おはようございます、マクガイヤーです。
先日の放送「『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』公開記念、神と怪獣と人間のトリニティ」は如何だったでしょうか?
ニコ生の調子が悪く、YouTube ライブでの放送となりましたが、大内ライダーさんや御代しおりさんとのトークも盛り上がり、いい放送になったと思います。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
○6月16日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2019年6月号」
・時事ネタ
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
○7月7日(日)19時~「漫画家漫画のメタとネタとベタ」
『バクマン』、『アオイホノオ』、『かくかくしかじか』……ゼロ年代の後半以降、漫画家を目指す過程や道程をテーマとした漫画――「漫画家漫画」の名作が次々と誕生しています。中には知名が低かったり、それとは気づかない形で発表されていたりする「漫画家漫画」も存在します。
そこで、「漫画家漫画」の成り立ちや意味合い、個々の作品の魅力について紹介するような放送をお送りします。
ゲストとして編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)に出演して頂く予定です。
○7月21日(日)19時~「ピクサーの私小説としての『トイ・ストーリー』」
7月12日(金)よりピクサーの新作『トイ・ストーリー4』が公開されます。
誰しもが完璧な結末と感じた『トイ・ストーリー3』のまさかの続編です。
しかし、『3』を観た自分は、この展開を薄々ながら予想していました。ピクサーは常に変化しています。『3』にはそれまでのピクサーの変遷が詰まっていました。血を分けた兄弟といえるディズニー・アニメーション・スタジオはピクサーにとって最大のライバルとなり、ジョン・ラセターはセクハラにより退社しました。『トイ・ストーリー』はピクサーが存続する限り作られるのかもしれません……というような解説をする放送を行ないます。
アシスタントとして、声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)に出演して頂く予定です。
○藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本の通販しています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
https://macgyer.base.shop/items/19751109
○『やれたかも委員会』に取材協力しました。
『やれたかも委員会』(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)の「童貞からの長い手紙」に取材協力しました。単行本1巻分のエピソードになるそうです。
ちなみに基になったお話はこちら
https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063
さて、今回のブロマガですが、ニコ生放送のまとめというか、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』について書かせて下さい。
●訂正
まず訂正させて欲しいのですが、『海底軍艦』のストーリーは半分自分の妄想でしたね。
ムウ帝国は貿易船じゃなくてベニスや香港を直接攻撃してましたし、神宮寺大佐の一派は別にムウ帝国にとりこまれず、自分たちの力で轟天号を完成させていたのでした。なんか、『ふしぎの海のナディア』やOVA版『青の6号』や『新海底軍艦』なんかと混ざってましたね……
ただ、神宮寺大佐が戦争を棄てた戦後の日本社会と、戦中の大日本帝国の間で揺れている、『ゴジラ』でいうところの芹沢博士のような存在であるのは変わりません。神宮寺大佐が年配なので、志村喬演じる山根博士の要素も入っているのですが、元上官であり戦後は海運会社社長となった楠見元少将とキャラを分け合っているともいえます。ただ、『ゴジラ』で芹沢博士を演じている平田昭彦がムウ帝国工作員役で出演しているので、多少混乱するかもしれませんが、お馴染みのスター俳優が多少異なる役柄を演じるこの時期の東宝特撮の魅力のひとつともいえます。
残留日本兵そのものである神宮寺大佐と「戦後」に鬱屈を抱きつつも表面上は順応している楠見元少将との対比のみならず、戦後の若者を代表する高島忠夫や、歪んだ大日本帝国のようなムウ帝国とその若き皇帝とのやりとりも必見です。
訂正をもう一つ。怪獣がリモコンで操られるのは『怪獣総進撃』でした。
●”Titan”と呼ばれる怪獣たち
さて、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』ですが、世間では「怪獣バトルは凄いけど人間ドラマが稚拙」、「映像は迫力あるけど人間ドラマが謎」、「登場人物が全員狂人」なんて言われてますが、自分は本作の人間ドラマも楽しみました。まるで『虫皇帝』のように巨大生物同士が本気で殺し合ったり、その殺し合いの足元では必ず人間が右往左往したりする、迫力満点の怪獣バトルも工夫に溢れて楽しかったのですが、脚本家でもあるマイケル・ドハティ監督の人間ドラマも比較的よかったのではないかと思うのですよ。少なくとも脚本段階では。
たとえば、前回のブロマガで紹介した、人間ドラマが怪獣ドラマに絡むために怪獣映画でとられてきた歴史的手段ですが、本作では
・怪獣の行動原理と人間の利害が偶然にも一致し、ある種の共生関係にある
・怪獣の意思を感じ取れる人間(のような)キャラクター、装置が登場し、コミュニケーションがとれる
・どんな怪獣も人間の敵であり、怪獣同士のバトルで生き残った怪獣と人間との決着がクライマックスとなる
・怪獣は元人間だったり、古代の人間が超文明で作り出した生物だったりする
・怪獣を倒す「とどめの一撃」に人間が関与する
……と、「怪獣の一体はロボットで、人間が乗り込んでいたりする」以外の手段は全部とっています。監督が怪獣映画を観まくっていることが分かりますね。
また、モナークの科学者が全員怪獣に親近感を持っている……というか、人間と怪獣だったら常に怪獣側に立つ科学者たちなのもポイントが高いところです。渡辺謙演じる芹沢猪四郎含めて全員山根博士なわけですね(それでは芹沢博士は誰かというと、後述するラッセル夫妻になります)。
もう一つ、たとえば本作ではゴジラ・モスラ・ラドン・キングギドラといった怪獣たちは総じて”Monster”ではなく”Titan”と呼ばれます。
キングギドラのみ「モンスター・ゼロ」と呼ばれますが、これは『怪獣大戦争』でX星人がつけた呼び名に由来します。
『パシフィック・リム』に登場する怪獣たちも”Monster”ではなく”Kaijyu”と呼ばれていました。「怪獣」は単なる巨大生物ではなく、災害や戦争や神を象徴する存在で、だからこそ「モンスター」ではなく別の言葉を使うべきだという意図があったわけです。
●クトゥルフ神話からの影響
予告編で渡辺謙が”Titan”という言葉を使い、「我々が彼らのペットになるのです」みたいなことを言った時、観客はピンときたはずです。
”Titan”という言葉は、どう考えてもティターン神族からとられています。ギリシア神話やローマ神話に登場する古の神々で、巨人族で、ゼウスをはじめとするオリュンポスの神々よりも先行して宇宙を支配していた神々です。
つまり、「旧支配者」です。アメリカ人が考える古の支配者で、巨大で、モンスターな存在といえばクトゥルフですが、本作では、なんと怪獣たちとクトゥルフの神々たちとの重ね合わせが行われています。
以下ネタバレ