あなたが心を動かしたい人は誰ですか?
今回は、面接で不安を抱えている方の相談をもとに、人の心を動かす話術 :ストーリーテリングについて解説させてもらいます。
Q. コロナの不安に耐えきれず逃げるように退職して、無職の期間が1年ほどになり再就職に苦戦しています。
無職の期間中に資格を取っているわけでもないので、この空白期間の説明に困っています。どのように説明すれば良いのでしょうか?
別に資格でなくても何かしらの勉強をしていたと言えればいいと思います。
自分がこれまでの期間に体験したことをきっかけに、それを使って社会に貢献したいので、その仕事に就きたいという思いをストーリーとして伝えてみてください。
ストーリーテリングの勉強をしてみてください。
さすがに何もしていなかったわけでもないと思うので、自分のしていたことをちゃんと説明するといいと思います。
以上がDaiGo師匠のアドバイスでした。
議論よりも物語
情報が溢れている現代においては、そもそも情報の価値が変わってきています。
もちろん、それが事実かどうかを見抜く知識も必要ですが、仕事上でも生活する上でも誰でも瞬時にワンクリックで情報にアクセスできます。
このような時代において重要なのは「知っている」よりも、「感情豊かに伝える能力」です。
そんな時代に成功する人の特徴について、ダニエル・ピンクはこちらの著書で教えてくれています。
この中で、成功するための感性は6つあり、それぞれの磨き方について解説してくれていますが、その中でも「議論よりも物語」が重要になると言われています。
その中で、「思わず買ってしまうワイン」の話が紹介されています。
情報が溢れた時代で物語の重要性がわかる事例を紹介しておきます。
このワインは、エリックとアレックス・バーソロミアスという2人の兄弟のアイデアから生まれました。
彼らにはある理由があって、アレックスが製造し、エリックが描いたラベルを貼った良いワインを、あまり堅苦しくないやり方で売りたいと考えていました。2人の目的とは癌に苦しんで亡くなった母親に敬意を捧げることでした。
(中略)
アレックスとエリックは“Big Tatoo Red”の売り上げから1本あたり50セントをリリアナ・S・バーソロミアスの名で、北バージニアのホスピスや各地の癌研究基金に寄付することにしています。
皆様の協力のおかげで初回出荷時の売上から755,000ドルを寄付することができました。
今後もさらに多くの寄付をしていきたいと考えています。“Big Tatoo Red”をお買い上げくださいました皆様に、母に代わってアレックスとエリックより御礼申し上げます。
価格帯もほぼ同じ手頃な値段のワインが3本あったとして、このワイン以外は、オシャレではあるけれど客の気を引く形容詞がよくある感じで並んでいるだけです。
皆さんはどれを買うでしょうか?
「物語」の感性を磨くおすすめ
心に刺さる「物語」の力 ──ストーリーテリングでビジネスを変える (フェニックスシリーズ)
千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
千の顔をもつ英雄〔新訳版〕下 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
物語は論理性と感情性
ストーリーテリングには論理的な会話の流れに加えて感情的な話の流れも必要になります。
だからこそ、ストーリーテリングはただ論理的に話すよりも難しいです。
ですから、DaiGo師匠も心理学の知識を解説する時には、ただ論理的に話すだけでなく、時々ストーリーを入れたりユーモアを交えたりするようにしています。
これも時々感情的な話も入れるようにしないと、人は話についていくのが難しくなるからです。
ストーリーテリングは、そもそもの論理性を保ちながら感情豊かに伝えるテクニックです。
ストーリーシェアトレーニング
自分の言いたいことを物語や小説などの逸話に変換して伝えるトレーニング方法です。
名言や逸話を使う方法です。
まずは紙に自分の伝えたいことを書き出してください。
その上で、その人にストーリーを付け加えていきます。
例として、DaiGo師匠が好きな女性のタイプを聞かれたとしたら次のようになります。
例:論理的な答え
僕がいいなと思う女性は実はアインシュタインの奥さんです。
ややこしい僕のような人でも理解してくれる人がいいなと思っていました。なぜならば、普段からメンタリストとして人の心を読んでばかりでしたので、僕の心を理解してくれる人がいいなと思っていたわけです。
ちなみに、誤解されやすい人のコミュニケーションの特徴としては、理由も伝えずに、ただ「自分のことをわかってくれる人」とだけ答えます。
これは、論理的な説明も理由もない上にストーリーもない最も悪い例です。
例:ストーリーに変換
僕は普段からメンタリストとして活動しているので人の心を読むキャラとして認識されています。ですから、逆に僕のことを理解してくれる人が好きです。
そのような女性はなかなかいないと思われていますが、実は歴史上にいて、あのアインシュタインの2番目の奥さんなんです。
アインシュタインの名言はたくさん残っていますし、僕もアインシュタインは好きなので本もいくつも読んでいますが、最も好きな名言はそのアインシュタインの奥さんの言葉です。
最初の奥さんは物理学者で、一緒にディスカッションなどもできたそうですが、逆にぶつかることもあってうまくいかなかったそうで、次の奥さんは物理のことは全くわからない人で、その奥さんはアインシュタインが亡くなるまでずっとそばにいたそうです。
その奥さんは「私は物理のことはよくわかりません。宇宙の始まりがどうなっていたのか、彼が書いている数式のことも全くわかりません。ただアインシュタインのことは誰よりもわかります。」と言われたそうです。
僕はそんな女性が好みです。
このように言われると記憶にも残るでしょうし、このように話すと皆さんの感情や人となりがその言葉にのります。
そのように話すと誤解されづらくなります。
もちろん、名言や逸話の本を読んでも結構ですが、映画やアニメのストーリーでも結構です。
自分がそのストーリーに何かしらの感銘を覚えた時には、それをメモしておくことをおすすめします。
そんなメモがたくさん溜まってくると、徐々に使いこなすことも出来るようになります。
使いこなせるようになると、他人に何かしらの話をする時も説得力が上がりますし、人を惹きつける能力も上がりますので、一生懸命コミュ力を上げようとか頑張らなくても、自然と周りに人が集まってくるようになります。
ぜひ試してみてください。
カーフレームワーク(CAR framework)
ストーリーテリングの基本として、まずカーフレームワークを意識することが重要です。
カーフレームワークとは、リーダーシップ研究で有名なポールスミス氏が提唱しているストーリーテリングの枠組みのことです。
CとAとRの頭文字が表すルールに沿ってストーリーを作るというものです。
人間の脳は論理的な話よりも物語の方が処理しやすいので、同じ情報量であれば物語にして伝えた方が理解しやすくなります。
ですから、直前に見たアニメのストーリーを説明することができても、直前に読んだ実用書の内容を説明するのは結構難しかったりします。
これはもともと人間の脳は物語の方が処理するのが上手だからです。
ですから、「マンガでわかる◯◯」という本がよくありますが、このような本をまずは選んで全体的な大枠を捉えるというのはいい方法です。
いきなり専門的な本を読んでも理解できなくても、最初に頭の中に大枠を作っていたら情報を処理しやすくなります。
C/Context:文脈(背景)
A/Action:アクション
R/Result:結果
この3つを意識すると誰でもわかりやすい物語を作ることができます。
Context:文脈(背景)
文脈がないと相手は混乱してしまいます。
まず最初にストーリーを理解するために必要な背景情報を提供する必要があります。
例えば、DaiGo師匠がぬこさんを抱っこして写っている写真があったとして、師匠のことを知らない人はその写真を見ても「猫を抱っこしている男性」としか理解できません。
ところが、師匠のことを知っていて、ぬこさんとの出会いを知っている人は、その1枚の写真から得られる情報が多くなります。
伝えたい内容の中にとどまっていない背景情報がないと物語を理解することができません。
出てくる登場人物や、その人がそれまでにしたことや性格、 職業などから、相手が物語を理解するために必要になる背景情報をまずは提供するようにしてください。
大抵の人がここでつまづいています。
いきなり出来事や話したい内容を話し始めて、「そもそもその人は何をしている人なの?」と相手の頭の中に疑問を作ってしまいます。
これは面接の時もプレゼンの時も同じです。
文脈がないと相手に伝わる想いも伝わりません。
この文脈の提供には相手と自分の繋がりをもたらしてくれる作用もあります。
こちらの話を聞いてくれるモチベーションを高めてくれます。
文脈を提供するための4つのポイント
では、背景情報として具体的にはどんなことを伝えると、相手は物語を理解しやすくなり話を聞くモチベーションが高くなってくれるのでしょうか。
そのためには、4つのポイントが含まれていると物語の理解と話を聞くモチベーションを高めることができると言われています。
ポイント1 :その話はいつどこで起きたことなのか?
その話が最近起きたことなのかいつ頃の話なのか、どこで起きたことなのかがわからなければ、相手は混乱してしまうだけです。
ポイント2 :その主人公は誰なのか?(誰の目線で語るのか?)
誰の目線で語っているのかがわからなければ相手は物語を理解することはできませんし、話の中で主人公が固定されていなければ混乱してしまいます。
よくある失敗としては、最初に主人公を設定したはずなのにそれを客観的に別の目線で語ってしまうという人がいます。
ポイント3 :序盤で主人公の目標を明らかにする
序盤で主人公が何をしたいのか?何を求めているのか?ということをある程度明らかにしていないと、相手は話を聞くモチベーションを保つことができなくなります。
主人公が達成したいことが見えてこないと物語の予測を立てることができなくなり、何が起きるのか全くわからない物語にモヤモヤしてしまいます。
ポイント4 :主人公の目標を邪魔するのは誰か?
主人公の目標を邪魔する敵、あるいは邪魔するものは何なのか?ということをわかりやすく伝えてください。
この4つを満たすだけで、背景情報を十分に伝えることができます。
慣れるまではこの4つのポイントを紙に書き出してみるのもいいと思います。
それだけでもかなりわかりやすく物語を伝えることができるようになります。
例えば、DaiGo師匠が小1から中2までいじめられたけれど、中2の時にいじめから脱却することができて今のように堂々と生きることができるようになったという話があったとします。
これをカーフレームワークの文脈に当てはめるとどうなるか参考までに紹介しておきます。
①その話はいつどこで起きるのか?
「小学校1年生から中2までの友だちがいなかった8年間」
②その話の主人公は誰か?
「いじめられて周りに言いたいことも言えなかった子供の頃のDaiGo」
③主人公は何を達成したいのか?
「いじめられた8年間の間に何も行動できなかった自分を変えたいと思っていた」
④その目的の達成を邪魔するのは何か?
物語で最終的に言いたいことは、「自分が行動すれば周りは変わるのに、他人の目ばかりを気にしていたので、それが自分が変わることができない本当の理由だった」ということです。
ですが、その話の前に敵を設定しても構いません。
例えば、「クラスが変わっても毎年必ず現れるいじめっ子」かもしれませんし、「いじめを相談しても自分のせいだと言う先生」かもしれません。
何しても最終的に打ち勝つべきラスボスは「いじめられていることに怯えて自分の意思を出さなかった自分の弱さ」です。
最初は大変かもしれませんが、このようにして枠組みを作ったら、それらを繋いでいくだけでも十分に伝わりやすい物語ができます。
これだけでも相手の心に刺さる話ができるようになると思いますので、ぜひ試してみてください。
ここから先のアクションと結果、そして、さらにストーリーテリングのテクニックを磨いていくための方法については、続きをチェックしてみてください。