデップーは、冒頭で最大級の憎しみを抱え、「復讐」を果たします。しかし、憎しみは解消されても、埋められない喪失感が残ります。そこで、誰かを助けることで喪失を埋めようとするのです。

    この「誰か」が手から炎を出すデブ少年ラッセルくんなのですが、(アメコミにありがちな)歴史改変と憎しみからラッセルを殺そうとするケーブルも、結局はデッドプールを助けます。憎しみから闇落ちしかけたラッセルもまた、自分を助けてくれたデップーの仲間となります。最後は皆で擬似家族のような関係になります。三人が三人とも憎しみを乗り越えることで、失った「家族」を手に入れるのです。デップーはあんなにサクっと人を殺すのに、なんてピースフルな映画なのでしょう!


    更に、ラッセルが憎しみを抱いていた理由も重要です。

    直接的には、自分を虐待していた養護施設の職員や理事長への憎しみですが、では何故この世界に「ミュータント児童養護施設」や「ミュータント用刑務所」が存在しているのでしょうか?

    それは、本作がどれだけふざけ放題やりたい放題にみえようと、他の「X-MEN」シリーズと同じく、ミュータントが差別され、排斥されている世界だからです。や、児童養護施設でのニュースキャスターが象徴的なのですが、一般人がミュータントに注意を払わず、同じ人間として扱わず、無視しているようにみえる分、他の「X-MEN」シリーズよりもミュータントに対する排斥と管理が進んだ世界のようにさえみえます。「X-MEN」が差別やそれに抗する社会運動をテーマとしていることは有名ですが、どれだけふざけていても映画『デッドプール』は同じテーマを引き継いでいるのです。


    また、原作コミックにおけるデッドプールは(売り上げに反して)あくまでもB級ヒーローです。デップーがアベンジャーズやX-MENといったA級ヒーローチームに所属してシリアスな地球や宇宙の危機を救うという展開はありえず、グレート・レイクス・アベンジャーズやX-FORCEやサンダーボルツといったB級チームに所属し、笑いをとったり汚れ仕事に従事したりします。デップーが世界の危機を救ったとしても、それはギャグの一つという意味でしかありません。

    そんな『デッドプール』を生真面目に映画化するという点に、プロデューサーを務めるライアン・レイノルズの気概が溢れているではありませんか。



    ●『万引き家族』とは

    柴田家は東京の下町で暮らす5人家族です。樹木希林演じる祖母の年金、リリー・フランキー演じる父の日雇い労働、安藤サクラ演じるクリーニング店で働く妻の月給だけではやっていけない柴田家は、家族ぐるみで万引きをしていました。

    ある時、柴田家の父は、冬の寒空の下、団地の廊下で震えていた5歳の女の子をみつけます。明らかに虐待を受けている女の子をみかねた父は、家に連れて帰ってしまうのでした……

    ……というのが映画『万引き家族』の冒頭になります。


    『万引き家族』は是枝裕和にとっての集大成というか、横綱相撲のような映画です。

    『誰も知らない』では親に見放された子供たち、『奇跡』では両親の離婚により離ればなれに暮らす兄弟、『そして父になる』では血の繋がらない子供を持ってしまった二つの家族、『海街diary』では腹違いの妹を含めた親のいない姉妹、『海よりもまだ深く』では離婚により離散した家族……と、これまで是枝裕和は血縁によらない様々な「家族」を描いてきました。樹木希林とリリー・フランキーはその「家族」の常連です。

    妹を演じる松岡茉優と安藤サクラは是枝作品初参加となりますが、現在の邦画界において各世代を代表する名優と呼んで差し支えないこの4人が一同に介して「家族」を演じると共に、脚本をみせず自然な「演技」を引き出す是枝演出による子役たちがこれに対抗する、演技合戦というにはあまりにナチュラルな役者同士のぶつかりあいがこの映画最大の魅力の一つです。

    5歳の娘の歯が抜けるシーン、妻と息子がラムネを飲みながら語り合うシーン、妻と妹がお互いのパートナーについて語り合うシーンなど、意味するところが重大であるにも関わらずウソみたいに自然なシーンが何度も何度も出てきます。これらはすべて、これまで是枝裕和がやってきた演出や現場の雰囲気作りの積み重ねと、一流の役者からの信頼性あっての賜物です。情報の出し方の巧みさや台詞に頼らない心理描写も相まって、これこそが横綱相撲なのだなと唸るほかありません。




    以下、ネタバレですが、なるべくネタバレしないように書きます。


     
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