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【第225号】『闇金ウシジマくん』と真鍋昌平短編集『アガペー』
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【第225号】『闇金ウシジマくん』と真鍋昌平短編集『アガペー』

2019-06-12 07:00
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    マクガイヤーチャンネル 第225号 2019/6/12
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    頭骨を集めるのが趣味なのですが、思い切ってジャコブヒツジの頭骨を買ってしまいました。

    お手ごろな値段でヤフオクに出たら買おうと思っていたのですが、まさかebayに売っているとは思わなかった。

    あと哺乳類で欲しいのはバビルサの頭骨だけなのですが、こればかりはレプリカを買うしかないかなと考えてます。




    マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。



    6月16日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2019年6月号」

    ・最近の山ちゃん

    ・最近の津原泰水

    『メン・イン・ブラック:インターナショナル』

    『プロメア』

    『スノー・ロワイヤル』

    『アナと世界の終わり』

    『旅のおわり世界のはじまり』

    ・奇想天外映画祭

    『VA-11 Hall-A』

    『アガペー』

    その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。



    7月7日(日)19時~「漫画家漫画のメタとネタとベタ」

    『バクマン』『アオイホノオ』『かくかくしかじか』……ゼロ年代の後半以降、漫画家を目指す過程や道程をテーマとした漫画――「漫画家漫画」の名作が次々と誕生しています。中には知名が低かったり、それとは気づかない形で発表されていたりする「漫画家漫画」も存在します。

    そこで、「漫画家漫画」の成り立ちや意味合い、個々の作品の魅力について紹介するような放送をお送りします。

    ゲストとして編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)に出演して頂く予定です。



    ○7月21日(日)19時~「ピクサーの私小説としての『トイ・ストーリー』」

    7月12日(金)よりピクサーの新作『トイ・ストーリー4』が公開されます。

    誰しもが完璧な結末と感じた『トイ・ストーリー3』のまさかの続編です。

    しかし、『3』を観た自分は、この展開を薄々ながら予想していました。ピクサーは常に変化しています。『3』にはそれまでのピクサーの変遷が詰まっていました。血を分けた兄弟といえるディズニー・アニメーション・スタジオはピクサーにとって最大のライバルとなり、ジョン・ラセターはセクハラにより退社しました。『トイ・ストーリー』はピクサーが存続する限り作られるのかもしれません……というような解説をする放送を行ないます。

    アシスタントとして、声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)に出演して頂く予定です。



    ○藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本の通販しています

    当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。

    https://macgyer.base.shop/items/19751109



    ○『やれたかも委員会』に取材協力しました。

    『やれたかも委員会』(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)の「童貞からの長い手紙」に取材協力しました。単行本1巻分のエピソードになるそうです。

    ちなみに基になったお話はこちら

    https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063





    さて、今回のブロマガですが、先日最終巻も発売された『闇金ウシジマくん』と、同日発売された同じ著者による短編集『アガペー』について書かせて下さい。



    ●『闇金ウシジマくん』とは

    今更説明するまでも無いかもしれませんが、『闇金ウシジマくん』は闇金融の経営者である丑嶋馨を主人公あるいは狂言回しとした漫画です。2004年から連載され、今年始めに完結し、先日最終巻が発売されました。メジャー誌であるビッグコミックスピリッツで連載され、ドラマ化・映画化もされ、単行本は全46巻になり、三つのスピンオフ作品も発表され、累計発行部数は1700万部を超えるそうです。ゼロ年代やテン年代を代表する漫画の一つといっていいでしょう。2016年にマクガイヤーチャンネルでも採り上げました。



    『ナニワ金融道』フォロワー編

    長期連載作となった『ウシジマくん』ですが、私見では4+1期に分けることができると思います。

    まず第1期は単行本でいうと第1巻、「奴隷くん」、「債務者くん<ウシジマくん<金主くん」、「若い女くん」、「バイトくん」、「闇金狩りくん」編などを短いページ数で連載していた頃です。この時期の『ウシジマくん』は明らかに『ナニワ金融道』からの影響が伺えます。特に「若い女くん」は借金のカタに風俗に沈められる女性の描写があからさまに『ナニ金』で、おそらく編集者が連載会議を通す際に「『ナニ金』の闇金版なんですよ!」で押し通したのではないか、なんてことまで想像してしまう似通いっぷりです。



    ●「閻魔大王ウシジマくん」編

    ただ、真鍋昌平が凄いのはここからで、編集者との約束に応えて闇金版『ナニ金』を描いた後は、他の誰にも描けない自分だけの漫画にシフトしていったことです。

    単行本の第2~5巻、「ヤンキーくん」、「ゲイくん」、「ギャル汚くん」編は、『ナニ金』の亜流ではない面白さを真鍋昌平が追求しはじめ、注目を集め始めた時期になります。

    年代的にも趣向の面でも青木雄二がヤンキーやゲイやギャル汚をテーマにするわけがないというのは勿論ですが、徹底した取材によるディティールへのこだわりが魅力的です。激安ヤンキーやギャル男くんが路上にカップ麺を直置きしてウンコ座りで食事したり、ワインと蜂蜜を塗って裸で樹海に放置させられるギャル男くんの身体に、翌日様々な虫が群がるという、恐ろしいと共に一種ロマンチックともいえるシーンが、印象に残ります。なによりも、台詞やナレーションではなく、画でキャラクターの心情や物語を説明しようという点が前面に出てくるようになってきました。

    また、当時はちょうど青年漫画が写真を線画抽出して背景に使おうとし始めた頃だったのですが、ウシジマくんのそれはそもそもの写真撮影センスが一段高かったような気がします。有名な「ニギニギ」という擬音が気になりだしたのもこの頃からです。

    ドキュメンタリータッチかと思いきや、世間的には紛うことなき社会悪である闇金社長であるウシジマくんが、まるで閻魔大王のように駄目人間に対して裁きを下す因果応報なカタルシスが共通することから、この第二期を「閻魔大王ウシジマくん編」と呼びたいところです。



    ●プロレタリア文学編

    第5巻の途中から21巻まで、「フーゾクくん」、「フリーターくん」、「サラリーマンくん」、「タクシードライバーくん」、「出会いカフェくん」、「スーパータクシーくん」、「テレクラくん」、「トレンディーくん」などは、『ウシジマくん』がどんどん面白くなっていった時期にあたります。

    その時々の社会問題を反映したテーマ、取材に根ざしたリアルな人物と職業描写、インパクトと嫌悪感溢れる入り口から入るものの最後には読者の心をうってしまう物語性などから、この第3期を「プロレタリア文学編」と呼びたいところです。


    特に

    ・直接的な性描写がほとんど無いにも関わらず職業としての風俗嬢における勝ち組と負け組をしっかり描写している「フーゾクくん」編、

    ・社会問題を反映して殺伐としているのにも関わらず、一種のビルドゥングス・ロマンの味わいすら漂う「フリーターくん」編、

    ・裏カジノにも出会い系にもハマらず、誠実で正直なのに、団塊ジュニア中流ホワイトカラーという世代と時代故に地獄めぐりをさせられる「サラリーマンくん」編


    ……の3エピソードが秀逸です。下層の人々を扱うことが多いといわれる『ウシジマくん』ですが、決して下層ではない「サラリーマンくん」や「トレンディーくん」編は、スピリッツの読者層にとって決して他人事ではない話でした。

    因果応報を物語の縦軸としながらも、「本当に悪いのは誰か」、「世の中というシステムが悪ではないのか」というテーマもキマっていました。


    ・「一つ間違ったら明日は我が身だぜ!」という中村淳彦・鈴木大介的ワールド

    ・「世の中って本当はこうなんだぜ!」という三浦展・原田曜平的ワールド


    ……の合わせ技といってしまえばそれまでですが、時代と社会問題をビビッドに反映した上記二つの世界観に「闇金」という狂言回しがプラスされることで、物語性のあるエンターテイメントとして完成されていったといっていいでしょう。自分がハァハァと興奮しながら毎週スピリッツで『ウシジマくん』を読んでいたのもこの頃です。



    ●ネットワイドショー文学編

    21巻途中から32巻まで、「生活保護くん」、「洗脳くん」、「中年会社員くん」、「フリーエージェントくん」編は、時代と社会問題をビビッドに反映するというテーマはそれまでと共通しながらも、ネットやSNSでバズりそうな描写や要素が頻出することから、「ネットワイドショー文学編」とでも呼びたいところです。

    特に、北九州監禁殺人事件を元にした「洗脳くん」編や、明らかに与沢翼をモデルにした「フリーエージェントくん」編は読みごたえたっぷりです。

    また、漫画作家としての真鍋昌平の脂が乗りきってきたのもこの頃です。

    これまでのテーマであった「貧困の恐怖」や「世の中というシステムの恐怖」を受け継ぎつつ、「狂った隣人の暴力という恐怖」の描写により一層磨きがかかってきました。

     
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