おはようございます、マクガイヤーです。
先週末は御蔵島でイルカと泳ぎ、人生の洗濯をして参りました。
一年ぶりのドルフィン・ウォッチングは相変わらず楽しかったのですが、イルカの眼をみた後輩が「綺麗だけど虚無」と名言を吐いていました。イルカの眼はきれいだけど虚無、ガンガン使っていきたいところです。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
○4月21日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2019年4月号」
・最近のコブラ
・平成AV私史
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
○5月5日(日)19時~「『アベンジャーズ/エンドゲーム』とアメコミ映画のひみつ(仮)」
『アクアマン』、『スパイダーバース』、『キャプテン・マーベル』、『シャザム』……と、今年も大作アメコミ映画が沢山公開されています。しかも嬉しいことに、どの作品も面白いです。
そして4月26日、ついに『アベンジャーズ/エンドゲーム』が公開されます。『アイアンマン』から10年以上にわたって展開してきたMCUシリーズに一つの区切りがつくであろう本作の公開に合わせて、今年のアメコミ映画を解説するような放送を行ないます。
ゲストとしてアメコミ翻訳家の御代しおりさん(https://twitter.com/watagashiori)に出演して頂く予定です。
○5月19日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2019年5月号」
詳細未定。
いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
○6月前半(日時未定)「漫画家漫画のメタとネタ(仮)」
『バクマン』、『アオイホノオ』、『かくかくしかじか』……ゼロ年代の後半以降、漫画家を目指す過程や道程をテーマとした漫画――「漫画家漫画」の名作が次々と誕生しています。中には知名が低かったり、それとは気づかない形で発表されていたりする「漫画家漫画」も存在します。
そこで、「漫画家漫画」の成り立ちや意味合い、個々の作品の魅力について紹介するような放送をお送りします。
ゲストとして編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)に出演して頂く予定です。
○文学フリマに出店します。
5月6日に東京流通センター第一展示場にて開催される第二十八回文学フリマ東京に出展します。
藤子不二雄Ⓐ作品評論本を売る予定です。ブースは「オ-5」です
○『やれたかも委員会』に取材協力しました。
『やれたかも委員会』(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)の「童貞からの長い手紙」に取材協力しました。単行本1巻分のエピソードになるそうです。
ちなみに基になったお話はこちら
https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063
さて、今回のブロマガですが、藤子不二雄Ⓐと弁当について書かせて下さい。
●『恐妻カズヨ氏の元気弁当』
昨年末、藤子不二雄Ⓐによる語りおろしエッセイ『恐妻カズヨ氏の元気弁当』が編集作業中であることがアナウンスされました。
本ブロマガをお読みになっている人にとっては常識だと思いますが、Ⓐは肉と魚が食べられません。ヴィーガンのような宗教的・思想的理由からではなく、実家がお寺で幼いころから精進料理ばかり食べていたため、肉や魚を食べない習慣が身についてしまったのです(だから、卵や牛乳は食べるそうです)。つまりⒶは偏食です。
そんな偏食のⒶのために、ワイフの和代(カズヨ)さんは毎日、愛妻弁当をつくり続けています。『妻たおれ夫オロオロ日記』に書かれた通り、カズヨ氏が脳出血で倒れ、左半身麻痺や失語症を患った後もずっと、結婚してから現在までずっとです。
およそ五〇年にわたる弁当生活ですが、Ⓐはそのまま食べてしまうのが勿体無く感じ、食べる前に写真を撮ったり、スケッチを描いたりしています。Ⓐはこのことについてあちこちのエッセイやインタビューで語っていますし、『PARマンの情熱的な日々』2巻の巻末にはスケッチの一部が収録されていますので、ご存知の方もおられるかもしれません。その写真やスケッチや語りおろしエッセイから成る本が発売される――楽しみなのは自分だけではないはずです。
ただ、Ⓐが八五歳を迎える二〇一九年三月ころの出版を目指しているとのアナウンスだったにも関わらず、四月も半ばを過ぎても未だ出版されていないのは気になるところですが……
Ⓐと弁当といえば、真っ先に頭に思い浮かぶのはブラックユーモア短編『明日は日曜日そしてまた明後日も……』の弁当でしょう。
以前本ブロマガで紹介したとおり(https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1497897)引きこもりやニートを予見した名作ですが、会社に出社できずに母から渡された手作り弁当を公園で食べざるをえない主人公 田宮坊一郎の寂しさがたまりません。またこの弁当、タッパーに入れたローヤルゼリーや、好物の大福餅つきという過剰さです。母の愛が詰まりに詰まっているわけですね。
この愛の詰まった弁当を、会社ではなく公園で食べ、出社したフリをして帰宅することに主人公は罪悪感を抱いているであろうことを読者は想像してしまうわけです。つまり、主人公は母の愛を無駄に、裏切ってしまうことに『明日は日曜日そしてまた明後日も……』の切なさがあるわけです。
●『愛たずねびと』の弁当
同様に「公園で弁当を食べて出社したフリをする」シーンがある作品といえば、『愛たずねびと』の第2エピソード「柳川秋也(サラリーマン・25歳)のケース」が挙げられるでしょう。
主人公である優子と結婚した秋也は、優子が作った風呂敷包みの弁当を「ぼく、愛妻弁当をもってくことにあこがれてたんだよ!」と嬉しそうに受け取り、家を出て行きます。優子に黙って会社を辞めた秋也は、わざわざ電車に乗って新宿に行き、新宿西口公園のベンチでひとり弁当を食べます。
不審に思った優子は秋也を尾行するのですが、優子がみたのは寒々とした平日の新宿と孤独な秋也でした。
「夜ともなれば雑踏する歌舞伎町も
午前中はしらけきって人影もない」
「どこへもいくあてがなく
公園のベンチでひとり
あたしのつくったお弁当を食べている秋也さんは
……そんな秋也さんは
まるで哀れな捨て犬のようにみえました……」
『明日は日曜日……』の坊一郎と違うところは、母ではなく妻から貰った弁当だということです。母ではなく妻の愛を裏切っているわけですね。また、場所が新宿西口公園と具体的なのですが、Ⓐ(とF)の仕事場である藤子スタジオの目と鼻の先に設定したところに、えもいわれれぬリアリティを感じてしまいます。
●『笑ゥせぇるすまん』と「弁当戦争」
母と妻の愛が同時に弁当に象徴され、弁当を通して代理戦争が行われる……そんなお話が『笑ゥせぇるすまん』にはあります。
アニメ化もされた「弁当戦争」がそれです。
27歳にして母親と同居している独身サラリーマン甘江正雄は母親に溺愛されています。勿論、愛の象徴である弁当を毎朝正雄に渡し「お弁当を作るのが生きがい」とのたまいます。正雄もそんな母親のことを愛しており、「ぼくはこのお弁当を食べるために会社へいってるようなものだから」と応えるさまは、多少マザコン気味だけれども愛に溢れた母子の姿そのものです。
しかし正雄には秘密がありました。お昼休みに公園でOLの彼女キミコと遭い「お弁当デート」をしているのです。
「お弁当デート」とはなにか? それは、キミコが作ってきた弁当を食べ、キミコは正雄が持ってきた正雄の母の弁当を食べるという、とんでもないプレイじゃなかったデートでした。