当たり前の暮らしの大切さ
『とと姉ちゃん』の主人公、常子は戦前戦中という激動の時代のなか、一家の「父(とと)代わり」となり、家族を支える長女。戦後、女性のための雑誌をつくろうと小さな出版社を立ち上げ、生前の父が教えてくれた「当たり前の暮らしの大切さ」を胸に邁進します。『あさが来た』のあさがスーパーウーマンなら、『とと姉ちゃん』の常子はハンサムウーマンと言えそう。
主人公のモデルである大橋鎭子さんは「どんなにみじめな気持でいるときでも つつましい おしやれ心を失はないでいよう」そんな気概を持った女性でした。そして常子の「人生最大の魂のパートナーとなる人」と紹介されている天才編集者・花山伊佐次にも注目したいところ。彼のモデルとなった花森安治氏は「豪放」「反骨精神」「卓越した能力」「マルチな才能」「真摯な行動」といった言葉が飛び交う人物でした。
日常から小さな幸せをつかむこと
脚本を手掛ける西田征史氏は「常子は、大きな夢を追うのではなく、日常を過ごしながらも小さな幸せをつかんでいくので、今の人たちにも共感していただけるのではないかと思っています」と語っています。
防空壕のなかで「自分が見たい、知りたいと思うことを本にすれば、多くの女性たちに喜んでもらえるだろう」と考えていた鎭子さんと、「一人ひとりが自分の暮らしを大切にすることを通じて、戦争のない平和な世の中にしたい」と考えていた花森氏が出会い、刊行された『暮らしの手帖』。その雑誌がモチーフとなった『とと姉ちゃん』の時代背景と、いまでは比べものにならないかもしれませんが、 それでも哀しい出来事はあふれている世の中です。だからこそ、目の前の美しいものやことに気づく感性の大切さを再確認できそう。
ひとつひとつを丁寧に
それらを踏まえて第1話を見ると、すでにお手本にしたい暮らしぶりが描かれていました。たとえば朝食を作るときの、母親の幸せそうな顔は、家族をおだやかな朝へ誘っているよう。また家族で交わされるなごやかな会話も、ひとつひとつが丁寧で、たとえ親が子どもに対して話す言葉であっても、そこには敬意を感じます。「朝食は楽しく作る」「子どもには敬意をもって接する」これらは今すぐにでも暮らしに取り入れることができそう。
また「どうしようと自分で考え、自分で行動したことは素晴らしいと思います」という父親の言葉が出てきました。きっと、このことも主人公の生き方に影響を与えているのかなと思いました。はじめから参考になった『とと姉ちゃん』。今後の展開も楽しみです。
image via shutterstock