あなたが自分の想いを理解してもらえなかったのはどんなときですか?
今回は、親に都会に出ることを反対されているという方の相談をもとに、反発する相手すら味方にしてしまう話術について解説させてもらいます。
「Q. 都会に移住して仕事をしたいのですが親が許してくれません。そのような親の心理状態はどのようなものなのでしょうか?」
親の心理を理解しようとするよりは説得を学んだ方がいいと思います。
親はずっと子供でいて欲しいと思っていたり変わって欲しくないものです。そういう意味では、自分が変わったという証拠を見せるか説得するしかありません。
人間は理解し合えることができない生き物です。
大切なのは理解し合うことができない中でも、どのようにしたら一緒に生きていくことができるかということを考えることです。
それができない相手に対しては説得して進んでいくしかありません。
以上がDaiGo師匠からのアドバイスでした。
敵も味方にする技術
プロの人質交渉人に学ぶ、反発してくる可能性が高い相手にさえも商品やサービスを売る話術について解説させてもらいます。
営業やビジネスだけでなく、日常会話の中でもお願い事や頼み事をする時にも使えます。
イエスと言わせるというよりは、ノーと言わせない方法です。
多くの人は相手にイエスと言わせようとします。
まずこれが間違いです。
想像してみてください。
あなたにイエスと言わせようとする人がいたとしたら、その人にどんな印象を感じるでしょうか?
おそらく押しつけ感が強い印象を持つと思います。
ですから、イエスと言わせようとする必要はなく、ただノーと言わせなければいいだけです。
相手のNoを封じる言葉遣い
セールスマンを対象に、どんな言葉遣いをしている人の営業成績が良いのかということを調べた研究があります。
それによると、いかに相手の否定を封じるかということに特化したセールスマンの方が成績が良く、そんな言葉遣いが営業成績を決めるということが確認されています。
イギリスで飛び込み営業をしているセールスマンの1ヶ月にわたる営業成績を集めて、どんな言葉遣いをすると営業成績が良くなるのかということを調べています。
その結果、説得が上手なセールスマンは、相手にノーと言わせない言葉遣いが多かったそうです。
相手が否定しづらい言葉遣いをすることが重要です。
例えば、電話営業であれば、一度電話したけれど留守電でもう一度電話をしたら相手が出てくれたという時に、「今お電話よろしいですか?」「◯◯のサービスに興味はありませんか?」と質問すれば、ほとんどが即答で「結構です!」「間に合ってます!」と拒絶されて終わります。
そうではなく「先日お電話させていただいたものです」「その際には弊社のサービスについての説明を留守電に残させていただきました」「今回は弊社のサービスの中でも◯◯について…」と話を続けると、相手は間違ったことを言われているわけではないのでノーとは言えません。
つまり、相手にイエスかノーかの選択をさせない、とりあえず相槌を打ってくれそうな言い回しを最初に立て続けに話すわけです。
別に相手の話を承諾したわけではなくても、思わず相槌を打ちながら話を聞いていると、なんとなく相手の申し出を承諾した気分になってしまいます。
そして、ある程度話を聞いてくれたら、営業成績の良いセールスマンは、詳しく営業かけるためのスケジュールを調整します。
興味があるかないか、買う気があるかないかとなると、いきなりイエスかノーかの選択を迫るようになってしまいます。
いきなりスケジュールの話になると、相手がスケジュールを確保することに同意してくれたかのように持って行くことができます。
例えば、「◯月◯日は空いていますか?」と質問すれば断られますが、「都合のよい日は頭に浮かんでますか?」と質問すると、その相手はその流れに承諾しているかのようになります。
前置きの部分で相手がノーと言いづらい話を立て続けにした後で、上手にスケジュールの話に持って行きます。
これによって前提として直接会って話をする流れかのように話を持っていくわけです。
研究チームによると、見込み客がこちらの発言にノーと言うスタンスを制限すると、ネガティブな結果につながる可能性を少なくできると言われています。
ですから、相手に営業したり交渉する時の話術を上手になりたいのであれば、機会があれば自分の話している会話を録音してみてください。
自分の営業トークが冷静に考えて相手にノーと言わせる話し方になっていないかチェックしてみてください。
例えば、女性をデートに誘うとしたら皆さんはどんな誘い方をしますか?
「◯月◯日にデートに行こう」と誘うと断られやすいですが、まず最初に「イタリアンとフレンチだったらどっちが好き?」「来週と再来週だったらどっちの方が都合いい?」と誘うと相手は断りにくくなります。
営業でもデートの誘いでも、選択肢にノーを入れないような話し方をするだけで、成功率は圧倒的に高くなります。
絶対にNoを言わせない交渉術
今回は人質交渉をしているような人たちについての研究をもとにしています。
人質交渉では、当然ですが人命がかかっている状況です。
そんな研究をもとに、相手にノーと言わせない交渉術の3つのポイントについて解説させてもらいます。
ポイント1 :二人称の禁止
人質交渉において人質の安全を確保するためには、犯人と交渉人の間に、協力関係があるかのように思わせる必要があります。
商品やサービスを売る場合も同じです。
モノを売る側と買う側となった瞬間に対立してしまいます。
そうではなく、あくまで見込み客の相談者として、より良い結果を手に入れるために寄り添う姿勢を見せなくてはなりません。
そのために使えるのが、夫婦関係も良くなるWeトークです。
二人称を避けて、相手と相手の考え方を切り離して会話をします。
「その考え方は〜」は構いませんが、「あなたは〜」と話すと関係もできていない中で人格を否定するような印象になります。
実際にベテランの交渉人ほどWeを使うそうです。
それによって犯人との間に協力関係があるような印象を持たせます。
「あなた」と「私」ではなく、「我々がどうすれば一番良い結果にたどり着けるか考えましょう」というスタンスです。
例えば、自分の商品を売り込む際に「あなたの使っている商品よりも私たちの商品の方がいいです」と言ってしまうと反感を持たれるだけです。
「御社の売り上げを伸ばすために、できることがあれば協力したいし、ニーズを話していただければ、そのために役に立つ良いアイデアが生まれると思います」というように、一緒に考えるスタンスで話すためにWeトークを多用します。
特に日本語では主語を曖昧にしてしまう会話が多いです。
曖昧にすることで誰と誰が仲間なのかがわからなくなりますので、はっきりとわかりやすく使うようにしてください。
ポイント2 :中立的ワード
二人称の代わりに中立的ワードを使うのも効果的です。
例えば、「あなたは〜」ではなく、「この状況では〜」「一般的には〜」というように、所有格をつけないことで相手ではなく世間の常識に物申すような印象を持たせます。
ポイント3 :レッテルを貼らない
相手の考えや信念というものは必ず自分とは違います。
一部同じところはあるかもしれませんが、考えや信念が全く同じ人なんていません。
ですから、相手の考えや信念に対してレッテルを貼るのは対立を生むだけです。
例えば、「Aさんは誰もが医療を無料で受けることができるようにするべきだと考えているし、教育も全て税金で賄うべきだと考えている」ではなく、「Aさんは反資本主義だ」と言ってしまうと細かい部分が見えなくなります。
レッテルを貼る行為は細かい部分が見えなくなるだけです。
目の前の相手に対しても他人に対しても、レッテルを貼る行為は、それによって人を切り捨てることが平気でできる人だと思われます。
その印象によって相手に抵抗感が生まれます。
レッテルを貼る行為は物事を単純に見すぎる行為です。
それによって、目の前の相手に対して細かいニーズにも気づけなくなります。
簡単に他人にレッテルを貼っていれば楽に生きることはできるかもしれません。
「反ワクチン派の人は〜」というようにレッテルを貼れば楽ではあるでしょうが、それは人を切り捨てる人と思われるだけでなく、自分自身の観察力が減ってしまいます。
ポイント4 :「懐疑的」という言葉を使う
相手の意見に反対しなくてはならない場合もあると思いますが、「私は反対です」「私は違います」ではなく「私は懐疑的です」という言葉を使ってください。
もちろん安易に同調すると、後々足元を救われたりしますので反対しなくてはいけない時もあると思います。
「私は反対です」と言ってしまうと取り付く島がないような印象を与え、相手は余計に態度を変えなくなってしまいます。
「懐疑的です」「断言はできません」という言葉は、相手の考えや心をそこまでこじらせることはありません。
例えば、政治の話になるとなかなか面倒なこともあると思いますが、その場合も同調したり反対するわけでなく「それについては懐疑的で〜」と答えると、そこから議論が始まって考えは違っても親しくなれることもあります。
視点を変える会話のリフレーミング
相手との会話を別の言葉で表現してお互いの視点を変えるテクニックです。
会話のテーマによって人の意見は変わります。
例えば、「女性が家事や育児をするべきだ」という意見を聞くと、間違いなく叩かれますし批判したくもなります。
同じような意見だったとしても、「女性は男性よりも観察力に優れているので、家事や育児では男性よりも高い能力を発揮することが多い」という意見であれば、納得することもできると思います。
同じようなことを言っているにも関わらず、ほんの少しテーマや視点を変えるだけで、人は考えや態度が変わります。
それを上手に使うのが会話のリフレーミングです。
例えば、アメリカで銃規制の話題になると、多くの人が人権や安全についての議論を始めます。
人が銃を持つことに賛成だという考えの人がいたとして、その人が子供を持っているとしたら、「あなたは子供を愛している良い親だと思いますが、もし子供が銃を持っていたとしたら心配になりますよね?それについてはどのように考えますか?」と質問すると、銃規制の問題から「良い親の子供に対する責任」という問題に話をすり替えるテクニックです。
そうなると強硬な意見を持っていた人も、さすがに子供に銃を持たせるのは問題なのではないかと態度が変わってきます。
相手を一生懸命説得しようとするよりも、話題のテーマを変えたり会話をリフレーミングする方が相手は態度を変えやすくなることが多いです。
会話のリフレーミングのための3つのポイントを紹介しておきます。
ポイント1 :共通点を中心話題に
例えば、大麻の合法化についての議論をしているとしたら、大麻を禁止するべきだと主張している人は多くの場合は乱用による問題を不安視していて、合法化するべきだと主張している人は、それによって医療的に助かる人がいるということを中心に考えています。
ここで考えていただけると、どちらも「節度を守って使う」という点では同じことを言っています。
このような意見がぶつかっている状況で、お互いの意見が違う部分に注目しては対立が強くなるだけです。
お互いのポジションが全く違うように見えたとしても、実際には一部に共通点があることがほとんどです。
その共通点を中心に議論していくことが大切です。
大麻によって助かる命があるということと同時に、若者たちの濫用が問題なのであれば、若者たちの大麻の濫用を防ぎながら、本当に必要な人に届ける方法はないだろうかという議論ができれば、病院だけでは使えるようにするとか処方箋を必要にするなど、建設的な意見が生まれることだってあります。
共通点を話題の中心にして、どうすれば共通点の部分を同時に叶えることができるかと考えられるようになると、相手の態度は一気に変わり一緒に話し合って解決していこうとするようになります。
自分の意見を押し付けて相手の態度を変えようとしても変わりません。
反対意見との間にある共通点を見つけて、その共通点について根本的な議論をするようにしてください。
ポイント2 :公共の利益を話題に
議論の内容や衝突している部分をリフレーミングして 、「より社会の役に立つ」「より公共の利益につながる」内容として視点を変えていきます。
例えば、皆さんがサービスを売り込みに行ったとして、相手がコストも上がるし渋っていたとしたら、「このサービスを使ってくれれば御社の顧客満足度はこれぐらい上がるはずです。そうなればお客さんは喜んでくれるのはもちろんですが、それによってもっと社会は良くなると思いませんか?」というような言い方をします。
コストの問題に執着している相手に対して、価格の部分に注目して議論しても平行線ですが、それによってより多くの人が喜んで公共の利益につながるとなると効果的です。
特にこのタイプのリフレーミングは、相手が強い抵抗を示している時や不機嫌になっている時に効果的です。
特に、ここ最近では原材料が高騰して値上げを要求しなくてはならない状況も多いと思います。
例えば、「他社は値上げができないから質を落としてでも価格を維持しようとする企業が多いですが、御社が理解を示してくれたら質を担保することができるので、ユーザーはそれを理解してくれて、結果的に世の中を変えることができるはずです」と言われると、社会に貢献できるという感情が芽生えてイライラした感情も落ち着いてきます。
人は社会的な繋がりを感じるとモチベーションが上がったり、自己コントロール能力が高まります。
それを感じさせるのがこのタイプのリフレーミングです。
ポイント3 :ポジティブに変換する
相手に「その通りです」と同意させるためには、どうするべきなのかを考えてリフレーミングする方法です。
これはネガティブな話題をポジティブにリフレーミングすると効果的です。
例えば、家庭の中でお父さんとお母さんのどちらが子供の送り迎えをするべきかという議論が行われていたとしたら、時間を取られることとか仕事との兼ね合いばかりで議論しがちです。
そうではなく「送り迎えで子供との時間が生まれる」という視点で、「どちらが子供との会話のチャンスを手にするか」という議論にリフレーミングします。
よく言われることですが、これもあっという間に大きくなってしまい、親が子供と一緒に過ごすことができる時間なんて限られています。
このようにポジティブにリフレーミングすると、今のうちに子供と接する機会をしっかり作っておかないと、大きくなった時に口を聞いてもらえなくなるのではないかと考え始めたりします。
手間や面倒などを議論の中心にすると対立する問題であっても、そこから生まれる体験や時間にリフレーミングすると、相手が簡単に態度を変えてくれることもあります。
人を動かすためのおすすめ本
今回のおすすめの本としては説得にまつわる本を紹介しておきます。
まずは説得力としてはやはりこちらの本は必読です。
そして、人間というものは愚かな思い込みや今回の滑り台効果のようなどうしても抗うことができない本能を持っています。
この人間の本能を利用するととても強力な説得力を生み出すこともできます。
その人間が持っている本能を教えてくれる本がこの本です。
この本は人間の判断や意思決定に関する研究を基にして、人の判断がどのようにして行われているのかということを解説してくれています。
ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 文庫 (上)(下)セット
ここから先は、交渉の場面から日常の会話まで、相手の態度を変えさせるためのテクニックをさらに解説していきます。
ぜひ続きもチェックしてみてください。