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マクガイヤーチャンネル 第15号 2015/5/18
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早いもので、5月2回目のニコ生放送が迫って参りました。
次回は『パトレイバーと押井守実写映画地獄』と題して実写版パトレイバーと押井守の監督した実写映画をテーマにお送りする予定です。
なぜ「地獄」なのか?
押井守は毀誉褒貶の激しい映画監督です。
時に「世界的な映像作家」と持ち上げられることもあれば、時に「稀代の詐欺師監督」「惜しいまもる」「犬監督」……とディスられまくることもあります。最後は蔑称じゃありませんが。
これまで、マクガイヤーチャンネルでは「映画監督」をテーマにお送りしたことが何回かあります。
ポール・バーホーベン、アレハンドロ・ホドロフスキー、北野武……この並びに押井守が加わると、まるで「日本が誇る世界的カルト監督!」のように思われる方もいるかもしれません。
その理解は、はっきり言って正しいです。押井守は、ゴダールや寺山修司への傾倒をひくまでもなく、塚本晋也や黒沢清と並び称されるカルト監督だと思います。が、これは「地獄」の説明になりませんね。
自分が映画監督としての押井守の存在をはっきりと認識したのは『機動警察パトレイバー the Movie』でした。今は亡き川崎国際劇場という、ソープ街と競馬場まですぐそこな、いかにも場末といった雰囲気が濃厚に漂う映画館で観ました。
ず、ニヤリと笑った男が何故かジャンプする謎のシーンの後、暴走する異形のレイバーを空挺レイバーが追跡しつつ、スタッフの名前がクレジットされるスタイリッシュな冒頭で、一気に引き込まれました。アクション映画なら冒頭にこういった「つかみ」のシーンを置くのは当たり前の構成ですが、アニメで、しかもスタッフクレジットを交えてこれをやるというのは見たことがありませんでした。そういや、ここに出てくるHAL-X10のガレージキットが欲しくて欲しくてたまらなかったのですが、遂に手に入れられなかったなあ。
その後、OVA版ではついぞみられなかったレイバーのアクションシーンの他に、実写映画におけるカメラのレンズを意識させるシーンや、当時珍しかったパソコンモニターに映されるオペレーション画像による演出、誰もが驚く犯人の正体などが描写されます。いかにも押井守といった衒学チックな台詞は別として、これらはその後のアニメや実写映画で散々パクられることになりました。
最も驚いたのは、映画最大の見せ場が、二人の刑事が「喪われつつある東京」を散策し、犯人の動機を解明するシーンであるという点でした。「パトレイバー」というシリーズのレギュラーでもなんでもない二人の刑事が、バブル景気における建設ラッシュにより廃墟と化していく「戦後」的風景の中を彷徨う――それを、ハイパーリアルな作画と川井憲次の音楽だけという、まるきり台詞なしのモンタージュでみせられるのです。
当然、これだけではエンターテイメントにならないでしょう。だからこそ、最後に「方舟(という、うみほたるのデカいやつみたいな「海上プラットフォーム」)」への突入という「アクション映画としてのクライマックス」を置き、血沸き肉踊るアクションシーンを置く周到さ。そして、前述した「犯人の正体」。
世の中にはこんなにも面白い映画があるのかと、中学生だった自分には衝撃でした。多分、映画館の雰囲気も含めての衝撃だったのかもしれませんが。
人によっては、同じような経験を『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』や『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』でしたことがあるかもしれませんね。早い話、ここに一匹のオシイストが誕生したわけです(笑)。
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