おはようございます。マクガイヤーです。
前回の放送「『天気の子』と名誉童貞新海誠」は如何だったでしょうか?
今回の放送は反響が大きく、本当にやって良かったです。ゲストで出演して頂いた山田玲司先生もパワーワードを連発して頂き、実に良い放送になったと思います。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
○8月18日(日)19時~「『ライオン・キング』とどうぶつが喋る映画」
8月9日より『ライオン・キング』が公開されます。本作は1994年に公開されたディズニーの長編アニメーション映画作品『ライオン・キング』を実写……っぽいCGでリメイクした作品です。
『美女と野獣』、『アラジン』と、90年代の名作ディズニーアニメが続々と実写映画化されていますが、本作が他作品と大きく異なる点は「どうぶつが喋る映画」であるという点です。監督を務めるのは、『アイアンマン』で有名なジョン・ファヴローですが、同じく「どうぶつが喋る映画」であった2016年版『ジャングル・ブック』を買われての起用であることは間違いありません。なんでも『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』に出演しながら撮ったそうです。
そこで、ジョン・ファヴローや94年アニメについて紹介すると共に、「どうぶつが喋る映画」の観点から『ライオン・キング』について解説する放送を行ないます。
アシスタントとして、声優の那瀬ひとみさん(https://twitter.com/nase1204)に出演して頂く予定です。
○9月2日(月)19時~「最近のマクガイヤー 2019年9月号」(いつもと曜日が異なりますのでご注意ください)
詳細未定。
いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
○9月22日(日)19時~「メガドライブミニ発売記念 おれたちのメガドライブ」
9月19日にメガドライブミニが発売されます。ファミコンミニやプレイステーション クラシックといった先行ミニハードと比べて、多くのメガドライバー達が望んだソフトが収録された、ある意味で理想のミニハードです。
……ですが、現在アラフォー、アラフィフのメガドライバー以外にはあまりピンとこないのかもしれません。
そこで、メガドライブの歴史や有名タイトルについて紹介すると共に、メガドライブミニがどのように凄いかを解説するような放送を行います。
ゲストとして久しぶりにオタク大賞名誉審査員のナオトさん(https://twitter.com/Triumph_march)に出演して頂く予定です。
○藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本の通販しています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
https://macgyer.base.shop/items/19751109
○『やれたかも委員会』に取材協力しました。
『やれたかも委員会』(https://note.mu/yoshidatakashi3/n/na63c34ee5adc)の「童貞からの長い手紙」に取材協力しました。単行本1巻分のエピソードになるそうです。
ちなみに基になったお話はこちら
https://ch.nicovideo.jp/macgyer/blomaga/ar1011063
さて、今回のブロマガですが、ニコ生の補講というか、まとめというか、『天気の子』の須賀さんについて書かせて下さい。
自分は『天気の子』のクライマックスに違和感があるのですよ。
以下、映画を観た方は分かって貰えると思うし、観てない方にとってもたいしたネタバレにならない書き方で書きます。
●70年代ATGとゼロ年代エロゲーの悪魔合体
『天気の子』のクライマックスにて、、エロゲーによく出てくる都合のいい異界「えいえん」に囚われたヒロインを助け出すために、主人公は非常階段ダッシュをして、代々木会館の屋上に行こうとします。
「大人は分かってくれない」がテーマの本作で、代々木会館、それも屋上は、重要な場所です。「若者の反抗」が時代的テーマだった70年代映画を代表する俳優の一人といっていい俳優のショーケンが『傷だらけの天使』で住んでいた場所だからです。
もっといえば、「拳銃を拾う」というのも、いかにも70年代ATG映画的です。どうも新海監督は川村元気か誰かに薦められて、ここ10年くらいで70年代名作映画を大量に観たようです。『裸の十九才』『十九歳の地図』『青春の蹉跌』『青春の殺人者』もその中に含まれるでしょうが、これらは永山則夫や『異邦人』に源流があります。発射できない童貞だから弾丸を発射し、若者だから太陽が眩しいだけで大人に銃を向けるわけです。
さらにもっといえば、犯罪を犯した主人公が世間に背を向けてヒロインやその弟と疑似家族を作って「逃亡」するというのは、『俺たちに明日はない』や『地獄の逃避行』や『青春の殺人者』を持ち出すまでもなく、いかにも70年代ニューシネマ的です。この「逃亡」が田端から始まって池袋で終わるのがいかにも新海誠的なのですが(東北や北海道くらいまで行くかと思った)……こういうところが(名誉)童貞の可愛さですね!
また、「拳銃を拾う」「ヒロインと逃亡」というのはエロゲーにもありがちなシチュエーションなわけですが、そういった意味で『天気の子』はニューシネマやその影響を受けた70年代ATGと、新海監督が元々持っていたバックグラウンドであるゼロ年代エロゲーとの悪魔合体のようにも思えます。
●クライマックスの違和感
違和感があるのは、屋上に行くまでの展開です。
警察から逃げ出した主人公を警官が追いかけ、捕まえようとします。無能で融通が効かないだけでなく、主人公が目的を達成してもしなくても人生に関係ないばかりか、リーゼントであるが故に悪役とならない刑事のキャラクター設計が良いですね。以前の新海作品にはこのような「他者」は出てきませんでした。
警官に捕まりそうになる主人公、これを助けるのは、なんと凪先輩なのです。主人公がここまで来るためにこなしてきた線路ダッシュや非常階段トラップといった障害をものともせず登場するのですよ。
この凪先輩には、たとえば『イース2』でいうところの「そうはいかないぜ、魔物さんよ」と問答無用で助けに来てくれる盗賊ゴーバン様のような、新海誠が働いていた日本ファルコムゲームに特徴的な「ラストで主人公のピンチを救いにくるアニキ的キャラ」を連想してしまいます。
この源流は当然『新たなる希望』のハン・ソロにあるわけです。つまり、ビルドゥングス・ロマンでいうところの主人公を導いてくれるアニキ的メンターですね。
でも、ここで不思議なのは、この作品におけるアニキ的でハン・ソロ的キャラはどう考えても須賀さんなのに、ここで主人公を問答無用で助けてくれないところにあるわけですよ。